039:混浴露天風呂
待ての勇者と急ぎの姫騎士
039:混浴露天風呂
とりあえず宿をとる。
たいていの宿には温泉が付いていて、コンセプトというかスタイルはさまざま。
テルマエ・ロマエのようなローマ風の大浴場もあれば、ハワイの溶岩風呂、和風の温泉風。その和風も鄙びた田舎風呂から昭和のレジャーランド風、都心の大衆温泉風まで様々。
トゥルクビルト一行は、その中でも珍しく自前の温泉を持っていない民宿風に泊っている。
民宿風は自前の温泉を持っていない代わりに、ウンターヴェークス中の温泉を回れるパスをくれる。このパスはどこの宿でも手に入る。フリーパスと回数券のがあるんだが、トゥルクベルトは割増を払ってフリーパスで周っている。
大小100ほどもある温泉を周るのは精力的に周っても二か月はかかるだろう、魔王討伐が目的のパーティー、ちょっとそぐわない。
——なにかある——
そう睨んで、俺たちは昭和のレジャーランド風に宿を取りながらも温泉パスを買った。
「あ、今度はこっちの温泉に来るようでございます」
モニターを見ていたエマが両手をグーにしてコクコク頷く。見た目は十七八の美少女メイドなのに、保育園児のようにコクコクするのは反則的に可愛い。だけど、ヒルデがばい菌を見るような目で見るので「いくぞ」と声を上げるだけで、サッサと先に行く。
奴らは、たいてい混浴の大浴場に向かう。混浴用の水着やら貫頭衣のような湯浴着を身に着けるので、エマもヒルデもそれほどの抵抗もなく付いてきてくれる。例外的に男風呂に行ったときは、さすがに俺一人で入ったが、どこかの格闘家の御一行が入っていて、人生初めて男風呂で引け目を感じた。
トルクビルトは着やせするタイプなのか、格闘家たちに混じっても遜色がなく、そのスポーツ刈りの頭とあいまって昭和の昔、切腹して果てた文豪を思い出させた。
学校のプールほどの露天風呂は、老若男女合わせて50人ほどが入っていて、ヘルスセンターのように賑わっている。湯浴着を着ていることもあって、今日で四日目になる温泉に半ば寛いでしまった。
「ウンターヴェークスというのは途中という意味でございますが、この温泉町のウンターヴェークスは——人生の途中、温泉につかって英気を養え——と神さまがおっしゃっているようでございます」
エマにしては珍しい軽口めいた言いように、頬が緩んでしまう。
自分の言いようが可笑しかったのか、フフフ( *´艸`)と笑うと貫頭衣のような湯浴着がホワホワ、胸の谷間がチラチラしてけしからん(^^;)。
「ちょっと怪しい……」
ヒルデが見抜いたようなことを言うので、危うくお湯を飲みそうになる……が、そういう意味ではなかった。
「やつら、風呂の四隅に散っている、おかしいぞ……」
「最初は、あちらでかたまっていました……」
ジジジジ……
どこかで電子レンジが稼働したような音がする。
「奴が、幻術を使い始めているぞ……」
「うん、静かに出よう……悟られないよう、別々に……」
ヒルデが最初に右の方に上がり、数秒おいて左から俺が、そして……エマは続いては来なかった!
☆彡 主な登場人物
・鈴木 秀 三十路目前のフリーター
・ブリュンヒルデ ブァルキリーの戦乙女
・エマ バンシーのメイド
・女神 異世界転生の境に立つ正体不明の女神
・ハンス・バウマン ズィッヒャーブルグのギルドマスター
・フンメル 西の墓地に葬られている一万年前の勇者
・カルマ フンメルとパーティーを組んでいたエルフの魔法使い
・秀の友人たち アキ 田中
・魔物たち ガイストターレン




