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18、勇者誕生 ~彼女の軌跡はここから始まる~

 白邪はゲームをする女子ではない為、こんな大きな数字が出てきても何のことか分からない。しかし、ゲームをやらないとは言ってもステータスのことくらいは知っている。余りにも規格外の数字に、初めは気がつかなかったのだが、


「これは……」


 何かの基本情報ではないか。そう思った。


 ATKは確かATTACKの略。つまりは攻撃力。


 DEFは防御力。


 あと白邪に分かるのはHPとMP、LVくらいである。


「……あら?」


 ここで白邪は少し疑問を抱く。


 そう、白邪の知る限り、LVというものは99か100が限度なのだ。無論それ以上を行くゲームもあるが、少なくとも白邪の知るゲームにおいては、768というレベルはあり得ないものだった。


 それに、その他の数値も見れば、どれも十万の位まであるではないか。


 これはどういうことなのか。


 ゲームをやっている人間ならこれがすぐにチートステータスだと気づくのだけれど、生憎白邪には分からなかった。


 分からないことにずっと時間を費やしても良くないので、白邪は「詳細」を見てみることにした。






 魔法  白夜の波動 全範囲攻撃 付与効果増大

     環光相殺  全方位攻撃・防御・特性付与

     空絶    瞬間移動 高速移動

     想像魔法 (LV777より解放)

     炎系統・水系統・風系統・土系統・光系統・闇系統・混沌系統・無系統






「き、きゃあああああああああああ!」


 その魔法を見た瞬間、白邪は悲鳴を上げた。周りに誰もいなかったからよかったものの、もしいたらびっくりである。優しい誰かなら駆けつけてくれるだろうが、この叫びの理由は何かに襲われたから、とかそういうものではない。


 昔の忌まわしい記憶が甦ったからである。


 白邪は昔、ゲーム自体はしなかったものの、魔法の世界に憧れるという極普通の感情は持っていた。

 ただ、それをこじらせたのか何なのか、中学生の時に、勝手に自分の魔法を設定して遊んでいたりしたのだった。どのように遊んでいたのかは分からないが。


 俗に言う、中二病である。


 だが、何故その黒歴史がここに描かれているのだろう。


 白邪はそれが不思議だった。


 不思議な感情で一杯だった。


 恥ずかしさを紛らわせる為、一生懸命疑問に思った。


 疑問に思うついでに、最後の方に書かれたJOBという文字に注目してみる。






 JOB  白勇者







「白、勇者……?」


 勇者は勿論知っている。魔王と戦う正義のヒーローである。ただ勿論、中二病の白邪としては魔王の方が好きであったが。


 とにかく、勇者という言葉自体は聞いたことがある。しかし白勇者というワードは初めてだ。


 どうせなら黒が良かったなと思いつつも、自分の名前に合っているかいいか、と思うことにした。ガン○ルフよりサ○マンの方が高位な訳だし。


 それにしても、白勇者という単語は謎である。白邪は結構頭の良い方だったから、勿論JOBの意味が分からないということはない。


 職業。つまりは自分のやるべき仕事のことである。


 教師、政治家、シェフ、大工、修理屋、スポーツ選手、などなど。日常の生活にありふれていたもの達のことだ。


 若者は皆、「将来何になるか」で悩み、また努力する。


 白邪も将来の夢がないという訳でもないのだが、流石に「将来の夢は勇者になることです」なんてことは言わない。


 だがどうやら、一体何をすればいいのか皆目見当もつかないが、この世界での自分の仕事は『白勇者』らしい。


「……!?」


 とその時、背後から気配を感じた。


 ただの女子高生が忍びの如く気配を感じられる訳はないのだけれど、分かってしまったのだから仕方がない。


 それに、その気配は人間のものではなかった。


 生き物の気配だ。


「な、何!?」


 思わず立ち上がり細道に出る。


 直後、前の茂みから、後ろの茂みから、横の茂みから、化け物がゆっくりと姿を現した。


 化け物である。綺慧瑠が相手にしたような可愛いものではなく、見かけからして本当に、化け物である。

 緑色をベースに紫色のまだら模様を持ち、植物のような葉と蔓のようなものを体のあちこちから生やしている、そんな化け物だ。


 形は膝立ちの人間のようで、おそらくニメートルはある。


 それが四体。


 絶望するには十分な光景だった。


「……!」


 怯えていて声が出ないのか、それとも目の前の光景を信じられないのか、白邪は後ろを振り向いたり横を向いたり、震えながら四体を目で確認している。


 目。目で確認した。





 スキル 勇者の彗星眼 対象 怪物

 生物名 ナイトゴート

 LV 66

 詳細






 頭に浮かんだそれらの文字を理解するのに、少し時間を要した。


(LV66が四体?)


 白邪はゲームをやらない。故に、LV66が四体というのとLV768というのを正確に比較することができない。


 66×4で264だから……こっちの方が有利なのかな? でも四体いるからこっちの方が不利なのかな?


 そう考えてしまうが、寧ろそう考えられたことで、自分の考えたイタイ魔法を使ってみようという気になることができた。


 そして、実際はLV768などというものは圧倒的すぎるのだった。


「ギュロロォ」


 巨体の割に速いスピードで近づいてくるナイトゴート相手に、白邪は左手を軽く握り、目の前に持ってきた。


 そして。


「白夜の、波動!」


 刹那、銀色の光が白邪を中心に広がった。


 眩いほどの波動が広がり、広がり、空気を振動させ、木々をなびかせた。


自分でも何が起きたのか分からなかったが、気づいた時にはナイトゴートの姿はそこにはなかった。


「あら……?」


 少し不思議に思う。ナイトゴートはどこへ行ったのだろうか。






 魔法追加  魔獣召喚   初魔獣討伐により新たな魔法を習得。






 と、突然目の前に文字が現れた。


「討伐……?」


 討伐とは懲らしめること、つまりは退治することである。


 すなわち、自分が退治したということである。


「私が……倒したの……?」


 自分が設定した中二の力で。


 白夜の波動で。


 化け物を、倒した。


「私が――」


 白勇者、明日木白邪の誕生である。






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