040:ウンターヴェークス混浴場前の大乱闘
待ての勇者と急ぎの姫騎士
040:ウンターヴェークス混浴場前の大乱闘
しまった!
分かった時はもう遅かった! エマは他の入浴客といっしょに風呂を上がって足早に脱衣所に向かう!
ツルン
老人の入浴客が二人滑って倒れた!
「チ!」
舌打ちはするが老人に駆け寄るヒルデ。
まずは年寄りの介抱だ。ヴァルキリーの戦乙女、仁義は心得ている、弱き者を見捨てることはしない。
「スグルはそっちを!」「お、おお」
ウ(#△#)
一瞬、怯んでしまう。
ヒルデは老人、俺は老婆。老婆は仰向けに倒れて湯浴着が胸までめくれ上がっていやがる(#-_-;)。
「お婆さん、いま起こすからね」
よいしょっと、介護職員のように起こしてやると、ヒルデもおじいさんを助けて……抱きつかれている。
「うふふ、どうもありがとうね(#*´ω`*#)」
こっちは頬を染めて照れる婆さん。ヒルデもニヤニヤの爺さんに抱き着かれて、二人ともトゥルクビルトの呪縛からは解けていやがる。
「お婆さん、あとは自分でやって!」
名残惜しそうなお婆さんを引きはがして、脱衣所へ!
わ(# ゜Д゜#)!?
入浴客たちは湯浴着を脱ぎ捨てて、トゥルクビルトから揃いの討伐隊のコスをもらってるところだ。
十字軍のに似ているが、胸のマークは十字ではなく、Tの下に剣が交差している。脱衣所の出口には剣や斧、槍やロッドなどが並べてあり、魔王討伐部隊ができあがる寸前だ!
う……(#▫#)
スッポンポンで、お尻を向けているエマが目に入る!
「取り込まれてる、トゥルクビルトを確保するぞ!」
言うが早いか、ヒルデは入浴客をかき分け、トゥルクビルトに飛び掛かる!
「わ( ゜Д゜)!?」
術にかかっていない俺たちにビックリしたトゥルクビルトは、素早く外に飛び出した!
「「待て!!」」
ヒルデと声をそろえて飛び出す!
グヌ!
外には、すでに術にかかった湯治客たち。完全に討伐隊になり果ててやがる!
ズチャ!
俺たちを見ると、いっせいに得物を構えやがる。
力はともかく、装備を付けて武器を持てばイッチョ前の討伐隊。これも一種のコスプレ、トルクビルトの術もすごいんだろうが、コスプレの威力なんだと感心したぜ。
十年ちょっと前、ブルーのTシャツに袖をぶっち切ってオレンジ色に染めたツナギ。初めてのコスプレでカメハメハを決めた時の高揚感を思い出す。
これだけの人数に幻術をかけるんだ、まずはカタチなんだと、この幻影魔法士は心得てやがる。
トルクビルトを囲んでいるのは、やつが例外的に入っていった男湯の格闘家たち。他にも、有能そうなのもチラホラ、奴が質と量の両方を考えて集めていることが分かる。
大した奴だ……いや、感心している場合じゃねえ。
「時間をかけていては逃げられる、縦横に走り回って隙を作るぞ! スグルは右! わたしは左からいく!」
「おお!」
応えると同時に走り出す! ヒルデは左……と思ったら、左へは一瞬だけで、縁石に足をかけると逆方向に飛んだ!
つまり、俺を追いかけて比較的手薄になった敵の左翼に飛び込み、ほとんど素人の集団を蹂躙しながら中央に突撃!
ヒルデの予想外の動きに動揺して、右翼にも隙ができ、俺もヒルデの五割り増し時間をかけて中央へ!
ドゲ! ボク! ボコボコ! バコ! ドゲシ!
一発入魂の気合で進む!
格闘家ばかりなので力は強いが、俺たちも魔物退治で場数を踏んでいる。それに、格闘家たち、打撃力は大きいが、瞬発力が無い。トリッキーに動かれると、なかなか狙いが定まらず空振りも多い。
俺が3人、ヒルデが5人ぶちのめして隙ができた!
「スグル、エマを!」「わかった!」
ヒルデの声に俺は、エマに振り返る。
振り返ると……なんということだ、視界に入る討伐隊の全員がエマになっていた(⊙_☉)。
なんだこれは……?
ドッゴーン!
瞬間、天地がひっくり返った。
呆然とした一瞬に、俺は凄まじい蹴りを食らって空中で一回転、次の刹那、地面に叩きつけられてしまった……。
☆彡 主な登場人物
・鈴木 秀 三十路目前のフリーター
・ブリュンヒルデ ブァルキリーの戦乙女
・エマ バンシーのメイド
・女神 異世界転生の境に立つ正体不明の女神
・ハンス・バウマン ズィッヒャーブルグのギルドマスター
・フンメル 西の墓地に葬られている一万年前の勇者
・カルマ フンメルとパーティーを組んでいたエルフの魔法使い
・トルクビルト ズィッヒャーブルグの幻影魔法士(娘:ビアンカ、カリーナ)
・秀の友人たち アキ 田中
・魔物たち ガイストターレン




