006: オレとヒルデの異世界の旅
待ての勇者と急ぎの姫騎士
006: オレとヒルデの異世界の旅
「いやあ、遅くなってごめん。やっと手が空いたから、続きの説明するわね」
「ああ、頼む。やっと東西南北の見当がついただけで、途方に暮れていたところだ」
「え、うそ、方位が分かったの?」
「え、ああ、太陽の沈む方向が西だから、その動きで分かる」
太陽の方角を指さす。
「ああ、あれはただのライトよ」
「「ライト!?」」
「うん、女神のレクチャーが済むまでは、始まりの木と草原しかないの。やみくもに歩いても、始まりの木から100メートル先には進めないことになっているのよ」
「……で、あれがライトなのか?」
「でも、高度が下がっていったぞ」
「ああ、ただのギミック。場合によっては何日も待たせることがあるから、疑似的に太陽に似せて動かしてるの。ゲームの中の時間変化と同じ」
「本物の太陽みたいだが……ヘクチ」
「ハハ、意外にかわいいクシャミをするんだな」
「戦乙女は、基本は乙女だものね。たしなみよね(⌒∇⌒)」
「いや、戦場で不用意に音をたてては、敵に見つかるからな、習慣になっている。ま、その意味ではたしなみだな……でも、考えたら、あれが太陽なら、こんなに見つめられるもんじゃないな……」
「いや、だから照明(^_^;)、ライトなの。試しに消してみるね」
パチン
「「あ、真っ暗!」」
「分かったぁ?」
「「うん」」
「じゃあ、太陽に切り替えるわね」
パチン。
「「まぶしい(><)!」」
「だって、太陽ですからね……あれ?」
「「ああ……」」
さすがリアル太陽、目が潰れそうになる。
「しかし、明るさは違うが、方角も高さもライトと同じところにあるぞ……ヘクチ」
「ん……まあ、こんなこともあるか……ん、あの小屋みたいなのは?」
「ああ、公衆トイレだ。必要に迫られてな」
「そうか、スグルくんはトイレの勇者だったわね。それにしても、なんで真東にトイレ?」
「あ、ああ……トイレは東司と言って、古来東側に作るのが基本だからな」
オレもそんなに意識したわけじゃないけど、なんか自然にそう思った。
「ああ……ひょっとして、あのトイレで方位が確定?……あ、じゃあ、説明するわね。北を見て」
「ん?」「おお!」
いつの間にか北の彼方に青い山脈を背景にした城塞都市が現われている。
「取りあえずは、あそこまで行ってみて。スグルくんはレベルE、ヒルデさんはD、まだまだ駆け出しだから、勉強と実践を重ね経験値を稼いで魔王退治を目指してくださいな」
「おう」
「待ってくれ、このブリュンヒルデには使命が」
「ヒルデさんの使命の場所も、その先、魔王退治の先にあります。スグルさんの異世界線に被ってしまったから、受け入れてください」
「そんな!」
「落ち着いて、いいこともありますから」
「いいこと?」
「はい、あっちの世界での追手はこの世界には現れません。この異世界でがんばれば道は開けます。時どきはアドバイスもしてあげられると思いますので、まずは前に進んでください」
「そうなのか」
「はい、それでは……エイ!」
女神がロッドを振ると、草原の中に道が現われて北に伸びていった。
太陽はいよいよ西に傾き、オレとヒルデの異世界の旅が始まった。
☆彡 主な登場人物
・鈴木 秀 三十路目前のフリーター
・ブリュンヒルデ ブァルキリーの戦乙女
・女神 異世界転生の境に立つ正体不明の女神
・秀の友人たち アキ 田中




