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048 : 女神の血と汗

待ての勇者と急ぎの姫騎士


048 : 女神の血と汗




 ゼーゼーー…………くるん。


 喘ぎながらも女神が指を振ると二人の目が正気に戻った。


「きさま!」「女神さま!」


 瞬間で沸騰する二人だが、俺同様に体は動かない。


「あ、わたしはあなたたちの女神だからぁ……(^○^;)」


 なるほど、声は春の終わりを思わせるホワホワ声だ。


「いったい、女神さまは何人おられるのですか!?」


 何事も整理分類したがるエマはメモ帳を構える。まともに体が動かないものだから、満員電車の中で参考書を開いてる受験生みたいだ。


「わたしのことは女神甲とでも、あっちの方は乙にしといて」


 甲、乙、何気に自分の方が偉そう。


「で、なんなんだよ、この状況はぁ?」


 谷川の湯煙が濛々として、まわりが全然見えない。


「あ、乙もトルクビルトも、その……『一旗揚げたい組』っていうか、せっかくこの世界に来た! 来させた! っていう感じで、魔王を倒して、自分たちで新秩序を作ろうって、そういう志なの」


「「「新秩序!?」」」


「トルクビルト……工藤クンはね、もともとは魔王をやっつけて、元の世界に帰ろうと思っていたんだけど、挫折して魔術を見世物にして家族を養っていたでしょ」


 そうだ、やつはズィッヒャーブルグでそこそこの見世物士としてうまくやっていたはずだ。ビアンカ、カリーナの二人の娘も生まれて、いい親父として生きていた。


「でも、若い人たちが次々に魔王退治に出発していくのを見送っていると、自分ももう一旗って思うようになったのよ」


「フン、そこを女神乙がつけこんだというわけか?」


 ヒルデは、早手回しに軽蔑しにかかっている。


「ええ、まあ……でも、工藤クンは、別の世界に行ってしまったし、それは置いといて!」


 荷物を置き換えるようにして、どうやらここからが本題。


「アキちゃんがね、本格的に魔王に取り込まれてしまって、あなたたちの前に立ちふさがってくるの(>○<)!」


「アキが取り込まれた!?」


「魔王は、まだどういう風にアキちゃんを使うか決めていないけど、いろんなものに姿を変えて攻めてくるわ」


「ひ、卑怯な!」


「アキちゃんは優秀なレイヤーさんだったでしょ。変身に関しては優れた感性を持っている、そこに付け込まれた的な……」


 グ……考えたら、アキをコスプレの世界に引き込んだのは俺だ(-_-;)。


 読書好きで、ラノベに興味を持ち出したところで大学に入ってきた。そこからアニメ、コスプレに進むのは節理みたいなもんだが、手を貸したというかジャンプ台を与えたのは俺だ。


「魔王の力とレイヤーの情熱が重なったから、ちょっと見極めがむつかしい……」


 ああ、それは容易に想像がつく。ぜんぜん別なものに見せかけて攻めてこられたら……ちょっと地獄。


「でも、穴に落ちてしまう寸前(026:粗忽の女神に雨が降る)、お互いに強く手を握り合って、お互いに腕を傷つけてしまって……」


 思わず目をつぶってしまう。


「その時、お互いの腕を傷つけてしまって、二人の血が混ざりあったの……それで、わたしなら何に化けようと、あの子の本性が見抜ける」


「それじゃ……」


「ついていければいいんだけど、わたしも担当範囲が広くて……」


「「「ああ……」」」


 そうだろうな、これまでも二度ほど、ほんのちょっと現れただけだ、026じゃ映像だけだったし。


「でも、わたしの血には、その見抜く『素養』が入っています。このわたしの血をスグル君の血に混ぜれば、その力を移植できます」


「え?」


 血を混ぜる……!?


「ハイ、お互い腕を切って血を混ぜるんです。180CCも混ぜれば……」


「180ってコップ一杯だぞ! それに痛いのは……」


「うぅーーん、では、血よりも濃いもので」


「血より……」「「濃いもの?」」


「ハイ、古事記でいうところの『美斗能麻具波比』」


「なんだ、その漢検特一級みたいな熟語は?」


「ミトノマグワイ。イザナギ・イザナミがやったことです」


「ええ!?」「「………(⩌‐⩌)」」


 不穏な単語に、ヒルデは訝しがり、エマはジト目のまま検索をかける。漢字では分からなかったが声に出されると分かってしまう俺。


「ヒルデ様……」


 さっそくヒルデに耳打ちするエマ。


「不埒もの!!」


 激おこのヒルデ。


「それはダメだ!」


 俺も断固拒絶!


「言うと思ったわ、じゃぁ、これで!」


 ブン!


 勢いよく背を向ける女神。そのロン毛が勢いよく振られて、女神の汗が飛び散って俺の目と口に入った!


「ウ!」


「その汗でも多少の効果はあるわ。次はいつ来られるか分からないけれど、健闘を祈ります……」


 シュバ!


 掃除機がマックスの馬力でゴミを吸い上げるみたいな音がして、女神は消えていった。




☆彡 主な登場人物


・鈴木 すずきすぐる    三十路目前のフリーター

・ブリュンヒルデ         ブァルキリーの戦乙女

・エマ              バンシーのメイド

・女神(甲と乙)         異世界転生の境に立つ正体不明の女神たち

・ハンス・バウマン        ズィッヒャーブルグのギルドマスター

・フンメル            西の墓地に葬られている一万年前の勇者

・カルマ             フンメルとパーティーを組んでいたエルフの魔法使い

・トルクビルト(工藤甚一)    ズィッヒャーブルグの幻影魔法士(娘:ビアンカ、カリーナ)

・秀の友人たち          アキ 田中

・魔物たち            ガイストターレン 

 

 

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