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32、無駄話 along 無駄話 ~うむ、取り敢えず仲間獲得~

「それより、あんたはどうしてこんな所に落ちてきたんだ?」


 ついこんな所に現れた理由が気になってしまい聞いてみた。


「あんたではなく、私はルテティア・ルトゥム・マッドエストアークです」


「……じゃあルテティア・ルトゥム・マッドエストアークは――」


「ルテティアでいいです」


「……そっか。じゃあルテティアはなんでこんな所に落ちてきたんだ?」


「気になりますか? ふふふ、気になるんですね?」


 両手を前で合わせてくねくねしながらルテティアが言う。


「いや、別に言いたくないならいいよ」


「いえいえ、そんなことないです。むしろ言いたいです」


 じゃあ早く言えよ!


「私はですね。今追われているのです」


 ルテティアは急に真剣な顔になった。その表情には恐怖も織り交ざっているように見える。


「追われている? 誰にだ」


「気になりますか?」


「気にならない」


「えぇー? そんなこと言わずに聞いて下さいよ! 私はですね、今悪い人に追われているのです」


「悪い人?」


 確かにこんな少女を追いかける人間なんて悪い人とか変態くらいだろうけれど(どっちも結局悪い人だが)その悪い人とは一体どのような人間なのだろうか。


「そうです。三人組の獣人です。何とびっくり、空を飛んでいる私をしつこく地面から矢で撃ち落とそうとするではありませんか!」


「おお、それは物騒だな」


「私達有翼人は狙われやすいですからね」


「そうなのか?」


 それは初耳である。いや、この世界のことは大抵が初耳になるのだが、果たして有翼人が狙われやすい理由とは何なのだろう。


「ご存知ないんですか? 有翼人の羽は非常に高い値がつくので狩りの対象にされやすいのです。有翼人狩りです」


 ルテティアは震えるような声で言った。やはりどの世界にも人身売買的なことはあるらしい。


 それに羽が高く売れるということは翼をもぎ取るということだろう。結構残酷だな。


「なるほど。それは確かに危ない所だったな。で、何で墜落したんだ?」


「えへへ。ちょっと制御を誤りまして。何分私は未熟者ですから」


「おいおい、しっかり飛べるようになるまで飛んじゃ駄目だろ」


 物事にはちゃんと順序ってものがあるのだから、しっかり飛べないうちに無理をするのはいけないぞ。まあ、俺もまだ全然飛べないんだけどさ。


「はい、すいません。私達有翼人はおよそ30月で一人前と認められ、一人、または数人で旅をするのですが、私はまだ28月ちょっとですので本来は飛び出してきちゃいけないんですよね」


「そうなのか。……それって駄目なことなんだろ?」


「はい」


「なのに飛び出してきたと」


「はい」


 ……随分とお転婆な娘のようである。


「有翼人は血縁的結合より地縁的結合を重視しますので私達は十数人から数十人で集住して暮らしています。まあ、その里を勝手に飛び出してきた、という訳ですね。えへ」


 大分難しい言葉を使う子だなあ、と思いつつも言っていることはやはり理に適っていないことである。


 ルールはちゃんと守るべきだ。30月にならないと一人前と認められないのならまだ一人で出てくるべきではない。


「それで、食糧とかどうやって調達するのかなあと思いまして、試しに獣人から盗んでみたら追いかけられちゃった、ということになります。えへへのへ」


「それ完全にあんたが悪いんじゃねぇか!」


 ……ルテティアも盗人なのかよ。まだ若いんだからやめときなさい。若くなきゃいいってものでもないが。


「生きる為にはまあ、悪さも必要なのです」


「いや何人生の先輩みたいに語ってんの!?」


 確かに異世界の先輩ではあるけども。


「まあ細かいことはいいじゃないですか。それよりも、私多分まだ追われてると思うんですよね。だから旅人さん! じゃなくて、えっと、キエルさん! 私を助けて下さい!」


 少し目を潤ませながらルテティアが俺に懇願してくる。うっ、これほど純粋に頼まれると断りづらいな。だがこれ以上美少女を引き連れてもまた危険な目に合わせてしまうし……


 って、こいつは一人でいたらもっと危ないか。フィルナのような実力を伴っていればまだしもルテティアは14歳、レベルは25である。無論レベルだけで戦闘力は分からないが少なくともレベル以上の戦闘力はないだろう。……あ、でも俺とあんまり変わらないか。


 それならばお互いに丁度いいかもしれない。


 ゲームでもあるように、レベル上げをする際は高レベルの人に同行を願うよりも同レベルくらいの連中が固まっていった方が何かと捗るものである。それにそっちの方が楽しい。


 きっとこの世界でも、実力が同じくらいの者と一緒に旅するのは悪くないはずだ。


「まあ、助けてあげても、いいけど」


「ありがとうございます! ……はっ、助けたお礼を要求するつもりですね? 何でもいいですよ! 肉でも魚でも金貨でも……って、バッグがない!? 嘘……落としてきちゃったみたいです……」


