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第五十六話 『新崎逸釆』




「──は?」


 驚愕の一言に、絶句した。


「────」


 ……辞退? は? 何言ってんだよ、こいつ。

 最初に俺と三芳に勝つって、お前そう言ってたよな?

 一体何がどうなって、


「まず最初に、俺に投票してくれた人たち……本当にすいません。身勝手な真似をすること、反省してます……」


 皆川はマイクの置かれた机の横に立ち、深く腰を折って謝罪の言葉を口にした。

 声量はあまり大きくない。しかし、静脈に包まれた体育館内には十分響き渡る声だ。


 頭を上げて、再びマイク台の前に皆川は立った。


『申し訳ないけど、ここからは素で話させてください。……最初はさ、俺だって新崎にも三芳にも勝つ気で生徒会長選に臨んだんだ』


 素で話すと言った言葉通り、全身の緊張感を解き、敬語ではなくタメ語に変えた。それも、まるで友人と会話するかのように。

 ──誰かに、理由を話すかのように。


『一番手が俺だったから、考えに考えた最高の演説で最初に強い印象付けをしたかった。……でも無理だった……三芳も新崎も、両方とも俺なんかと比べ物にならない凄い演説をした。痛感したよ。──才能と実力の差を』


 最後の一言は、自分を最大限馬鹿にするかのように力強く自嘲しながら言った。

 そしてもう一つ、俺はあることに気がついた。

 ──皆川が俺を、()()と呼んでいる。


 理由はなんとなく察している。俺との関係を断絶するためだろう。

 一度裏切った人間に手を差し伸べたが拒否し、尚且つ同じ戦場で戦うと決めた相手に勝つのは無理だからと諦め、逃げた。

 そんな相手と、この先関わっていいはずがない。そう考えているのではないだろうか。


 俺の考えている通りだとしたら、お前は筋金入りの馬鹿だ。


『俺じゃ届かない、仮に生徒会長になっても学校をまとめられない……ただ先生からの指示を受けるだけに、終わると思う』


 諦めきり、ひどく弱った状態で皆川は言った。


『改めて俺に投票してくれた人たち、ありがとう、そしてごめんなさい……』


 静まり返る体育館。まるで別の空間にいるかのような感覚になるほど、ただ静脈に包まれていると言うには恐ろしく静かだ。


『こんな俺の話なんて、もう聞きたくもないだろうけど……最後に一つ、俺に投票してくれた人たちにお願いしたいことがある』


 下げた頭を上げて、背筋を正し腰に手を当てたままま、



『──新崎逸釆に、投票してくれ』



 …………………は?


『新崎のことは、散々本人と本人の友達の口から話されてるから多くは言わない。色々な噂が立って、一年の時とは真反対の存在になった……俺も、裏切った一人だ』


「────」


『そんな奴が掌返したみたいにはなるけど……良い奴なんだよ、逸釆は……』


 苗字ではなく名前で、確かに過去に友人であったかのように皆川は言った。


『みんなはさ、一回でも逸釆に確認したか? 真実をさ。片方が言ったのを一方的に信じて、それが事実だって確定させて……俺も、そうだったんだ。でもさ、事件解決とか、いじめられてる子助けたりとか、危険な目に遭った友達のために死にかけながらも助けようとしたりさ……そんな奴だったんだよ、逸釆は。──誰かを傷つけるような奴じゃない、優しい男。それが新崎逸釆だ』


 皆川は言いきると同時、マイクの置かれた机の前に立ち、深く息を吸い込んでから続きを話し始めた。


「新崎逸釆は悪人なんかじゃない‼︎ 同学年は友達だった奴までどうして裏切った⁉︎ 関わったことない奴は知らないのに決めつけんなよ‼︎ 同じ部活ですらない他学年まで、逸釆を悪人だって決めつけるんだよ‼︎」


「……隆貴」


「証拠も出て、警察まで証言してるのにまだ疑ってる奴がいるなら、今すぐ考えを改めろ! ──頼むよ!! 新崎逸釆は悪人じゃないんだ!! 真に投票するべき相手を間違えるなぁあ!!」


 静脈を割るように、体育館に落ちた冷たさを熱くするように、皆川は俺のために全力で声を張り上げた。


 何の真似だよって、問い詰めようかと思ってた。

 壁に叩きつけて、詰問するつもりだった。

 ──目の前で本気で叫んでくれる相手に、そんなことできるわけがない。


「……話は、以上です……」


 ふらふらと立ち上がり、皆川は話を終えてステージ横へ戻ってきた。


「──っ」


「……して、やったよ。お前は勝たせない。──絶対に」


 微かに表情に怒りを宿して、三芳は皆川を睨む。だが、臆することなく逆に嘲笑ってみせた。

 三芳は更に怒りを増した様子で、ステージ上へ出ていった。


「────」


 項垂れて小さくなっている皆川。

 言葉をかけなければならないと思った。だが同時に、それは今じゃないと本能が訴えかけてきていた。


 今は言葉をかけず、かけるべきタイミングまで待つことにした。

 今しなければならないのは、三芳の演説がどう聞き手に印象付けるものになっているかを見ることだ。


「────」


 姿勢良く一礼し、三芳は前を向いた。

 しかしその表情は先程の苛立った様子でもなければ、完璧な自分を魅せている様子でもない。──露骨に悲しげな感情を全身から漂わせている。


『……実はその、まだ怖くて……』


 おいおい嘘だろ?

