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014:バンシーのエマ

待ての勇者と急ぎの姫騎士


014:バンシーのエマ





「キミは、昨夜の!?」



 あのメイドだ!


 魔物が襲ってきた時、荷馬車の砕けの下で震えていた。昼間は主人の排泄物を堀に捨てに行かされていた。いや待て。夕べは俺たち同様、血や泥、魔物の体液にまみれてドロドロだったぞ。こんな、たったいまコスプレの準備ができましたってきれいな状態じゃなかったぞ!


「お察しの通り、昨夜の襲撃で生き残ったメイドです。明け方、城門まで様子を見に行って発見して、引き取ってきたんですが……びっくりしました。冒険者をやっていたころの仲間の娘だったんです」


「ええ……」「ほう……」


「エマと申します」


 目線を合わさず、この場で必要な最小限の名乗りをする。


「母親はバンシーで有能なメイドでした。いつもパーティーの食事や身の回りの世話をしてくれていまして、快適な旅ができたのはエマの母親のお蔭でした。どうでしょう、ごいっしょに連れて行ってはいただけませんでしょうか」


「この娘をか……?」


 ヒルデはなんか嫌っぽい。


「ええ、家事スキルと収納スキルに秀でております。インタフェイスをお見せして」


「はい」


 小さく応えて開いたそこには、こう出ていた。


 家事スキル(総合)8  収納スキル8


「え、8?」


「あ、失礼しました」


 わずかに頬を染めたかと思うと、小さく指を動かして表示が変わった。


 コトン


 アニメだったら、そういう音がするだろうという感じで二つの8が横倒しになった。


 ∞ ∞


「「ん……?」」


 恥ずかしそうに横倒しになった8をオレもヒルデもすぐには理解できなかった。


「ひょっとして…………無限大記号?」


「はい、インタフェイスを覗き見されると、レベルが分かってしまうので、普段は縦にしているんだそうです」


 本人は頬を染めるばかりなのでギルマスのバウマン氏が頷いて説明を続ける。


「本人が理解したものなら、たいていのことはやってのけます。そちらの世界の『AI』に似ているかと思います」


「ストレージの容量はどれほどだ?」


 ヒルデが聞く。オレはトラック一台分ほどだから、同じくらいあると助かる。


「はい、124万立方メートルほどです」


 これは本人が答えた。


「124万……」


 ヒルデはピンとこないようだが、オレはすぐに分かった。営業でまわった時によく例えに出てくる数字というか単位だ。


 124万立方メートルとは……東京ドーム一個分だ!


「なんだ、無限大ではないのか?」


 ヒルデが意地悪を言う。


「それは……」


「入れるだけならいくらでも入りますが、必要に応じて出すには、相応の検索能力が要ります。それも学習によってアップデートできますが、その間は他のことができなくなります。素質的には無限大だそうです」


 そうなんだ。


「フム、役に立つかもしれんなあ」


 意地悪を言ったわりには、その気になっている。


「どうだ、スグル?」


「ちょっと待ってくれ」


「なんだ」


「……連れて行ってもギャラは払えないぞ」


 これから装備も整えなきゃならない、当面困ることは無いだろうが、人件費とかは想定していない。


「給金の心配をしておいでですか?」


「アハハ、まあ(^_^;)」


「お二人ほどの力があれば、いくらでもクエストをこなせるでしょう。それに、エマに関しては給金の必要はありません」


「え?」


「バンシーは、お仕えしている相手や家の幸福を糧としています。お二人の旅に目的や遣り甲斐がある限り、エマは幸せです。他には何もいりません」


「よし、決まりだな!」


 ヒルデが即断し、エマの頬にいっそう紅みが増す。


「ちょっと待ってくれ」


「なんだ、待ての多い奴だな」


「え、あ……うん、まあいいか(・ω・)」


 ニコ(⌒∇⌒)


 嬉しそうに顔をほころばせて頭を下げるエマ。


「よろしくお願いいたします、スグル様、ブリュンヒルデ様」


「あ、あ、よろしくな」


 二回目に躊躇したのは…………な……ないしょだ!


「スグル様、ブリュンヒルデ様」


「うん?」「なんだ」


「そのお召し物のまま冒険に出られるのですか?」


「え?」「ああ……」


 俺はカットソー、ヒルデはセーラー服のままだ。


「昨夜の戦いで汚れたもんでなあ、スグルもわたしもストレージの中だ」


「では、お洗濯いたします。お預かりしてよろしいですか?」


「あ、ああ」「うん」


 ストレージを出すと、あっという間に装備がエマのストレージに移動。洗濯のアイコンだろうか、グルグルマークが出て、二秒ほどで、こっちのストレージに戻ってきた。


「「早い!」」


「汚れて、まだ時間がたっておりませんので」


 なるほど、エマのメイド服が新品コス同様だったのは、このスキルなんだ!


「では、ここでお召し替えを。わたしは事務所の方に行っております。エマは?」


「部屋の外でお待ちしておりますが、その間に、お二方の魔石を換金しておきたいと思います」


「あ!」「忘れていた!」


 昨夜は下級だけどもけっこうな魔石が手に入ったんだ。ストレージから魔石を出して渡す。


「それでは、受付の方に行っております」


 エマとギルマスが部屋を出ると、サッサと服を脱ぎだすヒルデ。


 そうだ、ヒルデは着替えなんか気にしないんだった(#^_^#)。注意したら、またイジられそうなので、背中を向けただけで、オレもサッサと着替える。


 フロアーに戻ると、さっきの受付嬢が戻って来ていて、エマに換金したギルを渡すところだ。


 ウフフ


 エマがほくそ笑んだ。


 ギルを受け取って訳を聞くと、登録前と後では、引き取り価格が3割も違うという話だった。




☆彡 主な登場人物


・鈴木 すずきすぐる    三十路目前のフリーター

・ブリュンヒルデ         ブァルキリーの戦乙女

・エマ              バンシーのメイド

・女神              異世界転生の境に立つ正体不明の女神

・ハンス・バウマン        ズィッヒャーブルグのギルドマスター

・秀の友人たち          アキ 田中


 

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