034:ガイストターレン・6・わが谷は緑なりき・4
待ての勇者と急ぎの姫騎士
034:ガイストターレン・6・わが谷は緑なりき・4
「お二人とも、谷を壊してください!」
「え?」
俺は訳が分からず一瞬停まってしまったが、ヒルデは一瞥をくれただけで、再び少女に打ちかかる!
少女は例によって、簡単に躱しながらエマに攻撃を加える!
「させるか!」
俺は少女の前に飛ぶ!
チュイーン!
ダメかと思ったが、エマの頭上に迫ったところでからくも弾き返せた!
こいつ、動揺してる? 瞬間だけど少女の眉間に焦りが見えた?
ドッガーン! グァッシャーン!!
その間、ヒルデは小屋や、お花畑、立ち木などを、その礎石や根を生やしている地盤もろともに壊しまくる。
「やめろ! やめて! 谷を壊すのはやめてーーー!」
そうか、こいつの弱点は谷そのものなんだ!
弱点と分かると容赦はない。俺も反対側の谷のあれこれを無慈悲に壊しまくる!
グァッシャーン!! ドッゴーン! メキメキ! バキバキ! ドッガーン!
「やめて! やめて! やめてーーーーー!」
守勢に回るとオロオロ飛び回るだけしかできなくなる少女。エマもストレージから爆薬を取り出しては、あちこちに投げまくる。
ドッカーン! ドカドカドッカーーン!
「あ、あ、ああああ((⒳□⒳))!」
攻撃が三者になって手の付けられない少女だ。
もしここに、無垢の第三者がいたとしたら、大人三人がいたいけない少女の花園を壊しまくっているようにしか見えないだろう。
しかし、こいつは、そんな殊勝な少女なんかじゃない!
ガイストターレンのエリアボスだ!
「えい!」「オリャーー!」「セイ!」
ドッゴーン! メキメキ! バキバキ! ドッガーン!
「「「トドメエエエエ!!!」」」
最後は三人そろって谷の中央、ユグドラシル(北欧神話の世界樹)のような巨木を粉砕して、谷は静寂を取り戻した。
少女は煮干しのリカちゃん人形のように縮んだ姿で転がり、その煮干しも、三人が着地した風で粉々に崩れて吹き飛んでしまった。
「これは、谷が作り上げた操り人形のようなものだったんでございましょうね……」
「ああ、谷は自分を守るために、迷い込んだ人や魔物をゴーストに変え、そのゴーストたちに戦わせていたんだ……谷そのものがゴーストの親玉だったとは、この世界も闇が深い」
我は谷緑なりき……古い映画のモジりが浮かんだが、センスがないので飲み込む。
「ヒルデ」
「なんだ」
「……あ、いや、先を急ごうか」
戦いの最中、ヒルデと少女が交わした言葉が気になった。だが待て、ヒルデの心もかなりささくれ立っているように見える。戦いが終わったばかりの道行、聞いていいことではないのだろうと前を向く。
「あ」
「おお」
「やっぱりな」
足を踏み出すと、谷は元の窪みに戻って、あちこちに取らずじまいだった魔石が転がっている。
「残さず回収しましょう!」
取れる限りの魔石を回収して、俺たちは道のギルドに戻った。
☆彡 主な登場人物
・鈴木 秀 三十路目前のフリーター
・ブリュンヒルデ ブァルキリーの戦乙女
・エマ バンシーのメイド
・女神 異世界転生の境に立つ正体不明の女神
・ハンス・バウマン ズィッヒャーブルグのギルドマスター
・フンメル 西の墓地に葬られている一万年前の勇者
・カルマ フンメルとパーティーを組んでいたエルフの魔法使い
・秀の友人たち アキ 田中
・魔物たち ガイストターレン




