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058 : エマのアイデアでトイレ魔法を応用する

待ての勇者と急ぎの姫騎士


058 : エマのアイデアでトイレ魔法を応用する





 大半の瓦礫が消え去って、川には二本のヘルチェーンが切れも絡みもせずに両岸を繋いでいる。


「残った瓦礫を橋板にすれば、なんとか渡れるだろう……」「はい!」「ヘルチェ-ンがしっかりしているからな」


 俺は、河原のみんなに呼びかけた。


「多少とも魔法の使える者は手伝ってくれ!」


 そう呼びかけると数十人の者が名乗りをあげてくれ、魔法使いや魔導士を先頭、後ろには白魔導士やヒーラーたちが控えて魔力の補充をしつつ補修してく。


 一時間交代、延べ三百人のボランティアが夜通しの作業をやって、二日目の昼には残り二日で完成するだろうと見通しもついた。その間、魔法が使えない者たちは焚火を起こし、作業する者たちの食事をつくり、寝床を整えたり。ここへきて、河原の者たちは一気に団結した。


「スグルさま、魔法で浴場を作りましょう!」


「え、俺のはトイレ魔法だし」


「こないだは河原で露天風呂を作ったではありませんか」


「いや、あそこには温泉が湧いていたから……」


「沸かせばいいのです。わたしのストレージに薪があります」


「いつの間に薪をため込んだんだ?」


「道中、程よく枯れているのを見つけては少しずつ。魔力でも火を起こせますが、自然の火の方が常使いには効率がいいのです」


「そうだ、同じ釜の飯を食い、同じ風呂に入れば、いい思い出になるぞ」


「……そうだな、これだけの旅人が団結したんだ。よし、やってみるか」


 魔物をやっつけ、瓦礫もおおかた片付けた。あとは、仮設橋の仕上げと点検だ。


 先日とは違い、天然温泉を引き込むわけではないので、お湯を沸かすのと循環に気を配ったが、和式水洗トイレの構造が利用できた。タンクにあたるところをボイラーにして、排水口を小さくして一度に50人ほどが入れる男風呂、30人が入れる女風呂を作った。


「これはいい! 旅人の多くは風呂に入る習慣がありません、みんなここで風呂の楽しさを知りました。橋の本格復旧にはまだまだ時間がかかるでしょう、わたしも大荷物、みなさんといっしょに渡ることもできない。背後の山にはいっぱい木があるし、燃料にも事欠きません。しばらく、この風呂の守りをしてみますよ」


「それじゃあ、ここは全部あなたに譲りますよ、頑張ってください」


「あまり阿漕な料金を取らぬようにな」


 ヒルデが念を押すと、商人はニヤリと笑って言った。


「元手がかかっておりません、入浴料は無料にします」


「それは良いことです!」


 エマは手放しで褒めたが、ヒルデは、ちょっと皮肉だ。


「なにか、他のことで儲けるつもりだなぁ?」


「お見通しだなあ姫騎士様はぁ、いかにも、風呂から上がってからのあれこれが商売になります」


「あがってからだと……」


 風呂からあがった者たちは、てんでに夕飯や酒盛り、寝泊まりの準備を始めている。川に入って洗濯している者、魚を獲って干魚にしている者。中には、衣類や寝具の繕いをしている者もいる。

 人を雇って、これを事業化すれば、けっこうな稼ぎになるかもしれない。なんせ、客寄せの風呂はただで手に入るんだからな。


「北に行っても商売にはなります。しかし、北は物騒だ。ここに腰を落ち着けた方が、結果的には安全で発展性がありそうです」


「なかなか、堅実ですねぇ、ところで名前は何というんですか。あ、自分は……」


「スグルさまでございますね。こちらがメイドのエマさん、あちらが姫騎士のヒルデさま。あ、わたしはこういうものでございます」


 商人が懐から出したのはハイデベルクの通行許可書だ。許可証には『ヴェニスの商人シャイロック』と書いてあった。


「シャイロック……」


「そうだ、ハイデベルクへ行かれるのなら、こちらを差し上げます。これがあれば、ハイデベルクとその周辺は自由に出入りできます」


 商人が代わりに差し出したのは従者用の通行許可書だ。


「途中人を雇ってハイデベルクに行こうと思ってましたので用意していたものです。従者用なので期限は一年しかありませんが、お役にはたつと思います」


「ハイデベルクは出入りが厳しいんですか?」


「日ごろは人数と旅の目的を聞かれるぐらいですが、この川の様子を見ると、北は少し荒れているような気がいたします。なあに、ズィッヒャーブルグとウンターヴェークスの商人免許も持っております。当分は、ここにいるつもりですし、なにかございましたら『シャイロックに問い合わせてくれ』とおっしゃれば良いかと思います」


「それは助かる、ありがたく使わせてもらいます」


 そのあと、河原のみんなに風呂の入り方を教え、俺たちも風呂に入った。


 和式便器の形には少し抵抗があったが、みんなは平気で入ってくれているので内緒にした。




☆彡 主な登場人物


・鈴木 すずきすぐる    三十路目前のフリーター

・ブリュンヒルデ         ブァルキリーの戦乙女

・エマ              バンシーのメイド

・女神(甲と乙)         異世界転生の境に立つ正体不明の女神たち

・ハンス・バウマン        ズィッヒャーブルグのギルドマスター

・フンメル            西の墓地に葬られている一万年前の勇者

・カルマ             フンメルとパーティーを組んでいたエルフの魔法使い

・トルクビルト(工藤甚一)    ズィッヒャーブルグの幻影魔法士(娘:ビアンカ、カリーナ)

・シャイロック          ヴェニスの商人

・秀を取り巻く人々        先輩  アキ(園田亜妃) 田中

・魔物たち            ガイストターレン 



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