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036:受付さんの依頼は幻影魔術師のことだった

待ての勇者と急ぎの姫騎士


036:受付さんの依頼は幻影魔術師のことだった




『ズィッヒャーブルグのトルクビルト(Trugbild)さんをご存じでしょうか?』


「トルクビルト…………ああ、幻影魔術師?」


「剣士でもあったな」


「二人の子を残して……魔王討伐に出た方でございます」


 ズィッヒャーブルグの北門を出たところで幻影を見せられてひどい目に遭った。犯人を捕まえてみると、まだ幼い姉妹の仕業だった件(018:幻影魔法の姉妹)だ。その父親がトルクビルトという名前だった。


『はい、そのトルクビルトさんがパーティーを組まれて、あ、みなさんの前にそっちの森に向かったパーティーです』


「あ、あの四人連れの方たち…………え?」


 言葉の途中でつまづくエマ。


 感じのいい若者たちのパーティーだった。その印象が俄かには子捨て魔術師とは結び付かないんだ。


「……なにかあるのだな、その四人組」


 ヒルデの目が鋭くなる。


『戻ってこられてから気づいたんですが……あ、クエスト自体はきちんとこなしてこられました』


「ほう、若いのになかなかではあったんだな」


『ガイストターレンの二級下の魔物です。トルクビルトさんを除いてC級の方々でしたので』


「で、気づいたことって?」


『実は、トルクビルトさん以外は、なんと申しましょうか……幻影なんです』


「「「幻影!?」」」


『気が付いたのは、魔石を換金した後だったんですが……とたんに端末の具合が悪くなって、たった今回復したところだったんです』


 眉を曇らせる受付さん。取引先の粉飾決算に気づいた営業部長みたいに深刻そう。


「えと……幻影に魔物退治ができるのか?」


 さっきまで、ガイストターレンの『わが谷は緑なりき』の幻影をぶち壊していた。


 魂魄化したガイストターレンはやっかいな魔物だったけど、偽装された、それこそ粉飾決算のような谷の風景やオブジェクト自身には抵抗力はない。アキバとかの懸垂幕やターポリン幕は華やかだ、アニメのヒロインだったり、ラノベの騎士や女戦士だったり。そいつらは、台風が来たりすると破けてしまうし、火が点いたら、あっという間に燃え上がる。ついこないだも、道頓堀でビル二つが全焼しちまったしな。まして、そいつら幻影に攻撃力があるはずがない。


『実は、トルクビルトさん以外の三人はガイストターレンに挑戦して逃げてきた人たちなんです』


「え?」


「なんだと!?」


「どういうことだ?」


『それが……』


「逃げきれずに死んだ奴ら……」


「ということは、アンデッドでございますか!?」


「それはない。アンデッドなら見るからに死人、あんなに生き生きしてはおらんぞ」


『ヒルデさんのおっしゃるとおりです、わたしもギリギリまで気が付きませんでしたから』


「放置しておくとまずいんだな……?」


 取引先の粉飾決算に気づきながら取引するようなもんだ。早く手を打って損切りするとかしないと、こっちまで大やけどしてしまう。


『トルクビルトさんの幻影魔法は危険です。彼自身、ずっと冒険の旅に出たくて、その……お子さんたちをズィッヒャーブルグの街に残したまま出てこられましたでしょ……』


 そうだ、ビアンカ・カリーナの姉妹を捨てて出ていきやがったんだ!


 子供でもあれだけの幻影魔法が使えた、親父のトルクビルトは相当なもんだろう。


『お察しの通りです。放置していては、あの三人の幻影はどう変化するか分かりません。あのパーティーを追いかけて、あの幻影たちを元の世界に返してやってください。放っておけば、必ずこの世界の災いになります』


 ピーーーヒョロローーー


 トンビがのどかに鳴いて、少し冷たい風が頬を撫でていく。この世界に来て季節を意識したことは無かったけど、ひょっとしたら冬が近いのかもしれない。


「やるなら雪が降る前だな」


「ヒルデさま」


「向かった先は同じ北方だ。放っておくと俺たちにも障害になるだろう」


『ありがとうございます!』


「手に余るようなら、放って北に向かう。その時は別をあたってくれ。どうだ、スグル?」


「ああ、エマも、いいかい?」


「はい、わたしはお二人に付いていくのみです」


「これでいいか?」


『はい、この先ハイデベルグまでは道のギルドはございませんので、ご注意ください』


「ハイデベルク?」


「この先120キロのところです。急いで三日というところでございましょう」


 さすが、エマはチェックが早い。


「じゃあ、とりあえず行こうか」


『よろしくお願いいたします』


 モニターの受付さんに見送られて、俺たちはハイデベルグを目標に進んだ。


 

 

☆彡 主な登場人物


・鈴木 すずきすぐる    三十路目前のフリーター

・ブリュンヒルデ         ブァルキリーの戦乙女

・エマ              バンシーのメイド

・女神              異世界転生の境に立つ正体不明の女神

・ハンス・バウマン        ズィッヒャーブルグのギルドマスター

・フンメル            西の墓地に葬られている一万年前の勇者

・カルマ             フンメルとパーティーを組んでいたエルフの魔法使い

・秀の友人たち          アキ 田中

・魔物たち            ガイストターレン

 

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