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ネコのコネ

作者: ひろしろし

季節は冬


「はぁ、ここも駄目か………」


パソコンを眺めて呟く一人の男


「これで39件連続か………」


パソコンに表示されている文章の中には不採用の文字


「気分転換に飯でも食いに行くか…」


パソコンの電源を消し、立ち上がる


「財布、財布っと」


無造作に置かれている財布を拾い、中身を確認する


「………やっぱ飯は止めて、カップ麺を買いに行こう」


財布をポケットにしまい、玄関に向かう


「っつぅ!?」


足元に落ちていた自転車の鍵を踏み付けてしまった


「~あぁもう!なんでこんな上手くいかないんだよ、くそっ!」


苛立ちを壁にぶつける


『うるさい!!』


「あっすいません!」


男の住んでる所はレオ○レス


「なんなんだよ、マジで、もう…」


建て付けの悪いドアを開ける


「うぅ…さみぃ」


重い足取りで階段を降りる


「ニャ~」


「んっ?」


階段を降りるとそこには一匹の猫がいた


「うはぁ、かわゆすなぁ、お前を見るだけで癒されるよ」


「ニャー」


しばらく見てるとてくてくと猫が男に近寄ってきた


「ニャー」


「こ、この俺が猫に懐かれているだと!?」


男は動揺しながらも猫に手を伸べる


「た、たまらん」


撫でる、撫でる、これでもかと撫でる


「至福だ」


男は昇天しそうだ


「ん、あれ?首輪だ、ということはこいつ、迷い猫か?」


猫に付いている首輪を見る


「ん、QQQコーポレーション?って、あれか?」


男は思いあたる節があった


「とりあえず行くか」


男は猫を抱え歩き始めた



ーーーーー



「やっぱ、でけぇ」


10分後、目の前には、轟々とそびえ立つビル


「受付に行けばいいんかな」


猫と一緒にビルの中に入る


「何か場違い過ぎるぞ俺」


周りはスーツを来てる中、だらし無い私服を着て、猫を抱えた男


「あの~すいません」


「は、はい…どうなされましたか?」


受付にいた女性に声を掛けた。女性は少し警戒している


「こいつの首輪にここの名前が書いてたんで連れて来たんですけど」


「ニャー」


「はぁ」


女性は首輪を確認する


「…確かに書いていますね」


「でしょ」


「え~っと、確認とりますので、え~少々お待ち下さい」


「あ、はい」


女性は電話を掛け始めた



ーーーーー



「そうなんですか!はい、わかりました!」


数分後、突然女性が声を上げた


「お待たせしました、どうやらその子は社長の猫のようです、外見も一致してます」


「あ、そうなんですか」


「そして、お礼をしたいとのことなので今からこちら社長が来るそうです」


「マジッすか………」


男は少し姿勢を正した



ー数分後ー



「あ、社長が参られました」


(おぉ、テレビで見たことある)


恰幅の良い初老の男性が近づいて来た。男はさらに姿勢を正す


「ニャー」


手を離れ社長の元に寄る猫


「おぉ、ミクよ、どこ行ってたんだ」


笑顔になる男性


「すまないねぇ、ここまで連れてきていただいて、時間はあるかい?何かお礼をさせてくれ」


「いえいえ、当然のことをしただけなので大丈夫ですよ」


男はあまりにも場の雰囲気に合っていないことに堪えられなくなっている


「いや、少しお茶でも飲んでいきなさい」


「い、いやぁ、そんなこと、ぃぃですょ………」


「私の気が済まんのだよ、おい、ゲストルームに案内してやってくれ」


「ははは…」


男は流れに身を任せることにした


「ニャー」



ーーーーー



「いや~数時間前から居なくなってね、こちらでも探していたんだよ」


「あ、そうなんですか」




「それにしても、ミクは天使のように可愛いだろ、ショップで一目惚れしたんだよ」


「あ、そうなんですか」




「ある日、ミクが体調を崩した時は、家族で大慌てだったよ」


「あ、そうなんですか」


社長の話は4時間続いた



ーーーーー



「おぉ、もうこんな時間か、君は時間、大丈夫なのかね?」


「あ、そうなn………じゃなくて、今日は大学とアルバイトは休みでしたので」


「そうか、ちなみに普段は何をしているんだい」


「最近は就職活動中です」


「ああ、大変な時期だね」


「そうですね、上手くいけばいいのですが」


「君なら大丈夫だと思うよ、ちなみにどんな業種や職種を受けているんだい?」


「そうですね、特には業種にはこだわっていないのですが、今まで培った能力を活かせるのが企業の内部での業務ではないかと思い、優先的にその様な業務の求人を受けてます」


「ほう、なるほど」


社長は頷く


「ちなみに今の進行状況は?」


「正直、何処も厳しく真っさらな状況ですね、ははは…」


「そうか」


またも頷く社長




「…なぁ君、うちで働かないか?来年度になるが」


「………は、はいっ?えぇっ!?」


突拍子もない発言に、驚き声を上げる男


「はっはっは!そんなに驚かなくてもいいじゃないか」


男の反応に笑う社長


「いや、働くって………えっ!?」


「始めは普通に話をしていただけなんだが、話をしている内に私も君の事を気に入ってね、この際ウチで働いて欲しいと思ったんだよ、勿論、君がやりたいと言っている内部業務でね」


「は、はぁ」


「で、どうかな、働いてくれるかな?」


「………」


戸惑う男


「あの…本当にいいのですか?履歴書も何も私の情報を教えていないのに」


「うちは面接重視で学歴は審査に入れないようにしているんだよ、そして、最終面接の面接官は私、つまり今の状況と同じであるわけだ」


「そうなりますね」


「そして、その私が合格を出したということは、すなわち…」


「内定ですね」


「そういうことだ、はっはっは!」


社長は笑う




「………あの、本当にいいのですね」


「勿論だよ」


「猫を連れて来ただけですよ」


「そういう出会いもあっていい」


「御社の事はテレビはニュースくらいで得た情報しかないですよ」


「そんなもん今から知ってもらえばいいよ」


「本当の本当にいいんですね」


「あぁ本当だ」




男は一息つく




「宜しくお願いします」


「こちらこそこれから頼むよ」


「ニャー」


こうして男の就職活動は唐突に終わった




ーそして、一年後ー




「ニャー」「ニャー」「ニャー」「ニャー」「ニャー」


「お、おいっ!リンとレン!そっちに行くな!」


「ニャー」「ニャー」「ニャー」「ニャー」「ニャー」


「だからルカ、そこに登るなって!」


「ニャー」「ニャー」「ニャー」「ニャー」「ニャー」


「おぉぉぉぉい!!!」


「「「「「ニャー」」」」」


「なんで………なんで業務内容が猫の世話なんだよ!内部業務だけどさ!!!」




おしまい

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