044: 現れた魔術師は切羽詰まっていた!
待ての勇者と急ぎの姫騎士
044:現れた魔術師は切羽詰まっていた!
グラウンドに出現したトルクビルトは低層階からトイレを捜している。何万人も収容できる東京ドーム、トイレは十か所以上、個々の便器や個室は何百もあるだろう。
……4Fには魔力残滓が無いから、おそらく……間もなく4Fに現れるだろう。
しかし、奴は男だ。
小の方ならトイレでなくとも、たとえばグラウンドの端っことか……それをこれほど駆けまわって……ひょっとして大きい方か?
「来るぞ!」
いちはやくヒルデが感知して、俺たちは柱の陰に隠れた!
……タタタタタタタタ
焦りまくった足音に笑いそうになるが、グっとこらえて様子を見る。
キキーー バタム!
お、無事に入った。
あ……ああ…………
続いて安堵と開放感いっぱいのため息が聞こえて吹き出しそうになる。しかし、敵とはいえ、こういう瞬間は——よかったねえ——と思ってしまう。
「……大きい方だな」
一分近く経っても出てこない敵に、ヒルデは真面目な顔で断じた。
二分を過ぎたころ、ジャージャーとウォシュレットの音、続いてガーガーと乾燥の音、そしてドッバーッと水洗の音…………ジャーー……ゴオオオ……。
あれ?
ちょっと違和感……思う間もなく奴が出てきた!
「待っていたぞ!」
一喝すると、さすがにギクッと後ずさる魔術師。黒のローブに三角帽、遠くから見ただけでは分からなかったローブの下には胸甲が覗き、短めのロッドを剣のように構えて隙が無い。いかにも魔術師にして剣士、そのいずれも極めた、根性さえ悪くなければ第一級勇者に相応しいオーラを放っている。
「グ、こんなところまで来るとは!」
「それはこっちのセリフだ」
シャリン
さて、どうしてやろうかと思ったら、ヒルデが無言でソードを抜いた。
ザシ
半歩さがって魔術を発動させようとするトルクビルト!
「待てい!」
双方に待ったをかけ、俺は二人の間に割って入った。
「トルクビルト……おまえ、ひょっとしてこの世界の人間ではないのではないか」
「「なに!?」」
ヒルデと敵の声が揃った。
☆彡 主な登場人物
・鈴木 秀 三十路目前のフリーター
・ブリュンヒルデ ブァルキリーの戦乙女
・エマ バンシーのメイド
・女神 異世界転生の境に立つ正体不明の女神
・ハンス・バウマン ズィッヒャーブルグのギルドマスター
・フンメル 西の墓地に葬られている一万年前の勇者
・カルマ フンメルとパーティーを組んでいたエルフの魔法使い
・トルクビルト ズィッヒャーブルグの幻影魔法士(娘:ビアンカ、カリーナ)
・秀の友人たち アキ 田中
・魔物たち ガイストターレン




