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057 : トイレチックスワール(swirl)!!

待ての勇者と急ぎの姫騎士


057 : トイレチックスワール(swirl)!!





 さて……魔物たちは北におっぱらったが、瓦礫は鎖に絡まり川底に閊えたままだ。


「このまま渡るのは無理だなあ……」「橋を直さなきゃなぁ……」「誰が直すんだぁ……」「橋の管理は?」「フンメル様だべ」「一万年前のお方だぞ」「そうさなあ……」「行政区分的にはウンターヴェークスだろ」「あ、でも、川の真ん中が境界線……」「北半分は、ハイデベルクになってんぞ」「こりゃあ、両方に掛け合わなきゃならんだろう……」「何年もかかっちまうぞ……」


 トイレが充足して落ち着いた群衆たちは、川を渡る算段をし始めたが、前途は多難だ。


「まず、あの瓦礫を撤去しなければならんだろう」


「そうでございますね、あのままでは、また詰まってしまいます」


「ああ……撤去といってもなあ……」


 ため息をついて目を向けた川は、荒川の下流ほどの幅があって500メートルはありそう。とても勢いだけで渡れるもんじゃない。


 うぅん………………(-_-;)


 俺たちも考えてみるが、他の奴らと大した違いはなく、ため息と唸り声しか出てこない。


「あ、スグルさま!」「あ、あいつら!」「無謀だ!」



 業を煮やした冒険者たちが渡りやがる!



「だいじょうぶかぁ……?」「無理だろ……」「ダメだろ……」「どうだかなあ……」「わしたちも」「やめときな」「そんでもよぉ……」


 さっきほど——やめとけえ!——という感じじゃないけど、後に続いたのは三組十数人。一組は、100メートルほど行ったところで引き返し、無事に渡れたのは、最初の組を含めて十人足らず。三人流されて、一人はさっきみたいにエマのカメラドローンで救助したが、二人は助けられなかった。


——いわんこっちゃない——という空気が大半だが——やったらやれるかも——という奴もいる。


「わたしたちも渡ろうか」


 ヒルデが立ち上がる。


「待て、まだ危険だぞ」


「危険は承知だ、ヴァルキリーの名簿を……」


 そうだった、ヒルデの旅はヴァルキリーの名簿を守るためなんだ。それが、アキに化けたか取り込んだかの魔物に盗まれて、一刻も早く取り戻さなければならないんだ。


「あの名簿に載っているのは、ただの兵士なんかじゃない、もう何十年も戦い続けて身も心もボロボロの戦士たちだ。それを生まれついての責任感、それこそノブレスオブリージュで戦い続けてきた勇者たちばかり。もうたくさんだ。たとえ神といえど、最高神オーディンであろうと、ラグナロクの贄にしていい者たちではないのだ……」


「ヒルデさま……」


「すまん、わがままを言うようだが、ここからは、このブリュンヒルデ一人で行かせてくれ!」


「ヒルデさまッ……」


 エマが悲しい、いや苦しそうな顔になる。


 エマはバンシー、世話をしている家族や仲間が離れていくのは苦痛なんだ。


 二人とも、その思いは尊いと言っていい……ここは——待て!——では済まない。


「よし、俺のスキルでなんとかしてみよう!」


「スグル……貴様が使えるのはトイレに関する魔法だけだろ」


「いや、応用すれば手はあるだろう」


「スグルさま!」


 頭の中に一つのイメージが湧いた、いやインスピレーション! 流行りのエルフアニメでも言っていた「魔法はインスピレーションなんだよ」って。


「みんな、下がってくれ! これから瓦礫を始末するぞ!」


 河原のみんなは何事かと俺を見たが、魔物たちを一掃したパーティーなので、おとなしく指示に従ってくれる。


「では、いくぞ!」


 俺は、トイレのあれをイメージし両手を大きく回した!


「トイレチックスワール(swirl)!!」


 頭に浮かんだ術式をふさわしい言葉に変換して叫んだ!


 ズ ズゴゴーーーーーーーーーーー!!


 オオオオオ(ʘ▫ʘ)!!(ʘ▢ʘ)!!(ʘдʘ)!!(ʘ○ʘ)!!(ʘ△ʘ)!!(ʘдʘ)!!(ʘ▽ʘ)!!(ʘ◇ʘ)!!(ʘдʘ)!!(ʘ◎ʘ)!!


 トイレの水洗渦を巨大にしたものが数十個も現れて、絡んでこんぐらがった瓦礫をずんずん吸い込んでいく!

 

 二人の仲間も、河原の者たちも歓声を上げる中、膨大な瓦礫は渦に吸い込まれ、その大半が消え去って行った!


 

☆彡 主な登場人物


・鈴木 すずきすぐる    三十路目前のフリーター

・ブリュンヒルデ         ブァルキリーの戦乙女

・エマ              バンシーのメイド

・女神(甲と乙)         異世界転生の境に立つ正体不明の女神たち

・ハンス・バウマン        ズィッヒャーブルグのギルドマスター

・フンメル            西の墓地に葬られている一万年前の勇者

・カルマ             フンメルとパーティーを組んでいたエルフの魔法使い

・トルクビルト(工藤甚一)    ズィッヒャーブルグの幻影魔法士(娘:ビアンカ、カリーナ)

・秀を取り巻く人々        先輩  アキ(園田亜妃) 田中

・魔物たち            ガイストターレン 


 

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