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045: 対トルクビルト戦

待ての勇者と急ぎの姫騎士


045:対トルクビルト戦





「トルクビルト……おまえ、この世界の人間じゃないだろう」


「「なに!?」」


 ヒルデと魔術師の声が重なる。


「俺が出したのは21世紀の日本のトイレだ、ウォシュレット、お尻乾燥、自動水栓、ハンドドライヤー、その全てをためらいもなく使いこなした。この世界の人間にはできない技だ!」


「な、なるほど!」


 初めてウォシュレットを使ったときのことを思い出したんだろう、ソードの構えを緩めるほどに感動する戦乙女。


 ブン!!


 その刹那、無言でロッドを横薙ぎにするトルクビルト! その豪速に俺もヒルデもからくも飛び退る!


 やつが振り切ったロッドは漆黒の剣に変わっていた。


「気を付けろ、並みの腕ではないぞ!」


 叫んだヒルデの胸甲にはほんの数ミリだが、横薙ぎの傷がついている。とっさに自分のアーマーを手探ってみるが傷は無い。


 ブブン! ブン! ブン!


 こちらが構えなおすと同時に打ちかかってくる。それも、二人を一薙ぎ! カラ振ったと思うや間を置かずにそれぞれに一撃ずつ。二人がかりだからいなせているが、一対一なら相当に苦労しているぞ!


 チラ


 ヒルデの目配せ、後ろに回り込めというサインだ。


 シュリン ズビュ!


 突きに見せかけ横に薙ぐ、トの字が左に避けたところを回り込む!


 トン ダダダダダダダダ!


 さらに左に飛んだかと思うと、トの字は開け放たれた401のゲートを飛び出して、瞬くうちにグラウンドに駆け下りた!


「待て!」


 待てと言われて待つわけもないが、ヒルデほど年季の入っていない俺は叫んでしまう。


 ヒルデは無言で突き進んで、奴がピッチャーマウンドに達した時には見事に回り込んで二塁ベースに立っている!


 直後、ホームベースに着地した俺に——挟撃——の目配せ!


「「オリャーーーーーーーーーーーッ!」」


 さすがに息も合って、まんじ巴にトの字に打ちかかる。今のトの字は剣士モードだが、いつ魔術師に戻るか分からない。魔術に関しては奴の方が一枚も二枚も上手だ、魔術師に戻してはいけない!


 ビュビュン ビュンビュン!


 包囲の輪を縮める! 奴はまんじのど真ん中、振り回される格好になって、さすがに躊躇が見えてくる。


「セイ!」「トーー!」


 ヒルデは横薙ぎ! 俺は大上段!


 縦と横の同時攻撃! 


 しかし、俺の大上段はコンマ一秒の遅れが出る。それを見切ったトの字はカエルのように身を低くすると同時に三塁方向に飛び退る!


 ビュン! くそ!


 振りかぶった大上段は縦方向に力が逃げる、それを横方向に変えるのに半歩の遅れ。ヒルデは横に薙いだ力をそのまま瞬発力にしてトの字に追随!


 歴戦の戦乙女、姫騎士の誇りを力に変えて数瞬のうちに追いつく。しかし、一対一、ヒルデに不利だ!


 !?


 三塁ベースにたどり着く寸前、トの字は頽れてしまった!


 見ると、ピッチャーマウンドから三塁ベースまで点々と赤黒い血の跡……そうか、ヒルデの横薙ぎが奴の、おそらくは足を切ったんだ。


 ジャキーーン☆!


 ヒルデがソードを振るうと、トの字の剣は真っ二つになり、地面に落ちた時にはロッドに戻っている。むろん二つに切られて魔術の発現器としての機能も失せている。


「ま、参った。こ、降参だ…………フフ、この戦乙女もなかなかだが、君も腕を上げたな、佐藤秀さとうすぐる


「ナッ!?」「?」


 俺は驚愕、ヒルデは怪訝そうに目を細めた。


 なぜだ( ゜Д゜)?


 こいつ、俺の名前を知ってやがる……それも、高校二年の時に捨てた苗字で……!?


 


☆彡 主な登場人物


・鈴木 すずきすぐる    三十路目前のフリーター

・ブリュンヒルデ         ブァルキリーの戦乙女

・エマ              バンシーのメイド

・女神              異世界転生の境に立つ正体不明の女神

・ハンス・バウマン        ズィッヒャーブルグのギルドマスター

・フンメル            西の墓地に葬られている一万年前の勇者

・カルマ             フンメルとパーティーを組んでいたエルフの魔法使い

・トルクビルト          ズィッヒャーブルグの幻影魔法士(娘:ビアンカ、カリーナ)

・秀の友人たち          アキ 田中

・魔物たち            ガイストターレン


 

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