17、観光感想 ~そして白邪は~
「くっ! まだ見つからぬのか!」
「はっ! 街中を捜し回っているのですが、どうやら城下町にはいないらしく……」
国王と部下とのやり取りは未だ継続中であった。
「これほど広い城下町にいないだと!? そんなはずはなかろう! 端まで行って帰ってくるだけでも相当かかるのだ、勇者殿もわざわざそんな遠くへ行くはずがない! 探せ! 徹底的に探すのだ!」
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「いやあ、楽しかったな」
「うん、すっごく楽しかった~」
「ああ! この街は最高だな!」
「そうだよね!」
海王達一行はクラソルテ王国の城下町を観光していたのだが、これが非常に満足げな顔つきである。
「いやあ、さすがに大国様の城下町はレベルが違うぜ! こんな大きな街、見たことないぞ」
二次元慣れしている西治がそんな感想を漏らす。
最早この城下町は街というより一つの都市のようなものである。都市とは言っても現代的な要素は勿論ないのだが、その活気は最大と呼ぶに相応しいものであった。
事実、夜遅くになった今でも街のあちらこちらで元気に騒ぐ声が聞こえる。この国の繁栄の象徴とも言える街だろう。
「アタシはあの何とか草っていうの、見てびっくりしたんよ」
とある店で見たものについて友理が感想を漏らす。
「ああ、あれね。何て名前だっけ?」
西治も気になっていたようだ。
「確か、ソルライト草とか言ったような」
それに海王が答える。はっきりと覚えている訳ではないようだが、大した記憶力だ。
「ああ、あとあの鶏肉みたいなやつもうまかったよな!」
「確かに。まんま鶏肉って感じだったしな」
「私は射的があったのが驚きかな~」
やはり四人とも思うところはあるようであり、すなわちこの街はそれ程に多彩なコンテンツで溢れているということだ。
幸いこの世界の食べ物は海王達に合うようである。
「いやあ、今日一日、すっかり遊んじまったな!」
「まあ、今日くらいは良いんじゃないか? 遠征計画が完成したら、結構忙しくなるだろうし」
レベル上げの為に遠征するとなればしばらくは帰ってこなくなるだろう。宿に泊まるのも転々として、ゆっくりとできないのは確かである。
「そうだよね~ 今のうちたっぷり遊んどけ、みたいな~」
「そうそう! 今のうちじゃん!」
すっかり冒険者気分の一行は――いや、確かに冒険者なのだが――この異世界という場所を完全に楽しんでいた。
そのことは全くもって問題ではない。
新たな環境に適応するのは大事なことであるし、その適応能力が高い若者というのは様々な可能性に満ち溢れている。
万能気質の海王と知識豊富な西治、おっとり女子らしい綾火、ムードメーカーの友理。
四人は友達としても、異世界探検のパーティとしても、十分すぎるほどに合格であった。
なかなかこれ程のメンツを揃わないのではないかという程、バランスも良かった。
海王を中心として、その親友の西治、海王に好意を抱く綾火、そして三人と諍いなく接することのできる友理。
友達として相応しいから、パーティとしても相応しいのだろう。
ただ、異世界というのは時として異常な危険が降りかかるのだということを、決して忘れてはならない。
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バタフライナイフ。それは不規則に振り回されるその刃の軌道からきているのだろうか。白邪は由来を正確には知らないが、それでもこの二つのバタフライナイフは白邪のお気に入りであった。
何せ、改造して両刃にしてあるのである。
それだと回しづらいのではないかと思うが、白邪は自分なりにアレンジを加えているので、彼女にとっては寧ろ便利になっていると言える。それをどこで使うのか、ということに疑問は残るのだが。
両方に刃がついているサバイバルナイフと、変幻自在のバタフライナイフ。この二つの特性を併せ持つ。
が、元々両刃のバタフライナイフというものも存在している。ダガーブレードとかクリスブレードとか呼ばれるそれらは、銃刀法的に問題があるので所持できない。
しかし白邪の作った両刃のバタフライナイフは元々ただのナイフである。それを改造してしまったらやはり同じように問題なのではないかと思うのだが、最早ここは自分達のいた世界ではない。そんな法律は関係ないのだ。
そのことが少し嬉しかった。
「ふふふ……」
二本のバタフライナイフを振り回しながらゆらりくらりと足を運ぶ白邪。道はすっかり暗くなり、辺りの茂みからは何やら不気味な音が聞こえる。
少し狂っているからと言っても白邪は一女子高生だ。このような道は怖いのではないか。完全に狂気に満ちている訳ではない白邪にとって、この道は怖いのではないだろうか。
事実、時折する獣の鳴き声に白邪は肩を竦ませたりしている。
「まだかしら……まだ、つかないのかしら……」
結構な距離を歩いたはずだ。それなのに城下町が全然現れないのは何故なのだろう。
もしかして道を間違えた?
