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51、ツンデレ behind ミー ~おいおい、マジで来たのかよ~

「ん?」


 聞き慣れない少女の声がした。ルテティアが追ってきた訳ではないようだ。


「あんた! どこ行くつもりよ! 昨日もあの後一日中探したんだからね!?」


 急に怒鳴ってきて何事かと思ったら、何と、その声の主は昨日の高飛車少女であった。おい、マジかよ。本当に追ってきやがった。


 え、どんだけこのクエストやりたいの? しかも一人で。


 どうするべきかな。


 少しばかり考えてみる。


 この依頼は相当難易度が高い。しかしそれに見合うだけの経験値が得られるだろう。まだレベルの低い俺としては一気にレベルを上げるチャンスである。それに強い敵を倒せば自信もつくだろう。自信過剰になるのは良くないけれど、レベルそのものが大して高くなければ慢心になるということもない。難易度的には相応しくないものの、十分にやる価値のあるものである。


 故にここで少女にはいどうぞと返す訳にはいかない。


 俺が達成しても報酬は貰えないとは思うが、別に俺は報酬が欲しいのではない。ただ経験を積みたいだけだ。


 だからこの場でこの少女に紙を渡して、俺が先に倒しに行く、というのはどうだろうか。


 うん、それがいいかもしれない。


 いや、だがしかし、少女の狙いが何なのかによって、もっと有効な手があるのではないだろうか。

 例えば、少女が単に高額の報酬金を目当てにしているのなら、俺が退治して、それを少女がクリアしたことにすれば良い。


 だがもし倒すことに意味があると考えているのなら、俺が倒してしまった後で諍いが発生するだろう。


 中々面倒な少女である。


 まず聞いてみないことには分からないだろうから、質問することにした。


「お嬢さんはモンスターを倒したいの? それとも報酬金が欲しいの?」


「は? そんなの、強敵と戦いたいだけに決まってんでしょ?」


 何か逆ギレされた。


 どうやらこの少女、強者を求めているだけのようだ。


 どれどれ、どれ程の力があるのか、拝見させていただこうではありませんか。







 勇者の彗星眼(偽)   対象  高飛車な少女


 名前  リィサ・シャルトス・ウォーレンクライス


 LV  77


 種族  人間


 年齢  約18歳


 身長  166センチメートル


 体重  47キログラム


 3S  B89 W 57 H82 (E)


 JOB なし


 詳細


 レノクターン王国 大貴族、ウォーレンクライス家の娘。貴族らしい性格。加えて超がつく程の自由奔放。現在家を出て自分探しの旅をしている。それに、どうやら自分の成長した姿を親に見てもらい認められたいようである。


 好物はパンケーキ。最近胸が大きくなっていることを気にしている。戦いに支障が出るためである。


 得意な武器はレイピア。速度を重視した立ち回りが得意だが、重装兵のような戦い方もできる万能型。親との仲はあまり良くない。努力家。人付き合いが下手。状況把握も苦手。








「ふっ」


 つい、笑ってしまった。何だよこの詳細。面白過ぎだろ。


「い、今笑ったわね!?」


「ああ、笑った」


「な、この無礼者!」


 可愛い声でそう怒られた。いやでも笑いますよね普通。だって好物パンケーキで自分探しの旅をしてるんだぜ? しかも胸のことを気にするとか思春期の女子かよ。……ああ、思春期の女子だな。


 それはともかく、今の笑いはタイミング的に相手の信念を笑ったような感じになってしまったかもしれない。強敵と戦いたいという気持ちを笑うのは確かに無礼であった。俺も強敵とは戦いたいし。


