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61、変人 despite パーティ ~な、何だこいつら~

 この場合、ダルドに聞くのが最も手っ取り早いだろう。


「おいおい、キエル、お前旅人なのに知らないのか? 『魔王殺しの剣サタナクルス・グラディウス』って言ったら今この世界じゃ知らない者はいないとも言われてる超有力ギルドだぞ?」


「そうなのか」


「本当、お前の無知にはびっくりだぜ」


「私もキエルさんの無知にはびっくりです」


 ルテティアまで続けて言う。


「『魔王殺しの剣サタナクルス・グラディウス』の歴史は浅くてな。有名になったのはつい二年くらい前の話だ。もしかしたらそれ以前からあったのかも知れないがな」


「その、有名になったきっかけって何だったんだ?」


 気になって再び聞いてみる。


「当時世間で『アヴェルヴィスィフィア』が騒がれてただろ、って、『魔王殺しの剣サタナクルス・グラディウス』を知らないならこれも知らないか」


「ああ、知らない」


 それにしても、その名前凄く言いにくそうだな。


「『アヴェルヴィスィフィア』ってのはその時初めて現れた大災害級認定の魔物だ。高さは優に五十メートルを超す。俺も詳しい外形は知らないんだが、それこそドラゴンのようだとも蛇のようだとも犬のようだとも合成獣のようだとも言われている。つまりは噂が飛び交ってるってことだな。その大災害級の怪物が現れたのは『バブリア大陸』だから俺達がその姿を知らなくとも仕方ないけどな」


「へえ、そうなのか」


 その大陸の名前も勿論俺は知らない訳だが、取り敢えずは話を合わせておくとしよう。


「それで、そのメンバーっていうのはどんなやつなんだ?」


 強者に興味が湧くのは男の性である。まあ、リィサも強者を求めていたみたいだけど。


「詳しくは分かっていないんだがな、メンバーの内、『破竜剣アスカロン』と『魔杖剣レーヴァテイン』は外見が分かっている」


 ダルドが楽しそうに言う。やはり男たるもの、未知なる強敵には胸を躍らせるのかもしれない。が、あまりにも中二過ぎないですかね、その名前。


「と言ってもこれらは二つ名で、本名は分かっていないらしい」


 二つ名かよ! 尚更中二度が上がったぞ。


「因みに、どんな外見なんだ?」


「『破竜剣アスカロン』は黒いローブの女、『魔杖剣レーヴァテイン』は長身の鳥人だそうだ」


「へえ……」


 この世界には鳥人もいるのか。多民族世界だな。


 本当はこの『魔王殺しの剣サタナクルス・グラディウス』のことについてもっと聞きたかったのだが、せっかくクエストに行くことにしたのだから、そろそろ行くべきだろう。多分他の皆はもう準備が出来ているはずだ。


「世の中には凄いやつらが沢山いるんだな」


 そう言って締めくくった。


 あ、そう言えばまだダルドのおっさんのステータスを見てなかったな。






 勇者の彗星眼(偽)  対象  ダルド


 名前  ダルド・レゴンウィルズ


 レベル 140






 百四十!? 高いな、おっさん。流石ギルマスだぜ――俺、何回言うんだろう?


「じゃ、そろそろ行くか! タルタル草組、出発だ!」


 ダルドが大きく声を張る。


「あれ、ダルドのおっさんも草摘みに行くのか?」


「いや、俺は違うクエストだ」


「そうか」


「ああ、あと、リィサも連れて行ってやってくれ」


 号令をかけた後で、ダルドがそんなことを言う。え、何、リィサは後付けなの? 俺が行くクエストに同行させる感じなの?


「勿論、私も行きます!」


 ここぞとばかりにルテティアが存在をアピールする。大丈夫、別にお前のこと忘れてないから。


「キミが臨時加入の子? あらら、意外にイケメンさんじゃない♪ ヨロシクネ!」


 急に話しかけられたと思ったら、そこにいるのはかなり際どい格好をしたお姉さんだった。え、この人がメンバーなの?


