30、美少女 from ザ・スカイ ~いやいや、そんな馬鹿な~
かくして偽勇者になった俺は喧騒を通り過ぎ、静寂が漂う草原を一人で歩いていた。
う、うわあ……何か超寂しい。
急に一人になったところで、そんな感想が出てきた。
やはり人の力って凄いんだなあとか思ってしまう。美少女でなくとも、人間が隣に一人いるだけで随分と感覚が違うというのが分かる。なるほど、だからリア充共はいつもガヤガヤしている訳だ。
でも大丈夫。寂しいことには寂しいが、それで立ち止まってしまうとか、そういうことはない。元々一人は慣れっこである。
歩けば歩く程、あの町から遠くなるけれど、未練なんてない。うん、ない。……ないと思う。
……仕方ない。白状しよう。未練は思いっきりあります。
何せ美少女二人と離れてしまったのだ。ない訳がない。
しかし、生きる糧を探し、また自分の能力を把握し上昇させるには、一人の方が好都合なのもまた事実。
実に悔やまれるが我慢するしかない。
ということで、気を紛らわせる為に俺は魔法の使い方を考えてみることにする。
そう、この世界の魔法は何も技名があって繰り出す訳ではないのだ。そういう括りはなく、ただ己の力で繰り出すのである。
もしかするとこの世界のどこかには「何とか流」の技とかあるのかもしれないが、少なくとも俺にはそういった固有の技はない。ゲームほど甘くはないということだ。
だがステータスを見れば自分の使える魔法の概要くらいは分かるだろう。
俺は魔法の詳細を開くことにした。……あんまりステータス開きたくないんだけどね。
魔法 想像魔法 あなたの想像で力は無限大に!
……としか書いていない。おいおい、全然詳細じゃないぞ、これ。
本当にそれしか書いていない。想像魔法の説明がこれだけ、というだけではなく、他の魔法の記載も全くされていないのだ。魔法の詳細はこれで全部、とでも言うかのようである。
え、そうなの? 俺、これしか使えないの?
全てが想像した通りになる、と言えば聞こえはいいかもしれないが、今まで使ってきた感じからすると、これは実に微妙な性能なのである。
チートでも何でもない。エセチートである。
どれだけ逞しい想像をしても実現されるのはその超縮小版。大したことは全くと言っていい程できない。
まあそれも多分レベルが足りないからなんだろうけどさ。偽物だからエセでも仕方ないか。
ならば、始めに俺がやるべきことは一つである。
レベル上げだ。
戦いだけが経験ではないが、それでも戦闘をこなす必要はあるだろう。ちょっと怖いけど、やるしかなさそうっす。
少しびびりながら現在のステータスを確認してみる。
名前 煌々川綺慧瑠
LV 30
HP 960/1000000
MP 高い。
ATK 77
DEF メンタルの強さによる。
MAT 0(十億の位を四捨五入)
MDF メンタルの強さによらない。
SPD 豹にギリギリ負けるくらい。
LUK そこそこ。
EXP 記載している暇はない。
特性魔法 記載するのが面倒。
薄影 とにかく影が薄い。
JOB 『偽勇者』 『実況者』 (『魔王戦』開始まであと357刻)
※ステータスは変更される可能性があります。
おや? 普通に戻ってるな。これが普通だと思えてしまうのは残念でならないけれど。
そんなことはともかくとして。現在俺のレベルは30。これがどれくらいの値なのか厳密に比較はできないが、貴族の娘(17歳)がレベル43で盗賊のボス(17歳)がレベル88ということは、異世界に来て数日の伸び具合としては良い感じなのではないだろうか。
残念ながらLVとATK以外に確たる数値は分からないので(HPは本当謎)俺が強いかどうかはやっぱり分からないのだが。
まあ今強くなくともこれから強くなればいいのだ。気にすることはない。
そうだな、まずは魔法の使い方だな。
確かに一つしか持っていないけれど、これは使いこなせればそれこそチート級の強さを誇るはずだ。
