悪天使~天空戦争~
悪天使~天空戦争~ 1戦目・時は満ちた
「悪魔ってなに??天使ってなに??」幼い頃の記憶がよみがえった。あざ笑れた悔しさと、「悪魔と天使はいるのだ」という希望しか記憶無い少年時代。ああ、あのときに、答えが分かればと、時々思う。分かっていれば、今、こんな事にはならなかった。小学校の時に、よくいじめられたのは「悪魔」とか、「天使」とか、わけ分からないことを言っていたかもしれないからだ。他の人にはそう思われたのかもしれない。でも、本当にいるんだ。僕には分かる。たまにだけど、声が聞こえるんだ。『・・・・て。お願い。・・・・来て。』って。聞こえたんだ。でも、今は聞こえない。大きくなったせいかもしれない。それか、希望を失ったせいかもしれない。でもね、いるんだよ。この空のどこかに天使と悪魔は。
_とある日の日記から抜粋_
カンカンと照りつけられる日差しは、まるで何かの序章に過ぎなかった。
真夏の太陽がやっと消えたかと思った秋晴れの日だった。いつものように、学校へ行っては帰ってくる、という事を繰り返す毎日を送っていた。友達なんかほぼ「いない」と言ってもおかしくはない。指で数えられるくらいだから。でも、正確に数えた覚えは無い。そんな事していたって、何があるというのだ。僕に得すると言うことは無いからと理由付け、クラスメイトに話そうともしなかった。いや、僕がクラスメイトを避けていたんじゃないかな。僕自身が思うことをみんなは受け入れようとはしない。幼いときと同じだからね。今時の高校生が、こんな事言うなんて、いじめの対象にぴったしではないか。受け入れてくれた人は友達。そんな考えを持っていた。
「天使はいるんだ、悪魔もね。」僕の口癖。幼い頃から今までずっと言い続けてきた。「バカみたい」「オタクー!!」口癖に対する意見はこうだった。受け入れてくれない現実にもう、飽き飽きした。そんな日に初めての友達が出来た。仲崎薫。クラス問わずの人気者。こんな奴が友達になるとは思いもしなかった。
「おはよう、利桜♪」
いつもいつも、決まって僕が席に着くときに、いつもいつも、話しかけてくれる。優しいと初めて思った。
初めてあったとき、名前で呼んでくれた。
「草魔利桜君。」
みんなはいつも「悪天オタク」とか「3次元の偉人」とか何も感情をこめず、なんの意味も作らず、そう呼ばれた。辛かった。呼ばれるたびに何か、心が壊れる感じがする。
「おはよう、薫。」
機嫌がいいときにだけ、返事をしていた。でも今は、毎回返事をするようになった。心が開いた時だった。
小さな事から大きな事へと。僕の心は薫の気遣いによって開かれた。
「薫、ありがとう。」
「ううん。利桜が元気でいればいいんだ。」
そしてまた、「天使はいるんだ、悪魔もね」と、語るようになった。薫は、いつも受け入れてくれた。そしてまた、希望がもてるようになった。
その日から、また声が聞こえ始めた。
『早く来て。』
そしてだんだんと内容がはっきりしてきた。
『利桜、来て。天空へ。』
その声が初めていった言葉「天空」。天使と悪魔を調べていたときに見つけた言葉だった。
~天空とは、空と宇宙の間にある空間のこと。悪魔と天使はここに住んでいると考えている。~
信じることはしなかった。その時にはすべて否定されていたからだ。でも、今分かった。天空は本当にある。でも、声の持ち主が分からないのに天空にいけるわけがない。あきらめの心がついてきた。
とある時、ふと、幼い頃の日記を開いた。ぼろぼろの日記帳と開くと汚い字で書かれていた。
4月1日 今日は、またあの声が聞こえました。「どうして」と言って、それからは聞こえなくなりました。そしたらお空が曇って、雨がザーザー降りました。なんか、お空が泣いているように見えました。
声が聞こえなくなった日の日記だった。お空と書いてるが正しくは天使と悪魔だろう。
ごろん。ベットに寝っ転がって日記を読み続けた。4月1日から前の日記とその後の日記をじっくり読んだ。思い出すたびに、また声が聞こえる。そして、最後の日記を読み終わったとき、声がはっきりと通って聞こえた。
『天空への道、開いたり。』