 こっちがその手を使わないで戦ってるのに、お前は易々と使うのかよ。


『数ヶ月前、私は信じていた男の子に──危害を加えられました……』


 俺が選んだ戦い方は、三芳芽亜に関する一切合切に触れることなく、地に落ちてから今日までの行いから俺が悪人だという認識は間違いだったとわからせるものだ。

 だが三芳は今、俺に暴力を振るわれたという嘘の事実に開幕から触れた。それは三芳の二回目の演説が、俺に暴力を振るわれ、以降何を思い、何をして休学から戻ってきたかを演説として使うことを示している。


 その内容を演説に使われれば状況をひっくり返されかねない。

 状況は最悪の一途を確実に辿っている。


『病院で目覚めた時、身体の痛みなんか全く気になりませんでした。胸が痛くて、苦しくて……心が焼けるような想いでした……』


「────」


『休学期間中、呆然自失のまま過ごしていた私を元気づけてくれたのが兄でした。怖がらなくていい、俺たち家族がついてるぞって言ってくれて……その時、弱ってはいられないと思い、頑張って学校に戻る決意をしたんです』


 今すぐに殴り込みに行きたくなるほど、憎悪に思考がかき乱される。

 一応、俺に暴力を振るわれた件を話さないと考えていたわけではない。使おうとしていた手が使えなくなったとなれば、最も有効的な手を使うのは誰だって当たり前のことだしな。

 三芳にとってその一手が、凄まじい力を有しているのだから最終手段には十分扱うに値する。


 だが、三芳は少なくとも俺と同じやり方で戦った上で敗北感を突きつけてくるものだとばかり思っていた。故に、俺に暴力を振るわれた嘘の事実を生徒会長選の演説では使う可能性は限りなく低いと踏んでいた。


 そこで考えられる可能性が一つある。

 一回目の演説での俺の予想外な票の獲得。

 二回目の演説での皆川の辞退、加えて俺の推薦。


 重なるイレギュラーな事態に、三芳はこのままでは勝利が危ういと判断した。

 つまり今の三芳には、余裕がない。慢心など、到底できる状態にないから、使わないつもりでいた手を使ったのではないだろうか。


『登校の再開日は、震えが止まらなかった。でも久しぶりに学校に来て、周りの友人たちの暖かくて優しい声で心配してくれたお陰でまた笑えるようになれて、今こうして生徒会長選に臨んでいます』


「────」


『裏切られたとしても、私は戦うと決めて、今ここに立っています。短くはありますが、演説はこれで終わります。一回目で、言おうと決めていたことは全て言いましたから。今日は私の本心を聴いて欲しかった。最後まで聴いてくださり、ありがとうございました』


 迫真の演技で生徒を魅了し、凄まじい拍手が巻き起こる。

 演説というより、何を思って何をしたかをただ話しただけだが、その効果は絶大だった。


 ──本気でまずい。


「──っ」


 奥歯を噛み、脳内で鳴り響く警鐘から意識を逸らし俺自身の演説をどうするべきか考える。


 用意しているのは二つ。

 片方は三芳と同じ演説ではなくただ『過去の出来事』を話すだけ?

 もう片方は、予め用意していた新たな演説。


 ……この場合、どっちが最適解だ?

 今の生徒と教師の過半数は、確実に三芳の偽の悪夢のような日々を完全に信じている状態にある。

 それは同時に、最後に演説する俺などもはや完全なる悪と決めつけられている状況が形成されたってことだ。


「──っ」


 どうすればどうすればどうすればいい!

 確実に勝利できるのはどっちだ!?

