悪天使~天空戦争~ 3
悪天使~天空戦争~ 3戦目・僕は…
小さな窓から、夕日のような木漏れ日が差してきた。暖かく、柔らかな日差し。ずっと昼間だったと思ってたのに、夕暮れ時にもなるんだな。と言うことは、ここは人間界の逆に時が進むんだ。
すうぅ、と窓から凍るような風が僕につらぬく。手がギンギンに冷たくなった。冷暖房が完備されてないのか。だんだんと、体力までもが奪われていく。
コンコンコン。ドアが叩かれた。その数秒後、ギイィィ、と鈍ったような音を無理矢理立ててメザが入ってきた。体と顔の半分を壁に隠し、廊下の暗さで悲しんでいるみたいだった。メザは無言で10秒くらい立っていて、クイッっと指を曲げ、まるで『ついてこい』と言っているようだ。
僕がついて行くと、メザはあの広場に案内された。そこには、さっきの4~5倍ほどの天使がいた。
アルエリや、リーズ=ファン、レディアさんにガジャル。何で…?
よく見ると、ガジャルはなんだかうれしそうな楽しそうな顔をしていた。なんでガジャルだけ。
ホラ貝の音が広場中に響き渡った。ブオオォォォォォォォォ。その瞬間に、ガジャルが唱えた。
「我の灯火、冠者の永久。ガジャルの名の本。みはらわん。」
_______________。唱えられた瞬間に広場から戦場へと変わった。
地は火と化し、空は紅と化すその戦場には、2つの種族があった。天使と悪魔。対立しあうこの種族で戦争が起きた。何人も何十人も何百人もの人が倒れた。2つの種族の力は平等だった。互角に、ずっと、変わらない力で争ってきた。
その2つの種族に、愛し合う1組の男女がいた。が、その2人は永遠に結ばれない運命だった。それはなぜか。男は悪魔、女は天使の種族だった。互いに殺し合う中の愛。許されることはならなかった。男は決意をした。
『___邪魔する物は、例え仲間でも切る。』
女も決意した。そしてその夜、実行した。敵陣に背を向け、仲間の陣に表を向けた。わめきながら、謝りながら切ってゆく。悲鳴と、疑問と、恨みと、憎しみと、愛と。その他の感情がこぼれ、あふれ。
戦場は血に染まる。仲間と敵の血が、女と男の体はべっとりと血にまみれていた。ぬぐっても、ぬぐっても取れなかった。
その悪魔と天使は泣いた。思いっきり泣いた。2人きりになれたうれしさなのか、見方を殺めた罪のせいなのか、真珠のような大粒の涙が血の滴る地面にこぼれた。涙は血の色と化した。
______________その後、2人の間に子供ができた。
____________男の子だった。
_______名は・・・・・・・。利桜。
ふっと、戦場から広場に戻ると、力が抜けたように崩れた。
「ちっ。だから言ったんだ。人間は事実を受け止めることはできないとな!!」
メザが大きく声を張り上げた。その声が合図になったのか、ざわざわとわめき始める。
「静かにっっっ!!!」
レディアが声を上げると、しいんとなった。続けてレディアが問う。
「このあとの事実を聞くか?」
「1夜だけ待ってください。」
ここにいるのがなんだか申し訳なくて、悲しくて。
ふるえを止めるのに精一杯だった。