いや、そんなはずはない。歩き出してからずっと一本道なのだ。間違えるはずがないのだ。
しかしいくら歩いてもより寂しい風景が並ぶだけで一向に明るい光は現れない。
「な、何で、かしら……」
いよいよ精神的にも参ってきたようである。それもそうだろう。人間誰だっていきなり見知らぬ地に放りこまれて彷徨うなんてことはしたくない。
「……」
歩くのを止めたくない。そう思いつつも、白邪の体力はそろそろ限界だった。
足が痛い。
お腹が空いた。
頭がクラクラする。
目が虚ろだ。
呼吸がつらい。
心が苦しい。
「…………ふう」
まだ生きていたいという願望はあるものの(教室では何か違った気がしたが)白邪は一旦木に腰をかけて休んだ。
一度座ってしまうと、立つのは難しい。
一度眠ってしまうと、起きるのは難しい。
もしかすると、これは自分に対する罰なのだろうか。
そんなことを思い始めた。
誰にでも心が病む時期はある。それは当然のことだが、そのことで周りに迷惑をかけてしまった罰なのだろうか。
明日木白邪は元来、狂った人間ではない。
少し大人しめで、少し脆い、そんな一人の少女である。
故にこのような境遇に立たされれば反省する。つい突発的に教室でナイフを振り回してしまったことを、後悔している。
だが、明日木白邪は何も弱い人間という訳ではない。
あまり積極的ではなく、精神的にも肉体的にも強いという訳ではないけれど、非常に不安定だけれど、それでも彼女は弱い人間ではない。
どんな状況になっても、心が折れても、その折れた心まで利用して自分の生を続けようとする、そういう人間だ。
生に貪欲な人間なのである。
そのような人間は、強い。
生存する意志が強いものは、あらゆる環境に耐えようとする。そこに進化が生まれる。
生物はそうやって進歩してきた。
そしてそれは一個人の場合も同じだ。どんな小さなことでも、状況から創り出した自らの選択肢は「経験」となる。
「私は……生きなければならないのよ……もう一度、綺慧瑠君に、会わなくては、ならないのよ……」
それを意識して、白邪は落ち着きを取り戻す。(恋心なのか、何なのか。それは彼女がはっきりと口にするまで分からない)
落ち着いた所で、今自分に何ができるかを考える。
何か自分からできることは。
あるいは何か頼れるものは。
そう考えた時、白邪の頭の中に先程の光が浮かんだ。
「そうよ……あの光……」
正体は分からない。が、分からないからこそ、今の白邪には必要なのだ。
未知の力が、必要なのだ。
白邪は必死にもう一度再現してくれと願った。
名前 明日木白邪
LV 768
HP 189100/190000
MP 390000/390000
ATK 140000
DEF 143000
MAT 340000
MDF 200000
SPD 280000
LUK S
EXP UNKNOWN
特性魔法 ロストカオスフィア 被害時、ランダムで攻撃無効、攻撃反射、攻撃吸収(攻撃増加、守備増加、魔法攻撃増加、魔法防御増加、スピード増加)攻撃屈折、その他。加害時、ランダムで能力増加、敵能力低下、敵状態異常、その他。その他行動時、ランダムで追加補正
ロストコスモスフィア 状態異常無効、能力低下無効、優位補正強化、弱点補正無効、強運、HP自動回復、MP自動回復、加速、対敵攻撃全種優位補正強化、対敵攻撃全種減少補正無効、起死回生、体力減少同期、魔力減少同期
JOB 白勇者
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