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056 : 魔物用マタタビ、効果はすごいんだけど

待ての勇者と急ぎの姫騎士


056 : 魔物用マタタビ、効果はすごいんだけど





「MATATABIがございます!」


 ストレージを探っていたエマが明るい声を上げた。


「またたび? 猫でもおびき出そうというのか?」


「またたびをご褒美に、猫に魔物退治を頼むとか?」


「そうではございません」


 俺とヒルデのいいかげんな反応に怒りもせずに話を続ける。


「MATATABIのMAは魔物の『マ』でございます、魔物を寄せ付けるための煎じ薬でございます」


「ええと、寄せ付けちゃダメだと思うんだけど」


「あ……聞いたことがある。トールが魔物退治をするときに、魔物を探すのが面倒で、薬を使って魔物を集め、ミョルニルのハンマーの一振りでやっつけたそうだ」


「でも、そんなものを持っていて、かえって魔物を呼び込んでしまわないのか?」


「大丈夫でございます。わたしのストレージは完全密封、MATATABI も鰹パック同様の個包装になっていますから」


「ああ……でも、寄せ付けてしまうんじゃダメなんじゃないか?」


「あ、そうか! これで引き付けて、一気に魔物を成敗する! そういうことだな!?」


「え、あ……」


 エマが返答する前に商人が目を吊り上げた。


「ちょ、そんな物騒なもの出されちゃ困るよ!」「なんだなんだ?」「え!」「ええ!?」「魔物を集める!?」「かんべんしてくれ!」「何考えてんだ!」


 商人の声に、他の連中も怯えたり怒りだして収拾がつかない。


「あ、ええとぉ……」


「聞け! 旅の者たち!」


 ヒルデが両手を上げて一喝すると、河原の者たちは一瞬静かになる。さすがはヴァルキリーの姫騎士!


「これで、寄せ付けた魔物は我々が成敗する! 皆は、避難して見ていればよい!」


「しかし……」「討ち漏らしたら……」「北の魔物を……」「なあ……」「南に呼び込むのは……」


 こいつら、北への恐怖以外に微妙な偏見がありそう。


「いえ、それについては、ヒルデさま……」


「え……ふむ、それなら大丈夫だな……聞け、皆の者! マタタビはドローンで北岸、いや、さらに向こうの街道から外れたところに落とす。橋を直したのち、我々三人が責任をもって、その魔物たちを退治する。これでどうだ!?」


「え……」「ああ……」「それなら……」「とりあえず……」「川を……」「渡れりゃ……」「いいか!」


 ということで、エマのカメラドローンにマタタビを載せて、魔物たちを誘導する。


 マタタビの威力は絶大で、魔物たちは瓦礫に挟まれた手足なんか切り捨て、なかには挟まれたところから二つ三つに千切れてドローンを追いかけるやつもいる。


 ウォーーン ワオーーン ギャオーーン グロローーン ヤィーーン ヤオーーン


 なんともグロテスクな鳴き声をあげ、北の街道の向こうへ消えていった。



 ヤッターーー!! おおーー!! うぉーー!!



 河原のみんなから歓声が上がって、俺たちも少し鼻が高い(^^;)。


 ギギギ ガチャ ゴチャ グギギギ プッシューー! ドドド====!!


 魔物たちが抜けた分、隙間ができて、それを埋めるように瓦礫が絡まり合い、ジェット水流も複雑になって勢いを増してしまった!


 ああぁぁ…………


 河原の者たちのうめき声が響き、尼さんや僧侶たちが効き目の無い祈りを捧げる。


 安心と落胆と諦めが河原を支配する。


 え ちょ おい きゃー やめ! ちょやめ!


「なんだ?」「なんでございましょう?」


 河原のあちこちで小さな騒ぎが起こりはじめた。


「はあ、みんな、安心と諦めで催してきたんだなあ……」


 商人が——しかたないなあ——とため息をついて「みんな、用を足すんなら川か、穴を掘ってやりなされ。ここでキャンプをしている人もいらっしゃるんですからぁ」と手をメガホンにする。


 それもそうだと、川に向かう者もいるけど、水流がきつくて半分ほどは言うことをきかない。それに、女性はもともと無理だし。大きい方はここまで臭ってくるし。


「スグル、あれを出してやれ」「そうでございますね」


「仕方ないなあ」


 俺は、道の駅のそれをイメージして集合トイレを出してやる。


 みんな令和のウォシュレットは使い方が分からなので、エマとヒルデが説明にまわる。


「スグルー、二人じゃ追いつかんぞ!」「スグルさまあ!」


「ちょ、待って!」


 慌てて自分のストレージをチェック、すると『ウォシュレットの説明』というのがあって、それに特級の魔法ををかけ、すべてのトイレに配置した。


 説明たちは、一昔まえのアキバメイドの姿で、テキパキ、明るく説明と案内をしてくれたぞ。




☆彡 主な登場人物


・鈴木 すずきすぐる    三十路目前のフリーター

・ブリュンヒルデ         ブァルキリーの戦乙女

・エマ              バンシーのメイド

・女神(甲と乙)         異世界転生の境に立つ正体不明の女神たち

・ハンス・バウマン        ズィッヒャーブルグのギルドマスター

・フンメル            西の墓地に葬られている一万年前の勇者

・カルマ             フンメルとパーティーを組んでいたエルフの魔法使い

・トルクビルト(工藤甚一)    ズィッヒャーブルグの幻影魔法士(娘:ビアンカ、カリーナ)

・秀を取り巻く人々        先輩  アキ(園田亜妃) 田中

・魔物たち            ガイストターレン 



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