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2、転移成功? ~謎のステータス現る~

「よし! 我らが元に、勇者が召喚されたぞ!」

「おおおっ!」


 目を覚ますと、辺りに広がっているのは宮殿のような壁と、バッキン何とか宮殿にありそうな壺や装飾品の数々だった。つまりは大体イメージする宮殿だった。


 そして一段上がった所には金と赤で彩られた椅子が置いてあり、その前に王様らしきサンタみたいが立っている。


 何かその椅子後ろに引いたら隠し階段出てきそうだな。


「……陛下、この度は何人を巻き添えに……?」


 大臣のような風貌のおっさん(ちょび髭)が恐る恐るという感じでサンタに尋ねる。


「ああ、異常な程の特異乱数が報告されたのでな。その周りにいる者毎引っ張ってきた。ざっと十人程か」


 誇らしげに王様が言う。


「今回は絶対に成功すると思っていたぞ! がっはっはっは!」


「さ、左様でございますか……」


 ちょび髭が頭を深々と下げる。


「さて。勇者よ! そなたは黒勇者か? それとも白勇者か?」


 全く映えないやり取りを見ていると、突然俺に話が飛んできた。


 目覚めたばかりなのに意味の分からない事を言う。そんなんじゃ全国の子供達に喜んでもらえないぞ。


「……あんたは、誰だ? サンタか?」


 確認を込めてそう訊いておいた。もしかしたら本当にサンタかも知れないし。


「な、無礼であろう! 控えよ、少年!」


 ちょび髭に怒られた。


「ああ、ごめんなさい。で、誰だ」


「この方は第八十二万五千九百二十五代、レノクターン王国国王、サルバトル=レノクターン国王陛下にあらせられる!」


「猿バトル?」


 猿が戦うのか? それとも猿と戦うのか?


「少年! 陛下の事は国王陛下と呼びなさい!」

「まあ良い。そんなに大声を出すものでは無いぞゴートン」


 ゴートンと呼ばれたちょび髭は猿にそう言われると「ははぁっ」と頭を下げた。お前はサラリーマンか。


「さて、勇者よ。少し唐突に訊き過ぎてしまったようだな。すまぬ。今から一通り、とは言っても簡潔にだが、この世界の事についてそなたに伝える」


 やはり、どうやらここは異世界らしい。


 勇者召喚とか言ってるから、可能性としては「異世界転生」か「中二病の誘拐者」かどっちかしかないしな。


「リネア、説明して差し上げなさい」


 国王がそう言うと、一段上がった所の横の陰から一人の少女が出てきた。


 白を基調にした清楚なドレスを上手に着こなしている、見目麗しゅうという言葉がしっくりくるような美少女だった。


「かしこまりましたお父様」


 ドレスのスカートの裾を持ち一礼してから、リネアと言う名のお嬢さんは俺の方を見た。


「始めまして勇者様。私は現第一王女、リネア=レノクターンと申します。只今、簡単にご説明させていただく役目を負わせていただきました。よろしくお願いします」


 もう一度深く礼をする。だからサラリーマンかよ。


 それに目の前にいたんだから今から説明を受ける事くらい分かる。


 そんな感想を抱いたが、何もお姫様相手に喧嘩腰というのも良くないと思ったので、俺も一礼して「よろしくお願いします」を口にした。


「さて、では早速説明に移らせていただきます。今回私が説明させていただくのは、この世界についての概要でございます」


 だから分かったって。


「まず始めに、この度はこのような粗暴な方法でお招きした事をお詫び申し上げます」


 いや、早速説明に入るんじゃないのか。


「では、説明に入らせていただきます」


 め、面倒くせぇ。


「私達の世界では、主に二つの巨大王国が対立状態にあります。他にも獣人の国やエルフの国、魔族の国など、多く存在しますが、この世界において絶対的な力を持っているのが、私達レノクターン王国と、対するクラソルテ王国なのです」

 

 まるでお伽噺でも語り始めるかのように、その王女は俺の方を見て言葉を紡いだ。


「二つの王国は多種多様な民族からなりますが、基本的には私達人間が支配しております」


 世界には大きな二つの国があって、その二つの国を人間が支配している。

 つまりこの世界は大体人間が支配しているという事だろうか。


「そして、この世界には一つの大きな決まりがあります。それは『魔王戦』と呼ばれています。千年に一度、この世界には『魔王』が現れ、それを倒す為に異世界より『勇者』を召喚するのです!」


 勢いよく、目を輝かせながら王女は続ける。


「しかし、その召喚される勇者には二種類存在します。一つは『黒勇者』、もう一つは『白勇者』。能力の種類には違いがありますが、どちらも『魔王』を倒す事の出来る力を兼ね備えています」


 ありふれた話かと思ったら少し捻りを入れてきたな……。


「そして晴れて『魔王』を討伐した『勇者』には『栄誉の褒美』が与えられ、その『勇者』を召喚した国に繁栄をもたらすとされています。その結果、数えきれない年月を経たこの世界に、二つの巨大な王国が誕生したのです」


 まあまだ短くまとめた方か。


「ただどちらの『勇者』が召喚されるのかは、私達にも分からないのです」

「そうなのか。だが、その前に訊きたい事がある」


 俺は国王の方に向かって言った。


「何かね」

「俺と一緒に巻き込まれたであろう皆はどこへ行った」


 あの時、クラス毎何かに包まれたのだ、ならばその時教室にいたクラスメイト達も来ていないとおかしいだろう。


「ああ、その事か。巻き込まれた者達には本当に申し訳無いが、我々の目的は勇者の召喚だ。その為に少しの犠牲が出るのは仕方が無い。彼らは恐らくこの世界のどこかで目を覚まし――途方に暮れているだろう」


「貴様……」


 皆は、ただ巻き込まれただけ? そんな勝手な都合で?


