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20、新同行者 ~女盗賊は頼りになるのか~

 分かりやすい内容を伝えると随分食いついてきた。


「信じられないかもしれないが、二つの王国、レノクターン王国とクラ、クラ何とか――」


「クラソルテか」


「そうそうそれ、クラソルテ王国は勇者の召喚に成功した。レノクターンでは俺、クラソルテではおそらく四人の『黒勇者』が召喚された」


 どうせ伝わらないだろうから、取り敢えず言うことだけは言っておくことにした。


「四人!?」


「何だ、まずいのか?」


「いや、話には黒と白、それぞれ一人ずつしか出てこない」


「んー、まあ、その辺は良いんじゃない? 適当で」


「いいのか?」


「いいでしょ」


 ということで、別に何人でもいいじゃない。


「それに、あともう一人、どこにいるのかは分からないが『白勇者』が降臨した」


「レノクターン王国に、ではないのか?」


「いや、レノクターン王国に召喚されちゃったのは俺だから」


「では、キエルは何なのだ」


「だから偽」


「……?」


 うーん、どうにもここが通じないようだ。


「俺も異世界からここにお呼ばれしちゃった訳なんだが、残念なことに偽物だったのであります。何でと聞かれても、それは俺が聞きたいことだね」


「そう、なのか……?」


 よしよし、少しずつ理解してくれているようだ。


「それで、現在クラソルテ王国に『黒勇者』四人、どこかに放り出された『白勇者』が一人、そしてレノクターン王国に召喚された『偽勇者』こと俺は現在メイドと二人で逃亡中、という訳だ」


 あ、やべ。本当そろそろ探しに行かないと。


「な、何故キエルは勇者達のことが分かる?」


「それは俺が『実況者』だからだ」


「じ、実況者?」


「別にこれは理解しなくてもいい。とにかく、今大事なのはレノクターン王国から逃げて、ひとまず近くの街に隠れることだ――」


 立ち上がってミネルを探しに行こうかと思ったのだが、目の前に座っているフィルナがあまりにも寒そうにしているので、つい足を止めてしまった。


「寒そうだな。取り敢えずこれを――」


 俺はマントっぽいやつ(多分高級品)をフィルナの背中にかけた。


「あ、ありがとう……」


 素直にお礼を言うフィルナ。強情だと思っていたら案外素直だった。やっぱり素直なことは良きことかな。


「……! キ、キエル。その傷はどうした?」


 突然、驚いた様子でフィルナが言った。


「え?」


 俺も寒かったのでマントを服のようにしていた為気づかなかったが、そう言えばさっき獣達と戯れていたのだった。(べ、別に強がってなんかいませんよ)


 その時の傷跡が手足に結構残っている。高級品であろう服は所々が引き裂かれ、手足には血の出ている所も多い。きっと今まで戦闘状態を維持していてアドレナリンが大量に出ていたのだろう。


 だんだん痛くなってきた。


「早く水で洗え!」


 フィルナは俺の手を取ると、そのまま川の縁に俺を連れて行った。


「あ」


「ちょっ」


 フィルナの厚意はありがたいのだが、その勢いで俺は川の中に投げられてしまった。


「ああっ! 冷たっ! 冷たいっす!」


 浅いとは言え、川である。水が流れているのである。冷たいのである。


「ああ、すまない――」


 とフィルナは言ったが、それから数秒後、堪えるように笑出した。


「おい! お前! フィルナ! 何が面白いんだ! ちょっ、マジで冷たい!」


 本格的に冷えてしまうのは良くないので、すぐに岸から上がる。


「フィ、フィルナ……よ、よくも……」


「す、すまない……!」


 と言いつつも、フィルナはまだ笑っている。


 くすくす、と笑っている。


 出会った時から何かとげとげした少女だなと思っていたのだけれど、この笑顔を見ればその印象を変えない訳にはいかないだろう。


 はい、俺は「君、女の子のどんな仕草が好き?」と聞かれたら「笑顔」と答える、恥ずかしい人間であります。


「……ェルさーん……キエルさーん、どこですかぁ……」


 俺がフィルナの仕草にドキッとしていると、うっすらではあるが、そんな声が聞こえた。


 え? 誰?


 ちょっと怖いんですけど。誰かが俺を呼んでいるっ!


「な、なあフィルナ。今声聞こえなかったか?」


「声? ……いや? 聞こえなかったな」


 ほら、フィルナには聞こえていない。ということは……


「…………キエルさーん……うう……」


 また聞こえたああぁっ!


 ……ん? 何かこの声、聞き覚えがあるぞ。


「ああ、今なんか声が聞こえたな」


「え? マジで?」


「キエルの、その、メイドとかいうやつなんじゃないのか?」


「あ」


 ああ、そっか。


 スッカリワスレテタ。


「キエルさーん……」


 なるほど、ミネルがビビって俺を探しにきたという訳か。可愛いやつだ。さてどうしてやろうか。


 いや、だって単純に登場するんじゃつまらないだろ?


 ドッキリの一つでも仕掛けないと面白くない。


「キエルさーん…………本当、私捨てられちゃったのかなぁ……」


 え?


「……絶対そうだ……私、やっぱりお荷物だったんだ……」


 えええ? 全然そんなことありませんけど。


 何か声が相当病んでるな。


 え、どうしよう。ここでドッキリとかしたらミネル心臓止まっちゃうかな。


「フィルナ、ドッキリ仕掛けてもいい?」


「それは、可愛そうだろう」


「……そっか」


 確かにそうである。


 ミネルは没落貴族の娘な訳だし、相当の絶望を味わってきていると言える。たまたま俺に拾われたからいいものの(本当、感謝してほしいですね)心の傷はまだ癒えていないはずだ。


 それに加えて拾ってもらった人間からも捨てられたと思い込んでいるのだから、これは相当の絶望ものだろう。


 俺は仕方なく、川から離れて森の方へ行った。


 近くまで行って(近くまで行っても気づかれない)声をかけると驚かれてしまうだろうから、俺はこの場で大きな声で呼ぶことにした。


「ミネル! 俺はここにいるぞ! 早く来ないと置いていくぞ!」


 やまびこを狙う感じで手の形を作って叫んだ。ここ山じゃないんだけどさ。


「……エルさん!? キエルさん! どこですか!?」


 と、ミネルの声が帰ってきた。どうやら結構近くにいるらしい。相当広い森で俺の方角を引き当てるとは中々運の良いやつだ。まあ、俺が置いていったんだけどね。


「ここだ! あと十秒くらいで出発するぞ! 十! 九! 八! 七!」


「ちょっ、待ってくださいっ!」


 どこかで軽やかに葉っぱを踏む音が聞こえる。急いでいるようだ。


「……キエル、君とメイドの関係はいつもこんな感じなのか?」


 その様子を見ていたフィルナが俺に質問してきた。


「ああ、でもあのメイドはつい昨日雇ったばかりなんだ。でもドジじゃないぞ。転ばないし」


 別に俺はメイドに「コケ」を求めてはいないので、そういう意味では良いメイドである。いや、そういう意味でなくとも、ミネルはメイドとしてかなり良い部類に入るだろう。多分。


「そ、そうなのか」


 フィルナもミネルが来るのを待ってくれている。


「じゃあ、ミネルが帰ってきたら、そのフィルナの行く小さな街まで案内を頼む」


「分かった」


 さてさて。こうして俺一行は臨時メンバーフィルナを追加して、森越えを目指すのでした。






20回目の投稿です! これからも毎日更新していくのでよろしくお願いします!

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