043: ストレージの中は東京ドームにそっくり!
待ての勇者と急ぎの姫騎士
043: ストレージの中は東京ドームにそっくり!
あまりスポーツに関心のない俺、じつは東京ドームには行ったことがない。
その俺が見ても、そこは東京ドームにそっくりだと思った。
俺たちが飛び込んだのは、アルプススタンドっていうんだろうか、内野席の一番奥だ。振り返るとゲートには『41ゲート』の表示がある。
「え、40以上も出入口があるのか(◎◎)!?」
ヒルデが目を剥く。
気持ちは分かる。普段使っているエマのストレージは無限大なのだが、混乱するので、日ごろは124万立方メートルの収納で間に合わせている。124万立方というとちょうど東京ドームと同じなので、そう表現したんだ。ヒルデの素直な感性は、その俺の喩えでリアル東京ドームそっくりにしてしまったんだろう。
でも、いくら東京ドームと言っても40もゲートは無いぞ……ぐるっと見渡して見当がついた。
「これは4階の1号ゲートと言う意味だ。この下に3階、2階、1階とあって、順番に01から番号を振ってあるんだ。たぶん時計回りに番号が振ってある……おそらくは、全部で10個ほどだろう」
「そうか……しかし、10個でも多いぞ」
「あれだけの魔術師だ、魔力残滓が残っているかもしれん」
「そうだな、ちょっと大きさに圧倒されてしまっていた」
二人で、見える限りのゲートをサーチしてみる……。
「スグル、どのゲートにも出入りした痕跡があるぞ」
「なにか焦っている?」
「我々が来るのを予見していた……それで逃げ回って……いるのか?」
「時間が経てば、古い方から残滓が薄くなっていくだろう。待つしかないか」
営業の要諦は『待ちだ』と先輩も言っていた。
「そうだな……いちばん新しい残滓のところを探してみるのが一番だろうな」
「待つか……」
「ああ」
1Fの方から順繰りに魔力残滓が薄くなっていく。どうやら、奴はグラウンドに現れて1Fからトイレを捜しまわったようだ……ということは、今は3F、4Fのあたりか。
……………………………………………………
「…………すまん、ちょっと用を足してくる」
「あ、ああ、東京ドームと同じなら、フロアーごとにトイレがある。俺の勘じゃゲートを出て左右の遠くないところにある」
公共施設はだいたいそんなもんだ、東京ドームも公共施設には違いないだろうしな。
「少しの間だけ頼む」
そう言ってヒルデは41ゲートに入って行った。
で、直ぐに戻ってきた。いくらヒルデでも早すぎる。
「スグル、ここのトイレには便器がないぞ(;'∀')!」
「え!?」
甲冑姿で前を押さえるヒルデは可笑しいんだけど、笑っている場合じゃない。
ヒルデといっしょに走ってトイレを確認する!
「そうか、エマのイメージは便器にまでは及んでいないんだ……」
「そうだったのか……て、納得してる場合じゃないぞ(;〇∀〇)!」
「分かった、すぐに出してやるから!」
指を振って個室にウォシュレット音姫付きを設置してやると、返事もしないで戦乙女は音を立てて個室のドアを閉めた!
ガチャピン!!
音など気にしないヒルデなので、俺はそそくさとトイレ前の廊下に避難した。
数秒経って、俺とヒルデはトイレの内と外でいっしょに声を上げた!
「『分かったあ!!』」
トルクビルトのやつ、トイレを探しているんだ!
☆彡 主な登場人物
・鈴木 秀 三十路目前のフリーター
・ブリュンヒルデ ブァルキリーの戦乙女
・エマ バンシーのメイド
・女神 異世界転生の境に立つ正体不明の女神
・ハンス・バウマン ズィッヒャーブルグのギルドマスター
・フンメル 西の墓地に葬られている一万年前の勇者
・カルマ フンメルとパーティーを組んでいたエルフの魔法使い
・トルクビルト ズィッヒャーブルグの幻影魔法士(娘:ビアンカ、カリーナ)
・秀の友人たち アキ 田中
・魔物たち ガイストターレン