「そうか、なら仕方ないな」


 おそらくそれも盗んできたものなのだろうけれど、失くしたのなら仕方ない。自業自得というやつだ。


「し、仕方ない……? そ、それはもしかして、お礼は体で払えという……」


「いや違うからね!?」


 この子、どうやら好奇心旺盛な年頃のようです。全く、本当に仕方のない子ですね。こうなったら俺が色々と優しく指導してあげよう。無論、変な意味でではない。


「とにかく、追われてるんだろ? ……俺も特に行く当てもないから、ルテティアの行きたい所でいいぞ」


 丁度今後の方針も考える必要があったので、良い機会である。地図や街の詳細を調べた上で色々考察して決めるのは結構面倒なので、いっそこの世界の人間に任せてしまったほうが楽だろう。


「え、本当ですか? 私についてきてくれるんですか?」


 どちらかというと俺を案内してくれる、という役回りなのだが。


「ああ、ついて行くよ。どっかの街に行くのか?」


「はい! じゃあ私、一度城下町に行ってみたか――」


「却下だ」


「な、何でですか!?」


 城下町はどう考えても却下である。確かに冒険者としては、あの賑やかな街に行きたいと思うのは当然のことなのかもしれないが、やっぱり駄目である。


「この国からは出る。その条件さえあれば、どこでもいい」


「そ、そうなんですか……? 行きたかったなあ。『ムーンセティア』、行ってみたかったなあ……」


 ルテティアがこっちを見てくる。そ、そんな可愛い顔で見たって駄目なものは駄目なのだ。


「他にも行ってみたいところとか、あるだろ」


「ええ、まあ、ありますけど。私、隣国の『フェルガング王国』からはるばるこの『レノクターン王国』まで来たんですよ? ちょっとくらい寄っても――」


「却下だ」


「何でですかぁ! 行きたい、行きたい!」


「それはだな、俺も追われている身だからだ」


 どうしても『レノクターン王国』の街に行きたいらしいルテティアが駄々をこねるので俺は事情を話すことにした。とは言っても、勿論細部を色々変更して、だが。


「お、追われてる? そうなんですか?」


「ああ、実は俺、王国で濡れ衣を着せられてしまってね。軍の連中に追われているんだ。本当は話し合いで解決したいんだが、どうも向こうは聞いてくれそうにない。だから俺はこの王国から逃げ出さなくてはならないんだ」


 少し深刻そうに言う。勿論演技である。


「き、キエルさんも大変なんですね……分かりました! ここは私と一緒に国外逃亡しましょう!」


 嬉しそうに言うルテティア。おい、何か駆け落ちみたいになってんぞ。


「あれ、そう言えばルテティア。さっき隣国のフェル何とか王国から来たって言ってたよな?」


 ルテティアが違う国から来たことは結構驚きである。こんな小さな少女が一人で国家間を移動したとなると、中々大変だったのだろう。おそらくこの世界の国境はそこまで厳密なものではなく、空を飛べば――見つかったらやばいと思うが――国境越えも難しくはないのかもしれない。


「え、あ、はい。あれ? キエルさん旅人さんなのに知らないんですか?」


 ルテティアが首を傾げる。彼女には俺が異世界から来たということを教えていないので不思議に思うのも当然だろう。


「俺は無知な旅人だからな。何にも知らないんだ。だから一人でも同行者がいれば本当に助かる」


「おお!? それはもしかしなくても私のことですか!? 私のことですね!? ふっふっふ。頼って下さい! 是非頼って下さい!」


 う、うわあ……頼りにならなそう。


「ああ、頼りにさせてもらうよ」


 だが俺は思っていたことと逆のことを口にした。それに、頼りにならない方が案外頼り過ぎなくてしっかり自分の能力強化ができると思うし。


 そういう意味では、ルテティアは良い同行者になりそうだ。


「あれ? でも初対面の人に軽々しくついて行ってはいけないんでしたっけ?」


 とここで俺の言った言葉をルテティアが繰り返す。


「そうだな。確かに赤の他人について行ってはいけない。だがルテティア。この場合、君には選択肢が二つある。……一人で逃げて獣人達に捕まるか、俺と一緒に逃避行をするかだ!」


 せっかく出会った人間をこのまま見逃す訳にはいかない。俺は少し脅すような口調で言った。実際ルテティア一人で逃げても俺と一緒に逃げても獣人達に見つかる確率も捕まる確率もそう変わらないのだが、そこはまあ、弁舌巧みということで。


「は、はいぃぃ! 一緒に逃げます逃避行しますだから置いてかないで見捨てないで!」


 予想以上にルテティアはビビッている。


「いいだろう。では一緒に行こうではないか! 取り敢えず、この国を出るぞ!」


「はい!」


 こうして『偽勇者』一行にルテティア・ルトゥム・マッドエストアークという謎の有翼人が加わったのだった。


 え? 何で加えたのかって? それはあれですよ、この世界の人が一緒に来てくれた方が何かと知識も溜まりやすいし不便もないしそれにパーティを組んだ方が危険は減るだろうし……


はい、ルテティアが可愛かったからです。








 実況者報告


 国立海王が『黒勇者』の資格を剥奪されました。

 外森西治が『黒勇者』の資格を剥奪されました。

 時沢綾火が『黒勇者』の資格を剥奪されました。

 佐々田友理が『黒勇者』の資格を剥奪されました。

 明日木白邪の『白勇者』ランクが四上がりました。


          『魔王戦』開始まであと357刻(地球モード 357日)





 ……な、何だ?


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