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58、ギルド加入 until リーヴィング ~中々面白そうだな~

 急に顔をいかつくして、ダルドがリィサを怒鳴った。その声に、周りの皆が小さくなる。おおっ、流石はギルマス。威圧感があるね。


 でも、そんなに怒らなくてもいいじゃない。


「…………それは――」


「まあいいじゃないか。無事だったんだし」


 リィサが何か言い訳をし始めようとした時、俺はすっとその場を立ってダルドとリィサの間に割り込んだ。


「そういう問題じゃねえんだ、キエル。リィサはずっと前から明らかに一人じゃ無理なクエストに何度も行こうとしてるんだよ。危険過ぎるだろ! 自分の実力も分からないうちにそんな無茶なことしやがって!」


 俺とダルドは初対面であるが、それでも構わずダルドは自分の考えを俺に突きつけてくる。


 ダルドは俺よりも背がかなり高いので、俺は見下ろされているような形になってしまう。若干怖い。しかし、やっぱり別にそこまで怒らなくてもいいと思う。


「だが今回は俺と一緒に行ったんだ。それで無事だった。何の問題もない」


「いいや、違う。そんなのは偶然に過ぎない。また一人で行ったら今度こそ危ないんだぞ!」


 声のボリュームは抑えたようだけれど、それでもまだその声には怒気が込められている。


 随分な親馬鹿さんである。まあダルドはリィサを本気で心配してるんだろうから、仕方ないと言えば仕方ないか。


 とは言っても、俺は「自分で決めたこと」に対して怒られることには納得できないタイプの人間だ。リィサが自分で挑戦したいと思ったのだから、それを諌めようとするのは間違いでなくとも、それについて怒るのはどうにも筋違いであろう。


 だから俺はダルドの物言いに少しだけ腹が立って、そこから退く気にはならなかった。ただ気分の問題である。


「じゃあ、あんたはリィサが何でそんな無茶なことをするか知ってんのか」


「どういうことだ」


 ダルドは決して短気な人間ではないと思う。しっかりとした、できる人間だ。だから俺と話す時はなるべく落ち着こうとしている。リィサに対して怒鳴ったのも、自分がむかついたからではなく、リィサの為を思ってしたのだろう。


「知っているのか、知らないのか、それを聞いたんだ」


 俺は少しきつい言い方でダルドに言った。


「……いや、分からねえ」


 一瞬の間の後、ダルドがそう答える。まあ、ツンデレお嬢様のことだから言ってないとは思ってたけどな。


「だがそんなのは関係ないだろ! リィサは自分から危ないことをしてんだぞ、今回の『グラゴニウス』だって、最近何チームも依頼を受けては失敗してんだ!」


「だからって、あんたがリィサの意志を怒っていい理由にはならない」


「意志とかそういうんじゃねえ! 危ないから――」


「リィサが危険なクエストばっかり受けるのは、あんたや両親に認められたいからなんだよ! それくらい、何故分からない!?」


 俺はその場の勢いでつい大声を出してしまった。……やべ、恥ずかしい。


 しかし、俺が言ったことに、ダルドや周りの皆、それにリィサまでもが驚いている。


「な、何……?」


「親馬鹿なのは大変結構だが、周りが見えなくなるのはどうかと思うぞ、ダルドのおっさん。本当にリィサが大切なら、本人の気持ちも少しは聞いてやれよ」


 少し生意気だったかもしれない、と今更ながら思う。でも、やっぱり自分の決めたことに文句を言われるのは嫌だな。


「そ、そうなのか、リィサ」


 少し大人しくなって、ダルドがリィサに尋ねる。


 ツンデレお嬢様のことである、思いっきり否定するかな、と思ったら、案外小さく頷いた。その表情は正に拗ねた子供そのもので、何というか、妙に可愛かった。


「そ、そうか…………」


 何を考えているのかは分からないけれど、ダルドは静かになった。もしかすると、リィサの両親のことを考えているのかもしれない。リィサがどこまでダルドに話しているのかは知らないが、リィサと両親の仲があまり良くないということくらいは聞いていてもおかしくはない。