「おおっ! 新入りさんですかニャン? よろしくですニャン♪」


 続けて、変な語尾の猫娘が登場。


「よう、坊主。お前、戦闘より採集好きとは、分かってんじゃねえか」


 さらに、何かめっちゃ農業の格好したお兄さん。


「あらやだ、イイオトコじゃないっ」


 そしてオカマ。


 マジか。オカマと一緒のパーティか。……いや、差別は良くないな。オカマだって一人の人間な訳だし。性同一障害だからと言って差別は良くない。でも怖いから近寄らないで。


「どうも、新入りさん一緒のパーティですねよろしくお願いします中々イケてる面立ちですね恐れ入りましたのですこんな私ですがどうかよろしく仲良くしてやって下さいおねがいしますます」


 加えて何か一文が妙に長い上に文法がおかしい女の人。見た目はこの人が一番普通なんだけどな。


「これで全員か?」


「そうよ? 何ならもっとお姉さんを集めてきてもいいんだけど?」


 と最初のお姉さんが言う。妖艶なお姉さんである。この人も何か怖いから近寄らないでほしい。


「ミーも友達のニャンコ達を連れて来ようかニャン?」


「いや、結構だ」


 何かこの猫娘も不気味だから近寄らないでほしいな。


「おいこら、お前このメンツじゃ不安だってのか? この俺様、『キングオブエーシー』に文句つけようってか? ああん? てめえタルタル草の魅力について五千字以内で語れや!」


 な、何なんだこのお兄さん。超農業だよ。農業脳だよ。何かいかつい顔以上にその姿勢が怖いので近寄らないでほしい。


 何かあれだな、このパーティ、全体的に近寄りたくない人間ばっかだな。何だ、違うクエストにしとけばよかったぜ。


 とそこに、準備が終わったのか後ろの方からリィサが出てくる。っていうかあんたいたんだ。


「……」


 俺達の目の前で止まった。俺以外の人間、変人五人がリィサに目線をやる。ついでにルテティアもやる。

 皆特段リィサに悪の含まれた視線を送っている訳ではない。ただ、無関心の色が強いように思う。あまり関わりのないキャラだと言うのは本当らしい。


「な、何よ。ダルドが一緒に行けって言うから仕方なく――」


 相変わらずのツンデレっぷりである。うむ。


「やっぱりリィサはまともで可愛いな」


 少なくとも、この中では。


「な、なっ!?」


「じゃあ行くか」


「あれれ? 新入りさん、リィサちゃんのこと好きなの? ふふん? じゃあ新入りさんのこと、私が横取りしちゃおうかな?」


 俺が出発を促すと妖艶なお姉さんがその邪魔をした。いや、言ってる意味が分からないです。いいから早く行きません?


「ほら、キングオブエーシー。さっさと行くぞ。タルタル草が待っている」


「何!? てめえ、それが分かるとは、ただものじゃねえな? よし、行くぞ!」


 馬鹿だった。


 ただ、こういうノリのいいやつが一人でもいると雰囲気を変えやすい。こういうラフな雰囲気ならリィサも少しはやっていけるんじゃないかな。


「……ギルマスの知り合いか何か知らねえが、仕事ってのは一緒にやるもんだろ。同じパーティになったからには、てめえにも働いてもらうぜ」


 農業男はリィサにそう言うと、一足先に建物を出た。あれ? 案外面倒見が良い? もしかするとこのパーティで一番ましなのかも知れない。


「ほら、行くぞリィサ」


「え? ……うん」


 リィサの手を引っ張って、俺達も建物を出た。何故だかルテティアも俺の手を握ってきたが――うん、まあ、人懐っこいやつだな。


 そんな訳で、八人中三人は初参加である、このパーティは進みだしたのだった。


 …………ところで、エーシーって何の略かな。アグリカルチャー?






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