いじめあいっこ
一年二組は、「普通」だ。
それぞれがグループを作って過ごしている。成績は学年の上の方、運動神経は下の方。必要な時には団結して、それ以外の時はバラバラ。
ただ一つ、独特なゲームがクラス中で行われていること以外は。
それは、学校の至る所で見ることができる。このクラスから広まって、今では学校中で楽しまれているのだ。ある意味普通で、どこにでもありふれた物に名前をつけただけのものだが。
それの名前は、「いじめあいっこ」。
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「瑠奈ってさぁ、ホントに馬鹿だよねー、ちゃんと脳みそ詰まってるの?」
「えーひどーい、私だって頑張ってるのにぃ。そういう花奈の方が成績悪いじゃん!」
「私はノー勉でこれだもん。それより、沙織の好きな人知ってる?」
「知らなーい。え、あのガリ勉沙織に好きな人?」
「そうだよねー。実は、隣のクラスの牧くんだって!私もびっくり!」
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「ねえ沙織、花奈の好きな人知ってる?このクラスの鮎川くんだってよ!」
「ホント?!いいこと聞いちゃったなあ…ありがとう美波!あと、この間のテスト私一位だったよ!」
「何その自慢!私の成績悪いの知ってて!ひどーい沙織!」
「ふふ、せいぜい励みたまえ!」
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「鮎川ー、おまえモテモテだな!アニオタなのバラしてやる!」
「わーそれだけはやめろって芹川!いいよお前がこのクラスの奈由さん好きなことバラしてやるから!」
「なんだと、この恩知らず!お前がこの間コンビニで10円足りなかった時に貸してやっただろ!あれ返せよ!」
「俺だって、お前と遊ぶ時に毎回菓子持ってってんだからお前のほうが恩を感じるべきだろ!」
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「奈由!私の机に蝉の抜け殻入れたのあんたでしょ!私が虫嫌いなの知ってるくせに!」
「何よ天音!そっちだってこの間私の椅子に消しゴム投げてきたじゃない!」
「志歩、芹川奈由が意地悪してくるよう!」
「あーもう、私本読んでるんだから邪魔しないでよ」
「ホントそうだよ天音!てかそのあだ名やめてって言ったじゃん!」
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「茂明、お前吉川さんのこと好きなのか!そうかそうか!」
「は?!広翔、一体どこからその情報を…お前か、颯太!なんだその黒板にでかでかと描かれた相合傘は!」
「俺は『言うな』って言われたから絵に描いただけだよーん」
「屁理屈を言うな!じゃあ俺だって!」
「ほうほう、颯太は亜希のことが好きなのかー!俺の幼馴染とは、お目が高いねえ!」
「やめろーっ!お前の相合傘だって描いてやる!好きな人を言えー!」
「え…あひゃひゃひゃ!くすぐりは反則だろ!む…村雨さんんだよおお!」
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こんな風に、それぞれがそれぞれをいじりあって過ごしている。これが、日常。
内心、嫌だって、みんなが思っていることも、みんな知ってる。自分が、そうだから。
みんなが体験するこのゲームは、普通であって、特殊だ。自分と同じようなことを思っているみんなに、同じようなことをし合う。たとえ、それが相手を深く傷つける物であっても。
あなたは、どうだった?




