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忘れられたナニカ

作者: 竜辰龍

 どうやら僕は何かを無くしてしまったようだ。

 というのもここ数日の間、心にポカリと隙間があいたような、東に行くはずが西に向かっているような奇妙な感覚が付きまとうのだ。

 きっとそのナニカは僕にとって大したこともない、置き去りにされてこそ意味のあるものだったのだろう……あるいは逆に、ナニカを失うことでこれまでの人生が三百六十度+α分ぐらいずれてしまうほど欠かせないものだったのかもしれない。

 どちらにせよ、ナニカはもうない。

 僕が忘れたせいで、過去のどこか見知った場所に置かれたままになっている。

 もしかしたら、通りすがりの人が拾って、僕の代わりに何かを大切に大切にしまってくれているのかもしれない。あるいは掃除中の奥さんがゴミ箱の中にでも捨ててしまったか……。

 それにしても、面倒なことになってしまった。

 ナニカは他の人に迷惑をかけていないだろうか。小さな子どもにいたずらをしていたら大変だ。

 ただ幸運なことに、僕はナニカを『忘れた』とは覚えていた。

 ナニカがない。

 そのことは頭の隅に引っ掛かり、魚の小骨のようにむず痒い感覚が取れなくて、いらだって、ムシャクシャするけど。

 忘れてはいけない。

 ナニカはきっと戻ってこない、でも、万が一にも僕の手元に舞い戻ってきたときに僕がナニカの存在を忘れ去っていたのなら、きっとナニカは悲しむだろうから……。

 このまま覚えていよう。

 

 胸に深く空いた穴を抱えて、ただただ僕は歩く。

 

 この先もたくさんのナニカを、落とし続ける。

 

 

まあひねりもなく、かといって特殊な味があるわけでもない短編です。

結局ナニカとは何なのか…ご想像におまかせします。

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