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16、山賊打倒 ~山賊はおっさんであると相場が決まっている~

 実際はそんなことこれっぽっちも思っていない。どうせ俺のことだから、もしそうしていいと許可されても怖気づいてできないだろう。


 だがこれは演技なのだ。演技だから出来るのだ。


 言ってしまえば俺の行動は全てがハッタリ。実際俺の実力で彼女に勝てるかも分からないし、山賊に勝てるかも分からない。だから、これは実際どうなってもいいのである。どちらかと言えばやっぱり女性の味方をしてあげたいけれど、俺の目的はあくまでも森を抜けること。山賊を手伝えばそれくらいは教えてくれるだろう。


「…………分かった。案内する」


 そこまで物分りの悪い方ではなかったのか銀髪の女盗賊は俺の提案を受け入れた。


「それはどうもありがとうございます。ということで、山賊の皆さん。交渉が成立しましたので、あなた方は今より私の敵です」


「そうかよ。ならてめえもブッ飛ばすだけだ! やれ! 野郎ども!」


 そう号令をかけて山賊達が一気にこちらに向かってくる。


 川を挟んで向こうに山賊が六人。川のこちら側に俺と女盗賊。このような配置になっている。ということはつまり、山賊達が俺達に攻撃を加えるには川を渡る必要がある。とは言ってもこの川は浸かってせいぜい膝下程。足元を掬われるということはない。


 だが。


(川よ、凍れ)


 山賊達が渡ろうとする直前に、俺はそう念じた。本来なら流れのあるものは凍らないのだが、魔法を使えば一部を凍らせることができるようである。いや、本当今試してみて分かったことなんだけどね。


「な、何だっ!?」


 次々と滑る山賊。見ていて実に滑稽である。ここで挑発ゼリフの一つでも入れようか。


「はっはっは! 何とマヌケな姿だろうか! まるで岸に上げられた魚のようだ!」


 ……あまりセンスが良くないな。と自分で分析してしまった。


「な、てめえ!」


 リーダー格の男は俺を見上げて苦痛の表情を浮かべる。


「まあ、見ていて下さい」


 俺は女盗賊の方に視線を向けた。


「私達を案内していただけるのでしたら、この程度は私だけにお任せ下さい。あなたはそこの上着を羽織って端っこで見ているだけでいいです」


「そ、そんな訳にはいかない!」


「いえいえ、どうかここは私に格好つけさせて下さい」


 大した魔法も使えないのに、格好つけているウザい男の姿が、そこにはあった。


 っていうか俺だった。


(融けろ、流せ)


 と念じた瞬間、川は元の流れを取り戻し、それどころか流れが急激に増した。


 よし、これで全員流されるがいい。


「ぎゃああああ!」


 二人流された。って二人だけかよ!


「てめえ! よくもやってくれたな!」


 え、マジっすか。やばい、どうしよう。


 そうだ。大事なのはイメージだ。


 こんなごつい連中と肉体勝負を挑んで勝てるはずがないから、後使えるのは、魔法だ。


「出でよ! 火焔鈍器!」


 今度は声に出して、四つ。


「食らえ!」


「ぐはっ!」


「ぎゃああ!」


「ぎょえええ!」


 見事に命中し、リーダー格の男含め三人が昏倒し、そのまま流されて行く。


 って三人かよ。


 後一人残ってしまった。


「てめえ……! ぜってぇ許さねえ……!」


 大男が俺に近寄ってくる。


「ぐえっ!」


 どうしようかと考えている内に、何やら横から猛烈な勢いで何かが飛んできた。


 彼女だった。


「……べ、別に手は出さなくて良かったんですよ?」


「私がやった方が早かった」


「六人相手で、ですか?」


「う……」


 そう言われると自身を無くすようだった。


「まあいいじゃないですか。無事だったんですから」


 ちょっと気になって、目の前で倒れている男のステータスを勇者の彗星眼(偽)で見てみた。





 名前  バスガ・ドリアッグ

 LV  39

 年齢  約35歳

 身長――





うん、この先はいいや。おっさんのステータスなんて興味ないし。


 それにしても、このおっさん、これだけ雑魚かった割にはそこそこのレベルを持っていたようだ。このおっさんくらいのやつを六人相手にしたのだから、俺のステータスは少し上がっているはずだ。





 LV  15





 おお、今度は正直に記載してくれたようである。


 ついでに横目で彼女をチラリ。





 名前  フィルナ・クレセルナ

 LV  88

 年齢  約十七歳

 身長  164センチメートル

 体重  50キログラム

 3S  B88 W56 H86 (E)

 JOB 盗賊 

 詳細はこちら





 ……色々凄いな。


「さてさて、フィルナ・クレセルナさん。私はあなたのことを何とお呼びすればいいでしょうか」


「な、何で私の名前を知っている!?」


「嫌だなあ。そんな疑いの目で見ないで下さいよ。私は偽物でも勇者ですから、それくらいは分かるのですよ」


「そ、そうなのか……?」


 未だに不審者マークを外さないフィルナだが、どうやら敵ではないということは認めて貰えたらしい。


「ええ。そうなんです――とその前に、もうこのキャラ終わりにしていいですか?」


「えっ?」


「いや、すいません。相手がどんな人か分からなかったのでちょっと高慢なキャラを演じていたんです。ということで、改めましてこんばんは。俺の名前はキエル、よろしく」


 ナチュラルに行こうと思い敬語を止めにした。


「あ、ああ」


 狼狽に狼狽を重ねるフィルナ。まあそりゃ確かに、目の前にこんな変人が現れたら困惑するよな。


「ああ、全然気使わなくていいからね。大体同い年みたいだし。そうそう、俺のことはキエルって呼んでくれ」


「あ、ああ、分かった。……ところでキエル」


「ん、何だ?」


「さっき私の裸をじっくり観察していた理由を聞こうか」


 ああ……ここで来るんですね、そのネタ。




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