「それで、お嬢さんは俺に何の用だい? 俺は今からこの、えーっと、何だっけ、そうそう、『グラゴニウス種』とかいうやつを倒しに行かなくちゃならんのだが」


 と言いつつ、さっきのステータスのことをもう一度考えてみると、一番初めに目が行くべき所は彼女のレベルであった。


 レベル77。


 この歳の少女、しかも貴族の娘のレベルではないだろう。基準がどうなのか未だに知らないが、努力家というのは間違いなさそうだ。


「それは私が先に取ったクエストよ! 返しなさい!」


「やだ」


 返せと言われても、この紙をくれてやった所で結局俺は倒しに行く気満々なのだから意味がない。


 クエストとか関係なく、俺は強い敵を倒して経験を積みたいのだ。


 ということで、少女、リィサ・シャルトス・ウォーレンクライスとの会話はここまで、というように俺は彼女を相手にせず、また歩き出す。


「ちょっ、待ちなさい!」


「やだ」


「なっ!? 本当に待ちなさい!」


「だからやだって」


 え? 意地が悪い? いやだって、面白いんですからしょうがないじゃないですか。


「ちょっと! 本当に、待って下さい……」


「ん?」


 急にしおらしくなった彼女。どうした、具合でも悪いのか。


「その……『グラゴニウス種』は、中々現れないんだから、お願いよ……」


 強く言っても俺が聞いてくれないと思ったのか、少女は理由を話して丁寧に頼んできた。


 ……あれ? 俺もしかして泣かせちゃった? いやまだ泣いてないからセーフ。


 男とは、女の涙に弱い生き物である。


「……ああ、悪かったよ。先にあんたが取ったのにな。でも、俺もこのグラ何とかっていうやつと戦ってみたいんだ。だから――」


 だから、どうしよう。


 諦めてくれ? いやいやそれは可哀想。


 俺が諦める? いやいやここまで来ておいてそんな訳にはいかない。


 じゃあ、どうしよう。


「良かったら、一緒に行かないか」


 少し小さな声でそう誘った。


 相手は高飛車なお嬢様である。下手に刺激するのも良くない。さっきまで散々やっといてなんだけど。


「は、はあ!? 一緒に行く!? ど、どうしてあんたと私が一緒に行かなきゃなんないのよ!?」


 まあ、思った通りの返しだった。


 そうだよなあ、初めて会った人間と一緒に出かけるのは嫌だよなあ。


 しかしながら、こういう性格の人間とは沢山会ったことがある。(勿論二次元で)


 だからこういう時、どうすれば場が落ち着くのかをある程度理解しているつもりだ。


「そうだな。確かに初めて会った人間なんて信用できないよな。でも、一流の冒険者っていうのは酒場で初めて会った人間とも上手く連携できるものなんだぜ? だから初対面の人間とも普通に出かけられるような人間って、憧れるよなあ。凄いよなあ。皆に認められるってことだもんなあ」


 と半ば独り言にように呟いた。


 そう、彼女は親に認められたいと思っている。ならば、そういう人間になろうとしているはずだ。


「……わ、分かったわよ。一緒に行けば良いんでしょ」


 ふてくされたように彼女が言う。


 …………ちょっと、素直過ぎじゃありませんかね。


 こう言えば確かに乗ってくれるとは思っていたけれど、まさかここまで予想通りの返答が返ってくるとは思っていなかった。ギャルゲー能力恐るべし。


「じゃあ、よろしくな。俺はキエル」


「ふ、ふん! 別に今回一回だけなんだから、挨拶の必要なんてないでしょ?」


「いやいや一流の冒険者というのは――」


「わ、分かったわよ! 私はリィサ。リィサ・S・ウォーレンクライス。どうせすぐ忘れるんだから、憶える必要なんてないわ」


 お嬢さん。それはフラグですよ。




 こうして、ツインテールツンデレガール、リィサがパーティに加わった。








          ――――――――――★――――――――――







「キエルさん!? どこですか!? どこに行っちゃったんですか!?」


 ベッドの上で高速回転するルテティア。


 パニックに陥っている。


「キエルさーんっ! どっこでっすかーっ!」


 ルテティア・イン・パニック。




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