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第零話
少女は夢見た。『白月写本群』の主人公であるトウジョウ・スズがやがて全ての牢獄から己を救ってくれることを。愛してくれることを。
少女は孤独だった。生まれながらにして周りの魔力を無尽蔵に食らい尽くす魔力喰い。少女の一族の誰もが彼女にひれ伏した。誰一人として、対等ではなかった。
紙片に書かれた物語だけが、彼女を殺し、生かした。かけがえのない友を得て、全てが変わる。『白月写本群』第一編は、そのような話だった。
少女は戦場にいた。ひとり、またひとり。肩を並べ、共に食らい、生きていたものが、物言わぬ肉に変わる。それでも、物語の中では、とっくに忘れたはずの胸の高鳴りがまだそこにあった。『白月ノ物語』、魔法の存在しない世界で、恋に落ちる男女。それは『白月写本群』第二編の翻案だった。
やがて少女たちは、人生を変えたフィクションの主人公を望む。
試みが、滑稽な失敗談で幕を閉じるには、少女たちは賢すぎた。




