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23、先行偵察 ~どうやらデカいらしい~

「ねえ、フィルナ。その街ってレノクターン王国のどの辺にあるんだ?」


 何となく気になって聞いてみた。


 城下町は抜けたけれどこの森はまだレノクターン王国の領土な訳で、まだ完全に猿何とかから逃げきれたとは言えない。


「北の方だな」


 すぐ答えが返ってくる。まあ、俺が具現化した地図で探せば分かるんだけどね。


「でも、もう日が変わっちゃってるぞ。そろそろ俺眠気が限界なんだよね」


 毎日十時には寝ていたからな。


「……確かに、あと少しで出られるという距離ではないし、な。今日はもうこの辺で休んでおくか?」


 先頭を行くフィルナが俺達に提案する。


「俺は大賛成」


「あ、はい。キエルさんが言うのでしたら……」


 ミネルは迷うことなく俺に従ったが、その顔は何やら不安を宿している。


「ん? どうした?」


「い、いえ、その、外で寝たりするのは……初めてなので……」


 なるほど、野宿が初めて、という訳か。こりゃお貴族様だな。まあ俺もしたことないけど。


「だそうだが、フィルナ。ミネルの面倒見てやってくれるか?」


「な、馴れ馴れしいな、キエル。私はただの案内人であってそこまでの義務は――」


「まあ固いことは言わずにさ。何ならミネルを抱き枕にして休んでもいいから」


「そ、それに何の意味がある……?」


 フィルナはその可愛らしい声で疑問を上げている。


「まあ、それはどうでもいいんだが。だってフィルナは誇りある盗賊だろ? サバイバルには強いはずだ。なら、サバイバルの先輩としてミネルをしごいてやって下さいよ」


「ん、そうか。分かった」


 俺がフィルナを褒めると何だかあっさりと引き受けてくれた。やっぱり素直な子っていいね。


「ミネル。今日はここで寝るから、フィルナの傍を離れるなよ」


「あ、はい。分かりました。……その、宜しくお願いします、フィルナさん」


「ああ、分かったよ」


 少し優しげな面持ちで、フィルナはミネルを見た。


 おお、仲が良くなりそうじゃないですか。いいですよ、いいですよ。大変結構ですよ。……べ、別に百合とか期待してないから。


「それじゃ、おやすみ! 俺はもうコクッと寝るから」


 手を振って、二人から少し離れた所で毛布を一枚広げ、包まって寝た。案外気持ちいい。


 ……だから! Mじゃないって!






           ――――――――――★――――――――――





「何ぃ!? まだ見つからぬのか!?」


 夜が明けて、日の光がこぼれる間で、王サルバトルの怒号が響く。


「申し訳ありません。街の人間に聞いてもそんな人間はさっぱり見なかったそうで……」


 家来が謝罪をする。


「勇者殿はあの服を着ているのだぞ!? そんな、目撃者が誰もいないなんてことがあるか!」


 キエルの影の薄さを知らないサルバトルにとっては、いや皆にとっても、これは相当不可解なことだろう。


「く……せっかく召喚した勇者を失う訳にはいかぬと言うのに……仕方あるまい、国全土にかけて勇者殿の捜索令を出すのだ!」


「し、しかし、『魔王戦』に関することはあくまでも極秘にやらねば――」


「勇者だと伝えなければ良いだけのこと! 至急、勇者殿の外見を魔力念話通信で全土へ伝え、捜索させるのだ!」


「は、はっ! 仰せの通りに!」






           ――――――――――★――――――――――






 海王達が城下町を発ってから数時間。この周辺には民家もなく、自然の赴くままの地形となっていた。


 森にはなっていないが、草木は乱れ、時折無彩色の岩肌が顔を出している。


「海王~ 私疲れたよ~」


 数時間しか経っていないが、綾火が疲れを訴えた。


 確かに、数時間とは言え女子高生には荷が重かったかもしれない。


 何せでこぼこ道に続くでこぼこ道、急な坂道、下り道、あらゆる地形を歩いているのだから。


「だ、大丈夫か? 荷物、持つよ」


「え? あ、ありがとう~」


 綾火は一度きょとんとして、そのまま海王に荷物を渡した。


 綾火は特段、あざとい訳ではない。


 海王にアピールこそするものの、か弱い女子を装って荷物を持ってもらうだとか、そういう知恵は働かない。今のは単に口癖として海王の名前を言ってしまっただけで、単なる独り言のつもりだったのだ。


