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27、役者登壇 ~では見ているがいい。この私の、華麗なる登壇を!~

 二日の戦闘経験により、四人のステータスはそれなりに上昇しており、実力だけでなく、自信もついてきている。


 前へ進みながら戦い、戦いながら前へ進む。


 そうやって強くなっていった。


「最初はどうなることかと思ったけど、全然大丈夫じゃん! なあ? 綾ちゃんも友ちゃんも普通に戦えるどころかもう俺より戦えてるんじゃね?」


 笑いながら西治が言う。


「えへへ。もうばっちりみたいだね!」


 友理が少し照れた様子で呼応する。


 海王達四人は「『カウェルス』へと西」に向かっている。






          ――――――――――★――――――――――






明日木白邪は鋼鉄でできたような都市を抜けた。もうとっくにクラソルテ王国内に入っていた。気づかれることなく、入っている。


 壁に刻まれた文字には『カウェルス』と書かれている。そこを抜けると、大地が広がった。


 湿った大地だ。


 悲しい、大地だ。


 枯れている。植物が泣いている。


 朽ちている。


 仮面の白勇者、明日木白邪は、「『カウェルス』から東」へ、足を運んだ。






          ――――――――――★――――――――――






「さ、さよならって、どういうことですか……?」


 急に不安になったようで、ミネルが俺に聞き返してくる。か、可愛いな。


 しかし俺はミネルには答えずにもう一度フィルナの方を向いた。


「フィルナ。頼みがある」


「な、何だ」


「フィルナの義務は「俺達をこの町まで案内すること」だ。だからその条件はもう達成されている。だからもうフィルナに何かを強制させることはできない。だけど、一つだけ頼みたい」


「だ、だから何なのだ」


 俺が顔を近づけて真剣に言うと、フィルナは狼狽えながらも俺の話を聞いてくれる体勢を取った。


「俺がフィルナの逃げる時間を稼ぐから、フィルナはミネルを連れてこの町を抜けて、そのアジトまで戻ってほしい」


「な、何故だ!?」


 オーバーリアクションのフィルナ。だが今は真剣な話中だ。俺は構うことなく続ける。


「ミネルを一人前の盗賊にしてやってくれ。こいつは、本当はメイドなんかじゃなく没落貴族の娘なんだ。それなりに武術は使えるようだがそれでも温室育ちのこいつにこの世界を生き抜く力はない」


 俺の熱弁をフィルナとミネルは驚くように聞いている。


「これ以上俺と一緒にいても、ミネルは危険にさらされる。それは勿論、盗賊と一緒にいても危険は危険だろうけど、そっちには仲間がいるんだろ? しかも女盗賊の集団ならミネルだって入りやすいだろう。だから、こいつを連れて逃げてくれ。ミネルを、一人でも生きていけるような人間にしてくれ」


 真剣に頼んだ。


 何、別に俺は善人じゃない。


 そんな素晴らしい人間じゃない。


 ただの下心である。


 ミネルが可愛いから、助けるだけである。助けられるから、助けるだけである。


 でも、やっぱりそれでいいじゃないか。


「頼む。ミネルを、救ってやってくれ」


 俺には武術の心得はない。教えてやることもできない。


 勇者であっても、所詮は偽物。本物なんて何一つ持っちゃいない。


 だから、縋る時は全力で縋る。


 つい数日前にあった美少女大盗賊に、全力で頼むのだ。


「……わ、分かった。だが、うちは厳しいぞ」


 フィルナがミネルに問いかける。


「は、はい! ……その、キエルさん。私の為に、えっと、その、そんなに熱心になってくれてありがとうございます! 私、必ず強くなります!」


 ミネルは何かを決心したように強い意志のこもった瞳で俺を見た。


 純粋な瞳が、痛い。


 その純粋で強い、本物の決意が、痛い。


「ああ。頑張れ」


 だが俺は、ただ頑張れとだけ言うことにしよう。


 後は、頑張れと。


「しかし、キエル。どうやって私達の逃げる時間を稼ぐのだ? 王国軍は現在キエルではなく私を探しているのだぞ」


「ふっふっふ。大丈夫だ。俺は伊達にフィルナの恥ずかしいシーンを二度も見ていない」


「なっ!? い、今それを言うな!」


「いいじゃないか。心配することはない。必ず、隙はできる。フィルナとミネルはそれまでここに隠れていて、抜け出せそうになったら全力で逃げてくれ」


 不敵に笑う。


「ミネル。お前なら大丈夫だ。きっと強くなれる。そして、必ずまた会おう」


 俺は立ち上がった。


「は、はい!」


 え? 何、かっこつけすぎ?


 良いではないか。何せ美少女二人の前であるぞ。


 存分にかっこつけようではないか。


「ああ。ミネルのことは私に任せてもらおう。必ず立派な女盗賊にしてみせる」


「ふふ、ありがとう、フィルナ。出会ったばかりなのに、親切にしてくれて。君とも、必ずまた会いたい」


「あ、ああ」


 少し照れ気味のフィルナと握手を交わす。


「ふふふ……ふっふっふ。さて。では見ているがいい。この私の、華麗なる登壇を!」


 再び高慢なキャラを演じる。


 限りなく自信に満ち溢れた、偽物の姿を。








 つまりは、『偽勇者』煌々川綺慧瑠の、異世界デビューである。


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