「……そうかそうか! リィサ! お前そんなこと思ってたのか! はっはっは! 全く不器用なやつだな!」


 暫しの沈黙を通り過ぎ、ダルドは豪快に笑うと、リィサの頭をワシャワシャと撫でた。


「ちょっ、別にそんなこと――」


 さっき自分で認めておいて、尚も否定しようとするリィサ。うん、やっぱりツンデレって素晴らしいな。


「キエルも、見苦しい所を見せて悪かった! お前、まだリィサに会ったばかりだろ? そんなやつによくリィサが話したもんだぜ! 俺にも話してくれてなかったのによ!」


「わ、私はそんなこと言ってな――」


「ああ、本当、リィサは人懐っこい人間ですよ」


 薄ら笑いを浮かべて、俺はダルドにそう言った。いや、この方が楽しいかなって。


「そんなにリィサに好かれるとは! 世の中には面白い男もいるんだな。キエル、俺はお前のことが気に入ったぜ。よし、これからリィサのことはキエルに託そう!」


「……は?」


 今度は俺が驚く番である。


「いや、俺、旅人だから。この街にはあと数日いるつもりだけど、ずっとこの街にはいないぞ?」


 ここはまだレノクターン王国内である。それにこの街は相当大きいので駐屯兵くらいはいるだろう。時間的に、もう一通り街内は調べられた後だとは思うが、まだ探索を続けている可能性はある。


「な、何!? そうだった! こ、このままではいかんぞ……! そ、そうだ! キエル! お前リィサと結婚しろ!」


「は!?」


「ちょっと、何言ってんの!?」


 おいおい、このおっさん何言ってやがる。


「ああ、俺婚約者いるんで」


「ま、マジか!?」


「いや嘘だが」


「嘘かよ!」


 ダルドが突拍子もないことを言うんで、ルテティアから言われたことを流用しようと思ったけど何かしっくり来ないからやめておいた。


 それにしても、ダルドはやはり大分陽気な性格のようだ。本当、良いお父さんだな。って言うか、ダルドの実の子供は何してるんだろう?


「まあ、連れもいるからこの街にずっといるっていうのは無理だな」


「そ、そうか……」


 何やら非常に残念そうにするダルド。おい、俺に何の役目を押し付けるつもりだったんだ。


「じゃあ、せめて祭りが終わるまではこの街にいてくれねえか?」


「祭り?」


「ああ。この街『カルカディオス』は一月に一回、大きな祭りがあるんだ――」


 一月? ああ、そう言えば暦が違うんだったか。えっと、確か1月は180刻だから、約半年、ってところか?


 何か、いちいち解釈するのは面倒だな。







 勇者の調整眼(偽) モード At.2000







「――それで祭りまであと五日なんだが、どうだ? 俺達と一緒に、祭り、楽しんでいかないか?」


 とダルドが俺に言ってきた。


 ん? 今五日って言ったか? 


 五日。つまりは一日×五である。


 一日? 確かこの世界では一日は一刻と言うのでは……?


「え? あと何日だって?」


 確認の意味でもう一度聞いてみる。


「五日だ。それで祭りが七日あるから、計十二日だな」


 ダルドがそう答える。 やはり「日」と言っている。


 どうやら俺の耳は俺の世界の基準に暦を合わせてくれたらしい。おいおい、便利だな、勇者の眼。偽だけど効果は本物じゃないか。


「十二日? んー、まあ、いいぜ。じゃあその祭りとやらが終わるまで、この街にいよう」


 この街がとても活気づいているように見えたのは祭りの準備ということもあったらしい。道理で色々催し物の張り紙とかがあると思ったぜ。


 それに、この街の雰囲気は好きだ。どうせ猿王のことだから、俺が国外に逃げたと知っても追いかけてくるだろう。だったら、国内にいたって同じかな。でも出来るだけ遠くに離れた方が捕まりにくいのも事実だ。だからやっぱりそんなに悠長なことは言っていられないが――


 楽しむことも大切だ。そう、せっかく異世界に来たのだ。色々と楽しみたい。


「おっ! そうか! そりゃ嬉しいぜ! ああ、それと、お前は相当腕が立つみたいだから、せっかくだし、その間に、俺のギルドに仮加入してみないか?」


「ギルドに加入?」


 これまた唐突な話である。勿論、俺がこの街に留まっている間だけだから何も気負いはないのだけれど。


「ああ、いいぜ。面白そうだし。是非入らせてくれ」


「おうよ! よろしくな!」


 かしっと俺の手を握るダルド。熱血だな。


「おお、そう言えば注文を聞くんだったな。何食うんだ? 今日は俺が奢ってやるぜ?」


一人でどしどし事を進めるダルドに少々困惑しながらも、良い所に来たなあ、と実感した。




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