 勿論途中に休憩は挟んでいるので無理をしているという訳ではないが、やはり少女の身に負担がかかるのは仕方のないことである。


 対して友理の方は、全くダウンする様子がない。


 西治と海王が疲れを見せないのは分かるが。友理まで平気だとは意外である。


 快活ではあるものの、友理も一人の女子である。これだけの道を歩いてきたとなると疲れも溜まりそうなものなのだが。


「っ! みんな! ちょっと隠れて!」


 先頭を行く海王が何かに気づいたようで、皆を石の陰に誘導する。


「何かあったん?」


 友理が少し興奮気味に尋ねるが、海王の表情は緩んではいなかった。


「この先、少し細い道になっているだろう? その近くに大きなトカゲみたいなのがいた気がするんだ」


「トカゲ?」


 西治がハテナマークを浮かべる。


「ああ、あれが魔物っていうやつなんじゃないか? ほら、ゲームで出てくるようなトカゲのやつなんじゃないか?」


「え、マジで!? そいつ、強いのか!?」


「分からない。だから俺がちょっと行って様子を見てくる」


「海王、大丈夫なの~?」


「ああ、ちょっと見てくるだけだ」


 そう言うと海王は荷物を預け、腰を低くしたまま魔物がよく見える場所に移動した。


 腰に提げた剣の音が鳴らないように気をつけながら、海王は少しずつ巨大トカゲに近づいていく。


「っ!?」


 でかい。海王は思わず声を出しそうになった。さっき一瞬見えた姿よりも遥かにでかいのだ。


 余裕に四メートルはある。さっき見えたのは尻尾の部分だったようである。


 あんなのに勝てるのか。


 そう思ってしまった。何とも情けない勇者である。


「?」


 そしてその巨大トカゲから目を離そうとした時、海王の目の前が青く光った。






 勇者の彗星眼 

 生物名  ヘルゼル・リ・グラゴニウス

 LV   140






 何と、いきなり大物を引いてしまったらしい。だがレグラリオの言っていた「強力な魔物が出現する場所」はまだまだ先である。


 それなのにこれほど高レベルの魔物が出てきてしまった。これは、この先に行けばもっと危険な魔物が出るということなのだろうか。


 それに、勇者の彗星眼とは何だろう。どうやら相手のステータスが見えるようだが――


 と瞬時にあれこれ考えてしまった海王だが、思えばこの道は西側へ続く道、強者達しか通らない道である。その強者達が数人がかりで行けばあのトカゲも倒せるのではないだろうか。増してや、海王達のレベルは200を超えている。それが四人もいるのだから、勝つのは簡単なはずだ。


 海王は音を立てないように皆の所へ戻った。


「みんな。あれは相当でかいぞ。ここからだとほんの一部しか見えないけど、四メートル以上はあった。ただ、レベルは140。多分俺達四人が力を合わせれば、いける」


「ほ、ホントか?」


 少しびびった様子で言う西治。


「だ、大丈夫かな~」


 あからさまに不安そうな顔を浮かべる綾火。


「ま、頑張ってみようよ!」


 と積極的な友理。


「ああ。大丈夫だ。あいつがいつ動くか分からないからあまり作戦の時間は取ってられないけど、基本のフォーメーションとしては、俺と西治が前衛で、綾火と友理は後衛。二人は後ろで使えそうな魔法を選んで使ってみてくれ。大丈夫だ。攻撃が当たれば間違いなく倒せる」


 海王が勇気づけると、皆少しずつやる気になってきたようである。


「まさか初めての敵がレベル100越えとはねぇ。ゲームじゃあり得ないぜ」


 男前にそう吐き捨て、


「じゃあ、行くか! 海王!」


「ああ!」


 二人の鼓舞の声と共に、四人は一斉に巨大トカゲ、ヘルゼル・リ・グラゴニウスの前に躍り出た。





今日確認したら、週別ユニークユーザが1500を超えていました!

びっくりです!

モチベーション上がりまくりです!

ありがとうございます!

これからもよろしくお願いします!

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