ここはいっちょ、楽しんでいこうじゃないか。
まず、今までで実感したことを並べると。
一、基本的に単純な思考なら何でもできる。
一、実際に想像したものよりしょぼい。
一、回数制限はない。
一、発動までに時間はほとんどかからない。
一、少し複雑な想像は実現されにくい。
とこんなところである。
単純な思考、例えば「炎を出す」とか「傷を癒す」とか「宙に浮く」とか「姿を消す」とか。そういうシンプルな言葉で表せる想像は基本何でもできるらしい。ただしょぼくなるというデメリットつきで。
そして回数制限はなさそうである。
現在までに何度も使っているが未だに不都合は起きていない。
だが、想像が複雑になると、うまくいかないこともある。
例えば「二十メートル先に丸太を三本燃えた状態で召喚した後その丸太を一本は北へ六十メートル、一本は西北西へ七十メートル、もう一本は上空五十メートルまで飛ばす」といった行為はできなかった。……何やってんだろ、俺。
他にも、想像している時に「これは無理っぽいな」と思ってしまったこともできなかった。
例えば、「空から美少女が降ってくる」とか。実際願ってはいても心のどこかで「不可能」と認定してしまうとできないようである。
「戦争がなくなりますように」とか、「不治の病を治してくれ」とか、「こいつらを皆殺しにしろ」とか。あまりにもぶっ飛んだものは想像魔法の範囲外のようなのだ。ただ、想像力次第で可能性は無限大らしいので、レベルアップすればもしかしたらできるかもしれない。
よーし、なんかやる気が出て来たぞ。
レベルアップして美少女を空から降臨させてやる――――
「きゃあああああああああああああああああああああ!」
とそう意気込んだ所、突然可愛らしい叫び声が聞こえた。
空からだ。
いやいや、そんな訳はない――――
「ってえええっ!?」
(巨大な、クッション!)
「ぶへっ!」
俺が半ば自己防衛策で出したふかふかクッションの上に、誰かの潰れ声が聞こえた。大丈夫かな。
「だ、誰だ!?」
いきなり空から降ってきやがった。
空からだよ? 空から。ありえないでしょ。
……いや、待てよ? 何かこの世界には色々種族がいるらしいし、もしかしたら空を飛ぶ種族もいるかもしれない。その中のヘボ助が一人墜落したとかそういうこともあるのではないだろうか。
俺は召喚したクッションを戻すと、地面にぐったりしている人間を見た。
「……ほ、本当に、空から美少女が降ってきたっ!?」
おいおい、マジかよ。こういうありきたりなのは普通物語の冒頭で起こることなんじゃないのか? もう俺とっくに色々やらかしてるんだけど。もうメインヒロインの座は空いてないぜ?
いや、だがしかし、現状俺に同行している美少女はいない訳で、つまりは今目の前でぶっ倒れている美少女がメインヒロインってことも……うん、そんなことはどうでもいいな。
しかしこいつ、目を瞑ったまま動かない。
水色と銀の中間位の綺麗なセミロングの美少女である。身長は多分150くらい。背中に……羽が生えてるな。小さめの羽が。
この少女、もしかすると鳥人とかそういう類なのだろうか、と思って手足を見てみるが至って普通の人間のものだ。
それでは何か? 天界から下りて来た天使とでも言うつもりか?
「おーい、大丈夫か?」
しゃがんでつんつん突いてみる。肩をね。そんないかがわしい所は突きませんよ。
本当、こいつは何者なのだろうか――
と思ったが、そうだ。そんな時は勇者の彗星眼(偽)があるではないか。
(さあ、見せてくれ)
勇者の彗星眼(偽) 対象 羽つきの少女
名前 ルテティア・ルトゥム・マッドエストアーク
LV 25
種族 有翼人
年齢 約14歳
身長 153センチメートル
体重 32キログラム
3S B80 W 52 H77 (C)
JOB なし
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