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34、有翼人 above お転婆娘 ~空に浮かぶ三つの影~

 ええっと、『黒勇者』の資格剥奪とは、何のことでしょう。私全然知りませんよ?


 え、これはつまり、あのリア充四人が勇者として失格になったってことなのか?


 何したんだ、あいつら。


 剥奪されたというからには何かやらかしたのだろう。


 大体剥奪されるやつっていうのは悪いことしてるからな。免許剥奪とか。事故起こしたり飲酒運転したりすると剥奪されるだろ。


 だからこいつらもきっと剥奪されるような何かをやっちまったということになる。


 俺には関係ないけど。


「どうしたんですか? 急に立ち止まって」


「ああ、何でもない」


 しかし明日木白邪の記述も気になる。


『白勇者』のランクが四上がった、か。


 四という数字がひっかかるが、まあこいつについてはあまり触れないでおこう。何せナイフを振り回した女である。怖くて近寄れないね。


 俺は『偽勇者』で『実況者』だから、この辺の争いには関係がないのですよ。うん。





 実況者報告   そんなことはありませんよ?





 うわっ!?


 何か返事してきやがった。なんかこの実況者の文字怖いんだけど。いや確かに『魔王戦』の『実況者』というのなら無関係ではないかもしれないけれど、それにしても何なんだよこいつ。怖えよ。あと怖い。


 実況者の文字列とステータスの文字列は雰囲気が全然違うのでそこも怖い。


「あれ? また立ち止まって、どうしちゃったんですか? 置いてっちゃいますよ?」


「俺を置いてったら、ルテティアは一人だな」


「きゃあごめんなさい置いていきませんていうか置いていかないで!」


 中々騒がしい娘である。






『魔王戦』開始まであと357日→356日





          ――――――――――★――――――――――





「ついた、のか……」


「ああ、やっとだな!」


 疲労困憊、そういう言葉が似合ってしまうような四人である。


 その四人がついに工業都市『カウェルス』に辿り着いたのだ。


「私お風呂入りたい~」


「アタシも! 一緒に入ろうよ!」


 女子二人は長い湿地帯で気持ちが悪かったのか、そんなことを言い出す。


「確かに、今日一日はゆっくり休んだ方がいいかもな。闘技場へお邪魔するのは明日でもいいし。一応予定より早く着いているから、一日くらいは大丈夫だと思う」


「よっしゃ! 何か疲れも吹っ飛んできたぜ! 海王! 色々見て回ろうぜ! この街は大分面白そうだ!」


「ああ、だけど宿が先な。綾火達もお風呂入りたいって言ってるし。一回宿で荷物を置いて、それから街中を探索しよう」


「了解!」


 友理が元気に返事をし、一行の行動が決定する。


 道中では『黒勇者』の称号がなくなったことに相当の不安を抱いていたようだが、現在の彼らは活き活きとしている。これぞ、若者の活力と適応力というものなのだろう。


 だから、本当、リア充爆発しろ。






          ――――――――――★――――――――――






 森。森? そうです、森です。


 人の名前とかではなく、森さんとかではなく。「森林」の森です。


 異世界と聞くだけで人は緑豊かな自然を想像するものである。


 「異」世界と言っているだけなのに、ただ異なるとしか言っていないのに人は何故かファンタジー風の世界を思い浮かべるのだ。


 そしてその脳内風景には必ず、「草原」とか「山」とか「森」が存在する。


 そう、その森である。


 えーっと、だから何が言いたかったのかというと。


 ちょっとこの世界森多くね? ってことである。


 だって、俺つい先日も森に入ったもの。森に入って森から出てまた森に入るってどんなんだよ。


 ただ、実際の所、この森は異常に大きいという訳でもないらしい。(ルテティア談)


 だからそれほど長い間いる訳ではないのだろうけれど、それでももう森は勘弁である。俺、虫怖いんだよね。


 と言っても、この世界に虫はそれ程おらず、あちこちに這っている訳ではないのでその辺は助かる。


「キエルさん、森、抜けましたよ」


「え?」


 何やらやけに明るいと思っていたら、なんと森を抜けたようである。確かにそんな大きな森ではなかったらしい。


 が、目の前に広がっていたのは、草原。


 いやあ、またですか。


 どうやらこのループらしい。


「まだここはレノクターン王国内なのか?」


「ええ、そうです。まだ結構あります。私この国に来るまで結構歩いたんですよ? 結構大変だったんですよ?」


 ルテティアが愚痴を零す。


 ルテティアの国はレノクターン王国から北北東に位置するらしく、今俺達が向かっているのは北北西の国なのでルテティアも正確な距離は分からないようだが、実際ルテティアの国との距離は大して変わらないだろう。


 故にまだ距離が結構あるという言葉は信用に値するものと言える。


「いたぞ!」


 ああ、だるいな、とか考えていたら上の方から声がした。


 ん? 上? 何、また美少女でも降ってくるの? と思ったがその声は男のものだった。


「あそこね!」


 続いて女の声も聞こえる。どうやら数人一緒にいるようだ。


 あれ、何で上から声が聞こえるんだろう。


 俺は顔を上げて空を見た。


 所々に雲が浮かんでいる蒼穹にぽつり、ぽつり、ぽつり、と三点影が見える。


 空に、人影が見える。


「おい、ルテティア。空に人間が飛んでるんだが、あれ、知り合いか?」


「……な、何のことですか、知りませんよ、あんな人」


「おい、じゃあ何故俺の後ろに隠れる?」


 知らない知らないと小声で呟きながらルテティアは俺の背中に隠れている。ただ隠れているだけでなく体まで小さくしている。どんだけビビってんだ。明らかに知り合いだろ。


 上空に浮かぶ三点の影は次第に大きくなっていった――つまりは俺に近づいてきた。


「ルテティア! お前また勝手に抜け出して! いつもお前を探す身にもなってみろ!」


 とか言いながら近づいてくる。抜け出したの、今回が初めてじゃないんかい。


「ルテティア。思いっきりお前の名前呼んでるぞ。完全に知り合いじゃねえか」


「いえ! 知りません! あんな人達知りません!」





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