10、職業獲得? ~なんか新たなJOBが舞い降りた~
草原までどれくらいあるのか、目測では計れなかったが歩いてみると案外距離があった。それもそのはず、この世界の二大王国のひとつ、その城下町ともなればそれこそ一、二を争う程の大きさと繁栄ぶりを誇るのは当然だろう。
ようやくその城下街を抜けた頃にはもう日が傾いていた。
途中の商店街で、必要なものを調達したり、食事をしたりしたから時間がかかるのは当たり前なのだけれど。
城を出る時、与えられた資金だけはがっぽり持ってきたのでしばらくは困らないはずだ。
あくまでも、しばらくは、だが。
そんな街中の賑やかさを通り抜けて、現在広大な草原を目の前にしているのである。
レベルやATKといったステータスがある以上、野生にも敵はいるはずだが……
それ以前に俺は自分の使える力を把握していないのだった。
どうにかして把握したいのだが、生憎周りに敵らしき生き物は見当たらない。
「うーん」
そうだ。敵がいなくても使えるものはないのだろうか。
自分の能力の詳細を見てみる。
魔法 うん、取り敢えず、色々妄想すれば、できるんじゃないですかね。
おいいいいいぃぃ! この期に及んでまたこいつか! この誰かも分からないやつか! 本当に誰の意見なんだよ、これ。
……仕方なく、このステータスの言う通りにやってみる。
「……ファイア?」
何故か疑問形になってしまったが、俺は炎を出してみようと思った。あ、熱くないかな。
「うおっ!」
ほぼブランクなく俺の手首の辺りに炎の渦が発生した。
おお、すげえ。
でも、本当はこういう技、ちゃんと修行して身につけるものなんじゃないか?
こんなチートよろしく簡単にできちゃっていいのか?
俺はどうにもそれが不安だった。
「うわあ、綺麗ですね」
と、ミネルが俺の手首を見て言う。
日が傾いているのでその赤とマッチして綺麗な光の環を創り出していた。
いや、待てよ。この世界に太陽があるはずがない。
だとしたらあの宙に浮かぶ丸いものは何だ?
「ミネル。あの宙に浮いているものは何と言う?」
「あれ、ですか? あれは太陽と言います」
あれ? 太陽なの?
いやいや、よく考えてみればこの言葉のやりとり自体、何らかの力が働いているものとみるべきだ。ならばきっと「太陽」というワードは俺の理解できるものとして耳に入ってきたに違いない。
つまり、この世界ではあの宙に浮かんでいる何かは俺の世界で言う所の「太陽」の役割をしているということになる。
まあ、その辺はやっぱり、深く考えない方がいいかな。
「私もやってみましょう」
色々と考えを巡らせていると、ミネルが隣に来て俺と同じような火の環を作った。
え? これって案外簡単にできるものなのかな。
「この世界の人間はこのくらい普通なのか?」
手首を指して言う。
「はい、小さな魔法なら、人それぞれ宿している属性は異なりますが、扱うことができます。私は火と光です」
少しずつ笑顔を取り戻しているのがよく分かった。
「キエル様は他にどんな――」
「キエルでいいよ。別に敬語を使う必要なんてない」
「え、でも――」
「いいのいいの。俺も十七歳くらいだから」
年齢を言って通じるか試してみたら、
「そ、そうですか――でもやっぱり言いづらいです」
うん、問題ないようだ。
「そっか、なら別にいいけどさ。でも様はやめてくれ」
「はい、じゃあキエルさんで」
素直だなあ。
そう思って今度は氷をイメージしてみた。
「き、綺麗……」
炎の環の外に氷の粒がくるくると舞う。どうやら他の属性も使えるらしい。
続けてイメージの通り、風や光、闇、水、土と言ったエレメントを想像してみると、ちゃんと具現化された。
「まあ、キエルさん、どんな属性でも使えるのですね」
「うーん、そうみたい」
だが俺としてはあまり満足ではなかった。
ぶっちゃけ、全部使えるって何かずるくない? と思ってしまうのである。どうせ他の事象も試してみればその通りになるのだろう。どこまで出来るのかはまだ分からないが勇者なのだからかなり規格外のこともできるはずだ。
それでは何か、つまらない。
と思った時、目の前がまた光った。勇者の彗星眼(偽)の時と同じである。
JOB追加 実況者
え、何これ。
実況者? とは何なのだろう。何の実況をするのだろう。
国立海王が『黒勇者』として召喚されました。
外森西治が『黒勇者』として召喚されました。
時沢綾火が『黒勇者』として召喚されました。
佐々田友理が『黒勇者』として召喚されました。
明日木白邪が『白勇者』として降臨しました。
『魔王戦』開始まで、あと360刻




