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推しに殺される大罪人に転生。推しのために……  作者: 流庵
一章

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第〇三〇話 魔通信

「ルシャ様、魔通信の魔道具が届きましたので、研究室に運び入れてあります」


「おお! 本当に購入してくれたのか! かなり高いと聞いていたので諦めていたぞ」


「魔通信は誰でも気軽に購入できるわけではございません。ダメ元でアルカリオに言ってみたところ、処分前の古い型式のを入手してきたようです。何か良いことでもあったのか、珍しくすぐに動いてくれたようです」


「アルカリオについてはリリアナに任せておけば安心だな」


「やたらテンションが高くて気持ち悪かったです。それと、伝言でマリオネット人形はもう少し待ってほしいとのことでした」


「木材を集めるだけでも大変なんだ。そこまで急いでいないから問題ない」



 ◆ ◆ ◆



「これが古い魔通信か。かなり大きいのだな!」


 研究室に移動して、運び入れられた魔通信を見ると、公衆電話四つ分ぐらいの大きさはある。


「シャドウブレイズ家にあるのは、これの半分ぐらいの大きさですね」


「そうなんだな」


 俺がゲームの中で見たのはさらに半分の大きさ、つまり公衆電話の大きさだったが、魔通信も現代の携帯電話のように数年で進化したということだろうな。


 そういったゲームの中で描かれていない部分を発見できるのはとても面白い。


 早速、調べ始めよう。


「ん? これはいったい……」


 ゲームの中の魔通信は普通の公衆電話のように数字が書かれたプッシュ式のボタンがあったはずだが、この魔通信は書かれたものが削り取られた三センチ角のプレートがたくさんついている。


「それは通信先の貴族の紋章が描かれていたプレートですね。この魔通信がどこの家から出たものか特定されないように、紋章は削り取ってあるそうです」


「貴族の紋章が描かれていたのか?」


「古いタイプの魔通信は通信先のプレートに魔力を流すと繋がる仕組みになっていました。現在は貴族以外も使用できるようになったため、六つのダイヤルで操作します」


 話を聞いた感じでは南京錠などに付いている回転式のダイヤルが六つあり、それを回して相手の番号に合わせるようだ。プッシュ式もこの後登場するのだろうか?


「それだと今まで通信するのが楽だった貴族たちから不満は上がらないのか?」


「はい、面倒になったと不満が出たため、現在は紋章プレートを差し込むところもついています」


「プレートは固定じゃなくて、差し替えるということか?」


「仰る通りで、シャドウブレイズ家にあるものはよく使うところ五枚差し込めるようになっています」


 短縮ボタンみたいなものか。アナログなような、そうでないような不思議なバランスの世界だ。


「早速分解してみるか」


 魔通信機の裏側の蓋を無理やりめくってみると、中身が露わになる。


「……これは凄いな」


 中にはたくさんの魔石が嵌め込まれている。紫でない色の魔石もあることから、魔道具士もカラー魔石の使い方を知っていることが窺える。


 続けて受話器もばらしてみると、耳に当てる方の受話口、話しかける方の送話口それぞれに緑色の魔石が入っていた。


 さらに受話器から聖銀の糸を束ねた線がダイヤル付近の黄色魔石に繋がっている。

 

「緑色の魔石か……」


「緑色の魔石は植物系のモンスターやウインドカッターなど、風の魔法を使うモンスターから出てくることが多い色ですね」


 俺の呟きにリリアナが答えた。帰ってくるとは思っていなかったが、リリアナはモンスターなどにも詳しいようだな。


「黄色い魔石はどんなモンスターから出てくるか知っているか?」


「黄色い魔石は雷を操るモンスターから出てくることが多いですね」


 雷を操るモンスターか……サンダーラットやサンダーイーグルといった電気ウナギみたいなモンスターがいたはずだ。


「ルシャ様はこの中を見て構造が分かるのですか?」


「この間、色付き魔石の実験をしたせいか何となく分かるな。中にあるほとんどの魔石はダミーで、構造を分かりにくくしているのだろうな。重要なのは受話器とダイヤル付近だけだろう」


「ルシャ様のように分解しても、分からないようにしてあるのですね」


「意外とゴーレムのスキルと魔道具士のスキルは近いのかもしれないな」


 緑色の魔石で音を運んで黄色魔石で通信をしているのだろう。魔石の実験で分からなかった属性魔法の利用法が分かったのは大きい。


 ダイヤル付近にはさらにいろいろな魔石が並んでいるが、今の俺ではさっぱり分からない。これを作った魔道具士に話を聞きたいが、これだけの魔道具だ。秘匿にされて会うのも難しいのだろうな。


 複数の魔石を組み合わせるというのは、おそらくゴーレムにも利用できるはずなので、どう組み合わせるのか思案するのだった。

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