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047 : 温泉街をひた駆ける!

待ての勇者と急ぎの姫騎士


047 : 温泉街をひた駆ける!





 トルクビルトも片付けた、ウンターヴェークスほどの温泉はこの先にはない。


 だったら、もう二三日、ゆっくり湯につかっていたい……と思っても、そう罰当たりなことではない。


「ダメだ!」「ダメでございます!」


 女二人が声をそろえる。


「なんでだよ。二人ともお湯につかってけっこう寛いでいたじゃないかぁ……ちょ、待てよぉ……」


「急ぐ!」「急ぎます!」


「ちょ……」


 この旅を始めて、ヒルデは「急ぐぞ」、俺は「待てよ」、なんだか掛け合いのようになることが多い。


 ヒルデはヴァルキリーの戦乙女、それも先頭に立つ姫騎士だ。


 エマも属性はメイド。もともとは家にとりついて家事全般を支配する家事妖精のバンシーだ。


 二人とも秩序と先進を尊ぶ。「待て」と「急げ」の掛け合いと言うか、それでバランスがとれているなら問題ない。営業で培った感覚からも「ま、いいか」とも思う。


 でも、でもだ。


 トの字相手にきつい戦いをやった後だ。その前のガイストターレンでもリーツセルでも眠る・食べる以外には停まって休むことがなかった。そりゃあ三日半温泉に浸かったけど、トの字の捜索と監視のためだ。あれは凶悪犯の張り込みをしている刑事みたいなもんで気が休まっていない。


 トの字が女神(俺たちのとは別の)と共に消えて、ヒルデと二人でストレージを飛び出ると、エマも様子を見ていて「これで一件落着でございますね!」とこぶしを握り、ヒルデが「そうだ!」と頷いて露天風呂を飛び出した。


 ダンドリ的にはそうなんだろうけど、これだけの戦いをやったあとなんだ、ちょっと休む気になっていた俺は気分的にも体力的にも置いてけぼりだ。


「なあ、おいぃ……ヒルデぇ……!?」


 何度目か二人の前に出て懇願しようとして驚いた。


 ふたりとも目がいっちまってる。口は半開きで、こめかみを汗が伝ってる。


 これって、なにかに憑りつかれてる!?


「おい、しっかりしろ! ヒルデ! エマ! 二人とも!」


 温泉街の通りを、もう疾走と言っていいほどのスピードになっている二人。それに並んで、交互に二人の肩を揺さぶっている勇者風。その俺たちに湯治客たちは狂牛に出くわしたみたいに道を開けていく。

 中には変態の勇者風が逃げる美女に付きまとっているように見えるんだろう、箒や幟、さらにはお土産品の木刀で打ちかかってくるやつもいる。でも、こちらは歴戦の魔王退治のパーティー、ヒラリヒラリと躱し、さらに速度が上がる。

 ゆるく曲がった道、そこにさしかかって、子ども三人を引き連れた親子連れ。上には土産物屋の看板が連なって、避けきれない! 手前には湯煙の谷にかかる小橋!


 南無三!


 ヒルデを蹴飛ばし、エマにかぶさって谷に落ちよう!


 そう決心して……エ?



 時間が停まってしまった!



 エマを横抱きにしてヒルデに足を延ばしたままで、ヒルデは、それを避けようと体をひねりながら跳躍、そんなアクションフィギヤのポーズで静止して……目の前の空中に息せき切った女神が現れた。


 え…………こいつ、どっちの女神だ!?



☆彡 主な登場人物


・鈴木 すずきすぐる    三十路目前のフリーター

・ブリュンヒルデ         ブァルキリーの戦乙女

・エマ              バンシーのメイド

・女神(甲と乙)         異世界転生の境に立つ正体不明の女神たち

・ハンス・バウマン        ズィッヒャーブルグのギルドマスター

・フンメル            西の墓地に葬られている一万年前の勇者

・カルマ             フンメルとパーティーを組んでいたエルフの魔法使い

・トルクビルト(工藤甚一)    ズィッヒャーブルグの幻影魔法士(娘:ビアンカ、カリーナ)

・秀の友人たち          アキ 田中

・魔物たち            ガイストターレン 



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