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038:ウンターヴェークス は温泉で有名

待ての勇者と急ぎの姫騎士


038:ウンターヴェークス は温泉で有名





 全ての町や村にギルドがあるわけじゃない。


 メイド喫茶やオタクのショップがどこにでもあるわけじゃないのと似ている。


 世の中には、メイド喫茶やオタク文化とは無縁に生きている人も多い。東京ビッグサイト、年二回のコミケはめちゃくちゃ有名で、一回で50万人もの参加者がいる。でも50万。有名な神社なら正月の三が日で集めてしまうし、そういう規模の神社は日本中にあって初詣以外にも例大祭やらのお祭りで賑わう。他にも大小の神社がコンビニの数よりも多く、全部合わせると、年間で数千万人、いや数億人の参詣者になるだろう。


「 ウンターヴェークス (Unterwegs)というのは温泉で有名なようでございます」


 エマが案内本のページを示して目を輝かす。


 ズィッヒャーブルグで仕入れたんだろうけど、読んでいるところを見たことがない。おそらく、俺たちの世話の合間に読んでいるんだ。褒めてあげたい衝動に駆られるが、褒めたら絶対顔を赤くして照れる。褒めるよりもエマの情報を活用してやることだ。


「怪我人や病人が多いのか?」


「いいえ、単に温泉に入って楽しむためのようでございますよ。風呂上がりにビールを飲んだり寝そべったり、中には卓球をしている人たちもいて、楽しそうにしています」


「まあ、魔物退治で怪我をする者もいるだろうから、ヒルデが言うように治療の者もいるかもな」


「ふむ……」


 戦に明け暮れていた戦乙女だ、治療以外の温泉利用というのはピンとこないのかもしれない。


 そう言えば、グズルーンと言い争ったのは川でシャンプーをしている時だと言っていた。こいつら、シャンプーや風呂は川とかで済ましているのかもしれん。いやいや、ズィッヒャーブルグでは普通に宿の風呂に入っていたぞ……エマは、少し楽しみのような……いろんなご主人様に仕えてきたから、温泉趣味のご主人様とか居て温泉の楽しさを知ってる?……いかん、二人の風呂上がり姿が浮かんできた!


「あら?」


「どうした、顔が赤いぞ?」


「え、あ、夕日の照り返しだろ(^^;)」


 すっとぼけて、思考を戻す。


 ドルフ(村)でありながらシュタット(街)の規模と賑わいがあるところを見ると、ウンターヴェークスとその周辺は温泉を楽しむ文化があるのかもしれない。 では、トルクビルトがウンターヴェークスに立ち寄るのは……


「あ、ウンターヴェークスが見えてまいりました!」


 エマが指さす道の向こうに何本もの湯けむりが見えてきた。


 


☆彡 主な登場人物


・鈴木 すずきすぐる    三十路目前のフリーター

・ブリュンヒルデ         ブァルキリーの戦乙女

・エマ              バンシーのメイド

・女神              異世界転生の境に立つ正体不明の女神

・ハンス・バウマン        ズィッヒャーブルグのギルドマスター

・フンメル            西の墓地に葬られている一万年前の勇者

・カルマ             フンメルとパーティーを組んでいたエルフの魔法使い

・秀の友人たち          アキ 田中

・魔物たち            ガイストターレン

 

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