「しょ、少年、少し抑えたまえ」


 ちょび髭が宥めようとするが、俺の気が収まらないのは事実だ。

 何と言っても。


「貴様は、俺のお母さんが真心こめて作ってくれた弁当をひっくり返したんだからな!」


 一同がきょとんとする。


「な、何、弁当……?」


 国王も疑問符を浮かべている。


 全く、自覚の無い犯罪が一番問題というのは言いえて妙だ。俺のお弁当をひっくり返した罪は重いぞ。


「ゆ、勇者様、申し訳ありません! ですがどうか、話を聞いて欲しいのです!」


 ここで姫、リネアが仲裁に入る。


 ……ふん、仕方ない。この話は後にしてやろう。


「……分かったよ。それで、何で俺だけここに飛ばされたんだ?」


「召喚術により、勇者の器を持った人間一人だけが、この空間に呼び出されるようになっておるのだ。さあ、見てみるが良い。自分の力を」


 国王が急かす。なんだその都合の良い召喚術……。


「見るって。どうやるんだ?」


「念じれば、そなたの力が見える」


「そう、なのか」


 アバウト過ぎてよく分からないが、取り敢えず俺はゲームのステータスのようなものを想像してみた。


 すると、数瞬後、目の前に紫色の炎のような文字が現れる。


 不気味に揺らめいているその炎は、よく見ると確かに文字になっているようだった。


「どうだ、見えたか」

「ああ」


 もっとはっきり見えないのか、と脳内で愚痴を零すと、言葉を聞きとったようにその炎は綺麗な活字体のような形を取った。


「ほら、見てくれ」


 目の前の文字列を指さして国王に頼む。


「それは勇者本人にしか見る事が出来ぬ。何、文字が読めないという事はあるまい」


 確かにそこにある文字が読めない事は無かった。


 どうやら個人ステータスというやつのようだ。


 覗いてみる。


 名前にレベルにHP、攻撃、防御、魔法攻撃、魔法防御、素早さ、運、経験値、など、ありきたりなものが並んでいた。





 

 名前 煌々川綺慧瑠(きららがわきえる)

 俺の名前だ。


 LV 多分1

 多分!?

 おい、多分って何だよ。そんなあやふやなステータスがあるか。


 HP 200/800000

 え? 何これ、何でマックスになってないの?


 MP そこそこあると思う。

 いや誰の感想だよ! 数値教えろ数値!


 ATK 4800×200×2-20くらいかもしれないしそうじゃないかもしれない。

 ……回りくどいな。


 DEF メンタルの強さによる。

 だから数値教えろよ!


 MAT 0(十億の位を四捨五入)

 おいそんな位四捨五入したら誰でもゼロだろうが!


 MDF メンタルの強さによらない。

 よらない!?


 SPD 風の如し!

 ……どうやらこのステータス君は俺に教える気が無いらしい。


 LUK 5段階で言う所の2

 やっぱり全然分からないぞ、このステータス。


 EXP 人は生きているだけで経験を積むものであり、したがってその人個人個人の経験値を数値化するのはあまり良い事では無いのだがしかし、単に戦闘力に関係するものだけを切り取って考えれば数値化できなくもない、とは言え日常の思わぬ事が戦闘に役立つ事もあり、やはり数値をばしっと決めてしまうのは適さないであろうからアバウトに言ってだいたい50くらい。

 説明長ぇよ! 誰の持論だよ、全く。




 見慣れたステータスの下に、「特性魔法」という文字を見つけた。恐らくこれはそれぞれの固有スキルというやつだろう。


 特性魔法 マジックミラー 魔法のカウンター

 ん? ポ○モンか?


    F・Fカウンター 物理のカウンター

 よく分からないな。某ゲームのタイトルみたいだが。


    D・D・ディストーション その他のカウンター

 おいちょっと待て。カウンターし過ぎだろ。


    薄影    影が薄い

 繰り返すな!


    まだまだあるよ!

 本当、何なんだこのステータス。

 ウザいぞ、計り知れないウザさだぞ。


 ※ステータスは変更される可能性があります。

 ええぇ!? 何だ、「画面は開発中のものです」みたいな。



 ここまで見てきたが、ふざけたものばかりでどこにも『黒勇者』やら『白勇者』などという言葉は見られなかった。


 何かの間違い(バグ)か、それとも俺が勇者ではないのか、どちらかだろうと思い国王に訊いてみようとした所、一番下にもう一列ある事に気づく。










 JOB 偽勇者(仮)


 な、何だと!?


偽勇者(仮)、誕生です。

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