026:粗忽の女神に雨が降る
待ての勇者と急ぎの姫騎士
026:粗忽の女神に雨が降る
「こ、これは実体ではないの……よ……な……謎かけ魔物 リーツセルの罠の中だから、わ……わたしも映像でしか、で……出てくることが、で……できなくて……」
ボヤ~~ボヤ~~~カクカク~~~
なるほど、解像度もフレームレートもボヤボヤカクカクのCGみたいだ。
「でも、なんで、そんなに苦しそうなんだ。なにか、必死で引っ張り上げているように見えるけど」
「手伝ってやろう」「わたくしも」
ヒルデとエマが手を貸そうとするが、伸ばした手は女神の体と重なってしまうというかすり抜けてしまう。
「いや、だから、映像なんだって……」
「そうか……で、なにを引っ張り上げてるんだ?」
「アキよ、スグルの後輩のぉ……」
「え、アキ?」
「ええと……来週、た、誕生日でしょ、さ、三十歳の……」
いやなことを思い出させる(-_-;)。
「それを思い出したアキちゃんがね……あなたのお誕生会をやろうって、お、追いかけた……のよ」
そ、そうだ、運命の三十歳は来週だった。こんな異世界でウロウロしてる場合じゃないんだ。トイレの修理だってあるし……。
「それで、スグルを追いかけ……スグルが落ちた穴、まだ閉じてなくて……」
「え?」
「その穴に落っこちゃって……」
「え、その下にアキが!?」
「う、うん……」
そこまで話すと、女神の目に涙……と、ほんの0.5秒感動したら、違った。アキバではにわか雨が降ってきたようで、たちまち女神は濡れそぼっていく。
「あ、女神さま、溶けて……(ŏ﹏ŏ)」
エマが心配の声を上げる。
「あ、マスカラが~~」
「女神がマスカラつけんのかよ!?」
ザザーーーーー!
勢いを増してきた雨に、ずぶ濡れの女神。
「線状降水帯だねぇ、これはぁ~~~(^^;)」
「あ、どうぞ傘を!」
心底からのメイドなんだ、エマはストレージから傘を出して差し掛ける。
「ありがとう……でも、これは3Dの画像だからね……」
差し出した傘をシャワーのような雨が突き抜けていく。
「あ、手が滑るぅ……」
「おい、女神、その手を離すな!」
女神の手の先にはアキが居る。あの穴の下は異世界……いや、その前の女神との出会いの空間……だったら、まだ大丈夫か。
「あ、ああーーーーー!」
「おい、女神!?」
「ごめん、手が滑っちゃったぁ……(^^;)」
「おい、女神!」
いたたまれないのか時間切れなのか、女神は無数のポリゴンが結合を失ったようにボケて消えてしまった。
「あの女神、相当な粗忽ものだな……」
同性に対しても容赦ない戦乙女。
「なんの手助けもしてあげられませんでした……」
それに引き換え、エマの優しさは天然のメイドだ。力を落としながらも、無駄になった傘をクルクル巻いてストレージに戻す。
ん…………?
そ、そうか!
リーツセルの謎が解けた!
☆彡 主な登場人物
・鈴木 秀 三十路目前のフリーター
・ブリュンヒルデ ブァルキリーの戦乙女
・エマ バンシーのメイド
・女神 異世界転生の境に立つ正体不明の女神
・ハンス・バウマン ズィッヒャーブルグのギルドマスター
・フンメル 西の墓地に葬られている一万年前の勇者
・カルマ フンメルとパーティーを組んでいたエルフの魔法使い
・秀の友人たち アキ 田中




