030:ガイストターレン・2・深くなった谷底
待ての勇者と急ぎの姫騎士
030:ガイストターレン・2・深くなった谷底
あ、あぁ…………………(゜△゜)(゜o゜)(゜□゜)
はるか頭上になった大地の切れ目を見上げてため息をついてしまった。
一つ一つは大したことないけど、数だけはめちゃくちゃ多いゾンビやアンデッドやスライムをやっつけた。そして「念のためにどうぞ」とエマがくれたポーションをグビグビ飲んでいると、それほどではなかった谷がズンズンと深くなっていく。
それまでは、秋葉原の駅を出て空を見上げた感じの谷だった。
後ろの駅舎と目の前のソフマップやラジ館に挟まれた道路に立ったような感じ。かつて一世を風靡した妹系ラブコメで主人公の妹が「アッキハバラ~~(^▽^)!!」と感激の声を上げたのと同じ高揚感さえ感じていた。
いよいよ、エリアボス! でも、どうせ大したことはない。そんな感じ。
何万というゾンビやアンデッドやスライムをやっつけ、消費したHP・MPは二割程度で、それを補って余りあるエネルギーをポーションで回復したところだ。
矢でも鉄砲でも持ってきやがれ!
それが、ポーションを半分飲んだあたりから、前後の崖というか谷壁というかが、みるみる高くなる。谷はいや増しに深くなり、まるで、東京都庁とサンシャイン60が並び立って、その狭間に落とされたような感じになった。
「……これは……戻れないかもしれません」
エマが冷静に、でも絶望的な呟きを漏らした。
「「「………………………」」」
「不吉なことを申しました、申し訳ありません(-_-;)」
「なに、勝ちさえすればいいんだ勝ちさえすれば…………多分」
ヒルデも微妙なことを言う。
「と、飛べたじゃないか。ほら、ズィッヒャーブルグで魔物が夜襲をかけてきたとき、宿屋の窓から飛んで行ったじゃないか!」
「あれは水平方向にだ、この高さは超えられん」
「そ、そうか……」
「フンメル様なら……」
「ああ、忌み地の墓場からズィッヒャー川まで飛んだんだったな」
「いないやつの話をするな」
「申し訳ありません(-_-;)」
くそ、なにかプラス思考で励まさなければ。
「ええと…………こういう地形を漢字で書くと『谷』なんだがな、こういう風に書く」
石ころの先で地べたに『谷』と書く。
「なんだか、上から塞がってくるような字だけどな。よく見ると、下の方に口がある。この口は出口、解決の糸口だ」
「なるほど、さすがです、スグル様!」
「あはは、ようは気持ちの持ちようということなんだけどね。さ、とにかく、前に進もうじゃないか」
谷のたとえ話は、営業の先輩から聞いた話だ、そんなに営業成績のいい人じゃなかったけどな。
「そうだ、そうだな。とりあえず、風が流れてくる方角に進もうか」
「風は、こちらから吹いてくるようでございます!」
「「よし!」」
パンパン
マントやお尻の砂埃を払って、とりあえずは、谷底を風の吹いてくる向きに進む三人だった。
☆彡 主な登場人物
・鈴木 秀 三十路目前のフリーター
・ブリュンヒルデ ブァルキリーの戦乙女
・エマ バンシーのメイド
・女神 異世界転生の境に立つ正体不明の女神
・ハンス・バウマン ズィッヒャーブルグのギルドマスター
・フンメル 西の墓地に葬られている一万年前の勇者
・カルマ フンメルとパーティーを組んでいたエルフの魔法使い
・秀の友人たち アキ 田中




