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48、ドリーム via 現実世界 ~だから今は、目を閉じよう~

 夢だ。これは間違いなく夢だ。






 そう確信したのはその風景が今いる世界と明らかに違っていたからである。


 銀色に輝くのは高層ビルの窓で、吹き抜けるのはどこかの換気扇の風。


 俺が暮らしていた世界の光景だ。


 本来ならこういう夢は初めに見るはずなのに、すっかり時間が経ってしまった。


 そのせいか今目の前に広がっている光景がひどく懐かしいものに思える。


 本当に俺はこんな所に住んでいたのか、と疑問に思ってしまう。






 

 俺の人生、思えば本当に影の薄いものだった。


 自分から触れようとしなければ人とは関われない。そんなことを実感した。


 閉じこもっているだけでは人と仲良くなれない。そんな風に考えた。


 でも、それで良かったんだ。


 自分が必要な時だけこっちから声をかければ、人は俺の方を向いてくれた。


 普段は誰にも相手にされない俺でも、俺から話しかければ、ちゃんと話をしてくれた。


 だったら、それでいいじゃないか。都合の良い時だけ、人と付き合える。


 それって、良いことじゃないか。


 そう考えていた俺の人生は俺以外の人間にとってどんなものだったのだろう。







 一時期、人と積極的に関わろうとしたのを憶えている。


 恥ずかしいけれど、勇気を出して、人と関わった。


 必要でない時も、執拗に人を求めた。


 幼かったあの頃、どういう気持ちでそんなことをしたのかは、よく憶えていない。


 ただ、その感情を今は持ち合わせていないということだけは、はっきりとしている。








 もう助けた人の名前も顔も憶えていない。


 ぼやけるとか、そういうことではなく。


 記憶に無いのだ。


 きっとその人を助けた俺は別の俺で、俺ではないのだろう。


 きっとその人を助けたのは本物の俺なのだろう。








 そんなことを、現代の街並みを眺めながら考えた。明晰夢であるのに、不思議と体が動かない。


 だが不都合はない。


 何故ならその幻想は、俺の過去であり、過ぎ去ったものであり、捨て去ったものであり、失ったものであるからだ。もう俺のものではないからだ。








 

 だから今は、目を閉じよう。



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