051 : みんなでお風呂・1
待ての勇者と急ぎの姫騎士
051 : みんなでお風呂・1
『忘れな草の雰囲気だねぇ……』
アキが送ってくれた同人誌の写真を見て先輩が呟いた。
同人誌には、魔法少女マジカになる前と後の写真が載っている。先輩はなる前のアキを見て『忘れな草』と例えたんだ。
『この忘れな草みたいな子が、見事にカトレアになっちゃうんだねえ……』
コスプレとかは「よく分からん」と言う先輩だけど、アキの変身ぶりには感心してくれた。
アキは、大学に入ってコスプレに目覚めるまでは地味で臆病なやつだった。修学旅行も——人とお風呂に入るのが嫌で、気が進まなかった——という気後れ女子だった。
それが、露天風呂の岩に背を預け、湯浴み着を着ているとはいえ、二人の美女に機嫌よく挟まれてやがる。
俺は、その斜め45度のところで頭に手ぬぐいを載せている。
「……ほう、そんなに面倒見のいいやつだったのかスグルは?」
方頬で笑いながらこっちに視線を送ってきやがる戦乙女。
「はい、あのころはコスプレ専門店なんてありませんでしたから、あちこち回っては材料を集めてくれたんです、先輩。武器とか小道具とかはホームセンターである程度そろいますけど、コス用の生地は日暮里で舞台衣装用のお店を見つけてくれたり」
「あ、日暮里なら……ウフフ(*´艸`*)」
「日暮里がどうかしたんですか、エマさん?」
「あ、いやな、こういうことがあったんだ……」
謎かけ魔物(024:謎かけ魔物 リーツセル)に振り回されたことを無表情に話すヒルデ。ついこないだのことなのに昔話のようだ。
「ああ、日暮里のシンボルみたいなものですから、自分がいたらすぐに分かりましたよ!」
「まあ、アキさんが居たら百人力ですね(^▽^)」
「アハ、いえいえ(#^^#)」
褒められると居心地が悪くなるところは入学したころと変わらん。愛すべき後輩だ。
「あ、そうそう。FRPとかは専門店に行かなきゃならないんですけど、それも先輩が面倒見てくれました」
「エフアールピー?」
「はい、カーボン、あ、炭素繊維の布です。それやら、ガラス繊維とか、それに樹脂をしみ込ませていろいろ作るんです。紙とか発泡スチロールと違って丈夫ですしね。ヒルデさんのオリハルコンの剣なんて、5キロはあるでしょ。エマさんのロッドだって2キロはありますよね、さっき構えて向けられたときは本物の迫力でしたからね!」
「どうでしょ、計ったことありませんから……」
そう言いながらストレージから秤を出すエマ。
「ええと……2・1キロです」
「やっぱりぃ、こんなのわたしが振ったら手首イワシてしまいます」
「わたしのはどうだ?」
ヒルデが見慣れないソードを出した。
「「「おお」」」
「いつものオリハルコンではないのですねぇ……」
「ああ、エクスカリバーだ。アーサー王が使っていたんだがな、還暦を過ぎて持て余すというんで使わせてもらってる。大事なソードだからめったに使わないんだが、8キロはあるかなあ……」
「あ、計ります!」
「ウム……おお、10キロもあったか!」
「アハハ、持つのはともかく、ぶん回せないですよ、こんなのぉ(^^;)」
「常に使わないのは、やはり、重いからでございますか?」
「いいや、これにはアーサーの人生が詰まっているからなあ、おいそれとは……あ、重いのなら、こんなのもあるぞ」
ズルリ
「「「うわあ((( ゜Д゜)))!!」」」
それは、度はづれて大きなハンマーだ!
「ミョルニルのハンマーといって、トール将軍がくれたんだ」
「これは、さすがに使えないでしょぉ……(^^;)」
「いいや……セイ!」
ブン!! ザザザザザ! ガタガタガタ!
「ヒヤァーー!」「アレェ!」「ウワ!」
一振りしただけで温泉がさざ波立ち、岩がガタガタ揺れやがる!
「アハハ……この武骨さが性に合わないんでな、まだ実戦では使ったことがない。計ってくれ」
「あ、こういう重量物はお風呂では計れません。上がってから計ります(^○^;)」
なんか、あまり温泉に浸かって話す話題じゃない。と、思ったらエマが自然に食べ物の好みを話題にする。このあと、風呂上がりの宴会になりそうだからな。
とりあえずは、楽しく——みんなでお風呂のイベント——になった。まずはめでたい(^▽^)。
☆彡 主な登場人物
・鈴木 秀 三十路目前のフリーター
・ブリュンヒルデ ブァルキリーの戦乙女
・エマ バンシーのメイド
・女神(甲と乙) 異世界転生の境に立つ正体不明の女神たち
・ハンス・バウマン ズィッヒャーブルグのギルドマスター
・フンメル 西の墓地に葬られている一万年前の勇者
・カルマ フンメルとパーティーを組んでいたエルフの魔法使い
・トルクビルト(工藤甚一) ズィッヒャーブルグの幻影魔法士(娘:ビアンカ、カリーナ)
・秀を取り巻く人々 先輩 アキ(園田亜妃) 田中
・魔物たち ガイストターレン