 いやそもそもこの二つのどちらかじゃ勝利できない可能性だって──、


『──頼むよ!! 新崎逸釆は悪人なんかじゃないんだ!! 真に投票するべき相手を間違えるなぁ!!』


「…………ぁ」


 十分ほど前の、皆川の声が頭の中に響き渡る。


 隣を見れば、皆川は今も項垂れている。

 初めは勝手な真似をしたことを咎めるつもりだった。けれど、石母田や東雲たち同様、俺のために本気で叫んでくれた。


 ──そんなことできるわけないって、そう思ったはずだろ。


 ああ、そうだ。

 できない。皆川を咎めるなんてな。

 だったら、何をすればいいかなんて簡単な話だろうが。


 俺は立候補者他二人よりも、かかってるモノが違う。

 背負ってる想いが違う。

 ──絶対に勝利してくれると信じ、願ってくれている人たちに応えるために俺は戦ってる。


「皆川」


「…………」


「いや、隆貴。──さっきはありがとな」


「ぅえ…………?」


「勝ってくる、お前の本気の叫びに応えるためにな」


 肩に手を置き、隆貴に笑いかける。

 すれ違う三芳は勝利を確信したような様子でこちらを見てきたが、その表情は俺を訝しむものへ瞬時に切り替わった。


 俺が、笑っていたからだ。


「────」


 騒がしい体育館を、一回目の演説の時同様、マイクでハウリングを起こして再び俺に意識を集中させる。


 演説に使う内容は決まった。

 焦る必要なんて初めからなかった。

 俺は──他の誰に負けることのない、強い願いを背負ってるんだからな。

 完全勝利を、目指すだけでいい。


『──七年前』





「………うそ」


「どうしたのよ、智音」


 正面、ステージ上に出てきた新崎が石母田にとって衝撃の単語を口にした。

 その事実に、思わず石母田は声を漏らした。


「柚葉ちゃんはまだ、知らないと思うけど……」


「ん?」


「新崎くんは七年前…………担任の先生に体罰を受けたことがあって」


 新崎逸釆は七年前、つまり小学五年の時に担任教師から体罰を受けた過去がある。

 新崎に助けさせてほしいと伝えた土砂降りの雨の日、石母田は苦痛を顔に宿した新崎本人から聞いた。


 他者を信用していない新崎は、東雲にも話していなかった。

 けれどステージ上で新崎が『七年前』の単語を言うのは、体罰を受けた過去を話すこと以外にない。


「辛い、はずなのに……」


 新崎逸釆は決して強くない。

 それを石母田はよく知っている。故に自身の苦しかった過去を語るのは、勝つためとはいえ嫌なはず。

 でも、過去を話す選択をしたということは――、


「──変わろうと、してる」


 新崎は言った。

 この生徒会長選は、自分を変えるための戦いであると。ならば、すべきことはただ一つ。


「頑張って……!」


石母田は心からのエールを、新崎に送った。




『俺は教師に──体罰を受けたことがあってな』


 そう言った直後、体育館は凄まじい勢いでざわめき出した。

 当然だ。この学校でこの話をしたことがあるのは、石母田ただ一人だからな。


『同じ登校班の女子が、同じ登校班の男女にいじめられてた。俺は助けるために担任の教師に相談したんだが、いじめてた奴が俺がやったって当時の担任に言ってたらしく、真実を言っても聞く耳を持たれなかった』


 痛く、辛く、苦しい記憶のはずだ。しかし、今話している俺の心は落ち着いている。


『以降、担任の教師から理不尽に殴られたり蹴られたり、教室入ったら机がなかったり、シャベルぶん投げてきて片付けしろって言われたり、首掴まれて無理やり手伝いをさせられたりと……笑えてくるだろ?』


 あまりの異常さに、今となっては呆れざるを得ない地獄の過去。

 けれど今、最後の一手として利用することができている現実にひどく違和感を感じずにはいられない。


『それから数年、なんとか高一の時に気持ちを立て直して、自分を変えようって実行委員だのボランティアだのをしてた。ある程度人望も得られて楽しい学校生活が送れてたが──また壊された』


 俺が悩んだ末に選んだ二回目の演説内容──それは七年前の地獄と現在の地獄の両方を話すことだ。

 相手が俺に関することに触れるなら、もはや俺が触れないで勝利するのは厳しくなる。

 となれば、三芳が休学してから復帰までの話をするのなら、俺は地に落とされてからこの場に立つまでに何があったのかを話せばいい。


『信用してた奴に最初に裏切られて、友人も仲の良い知人も先輩も、片っ端から関係を断たれた。その時また地獄を味わうのかと思うだけで、元凶には憎悪が湧き上がったよ。でも、誰も信用できなくなった俺に声をかけてくれた奴がいた』


 あの土砂降りの雨の日の出来事を思い出す。


『今年から関わった相手だ。それなのに、俺の所に来てあいつはこう言った。──助けさせてほしいって』


 信用できないって突き放しても、石母田は決して引き下がろうとはしなかった。


『その一言で、俺の心は救われた気がした。ふざけた現状に疑問を持って声をかけてくれたことに。その後も、今まで関わったことない奴が変だと思ってたとかで声かけてきたり、人前で堂々と全面協力するって宣言されたり……俺はそいつらに、救われ続けてきたから、今ここに、生徒会長選の舞台に立ってるんだ』


 一人では、道を違えていたかもしれない。

 一人では、諦めていたかもしれない。


 だが、弱いを俺をギリギリのところで引き留めてくれたのが、石母田や東雲、坂野や甘村先生、小比類や淡土さんだ。


『地獄から救おうと一緒に戦ってくれてたのが、俺の仲間だ。──真実を知ろうともせず見捨てて裏切った、お前らとは違う』


 言い切り、俺は一歩下がって左にずれてから一礼する。

 正直、最後の一言は必要なかったかもしれないと思った。だが、今まで言えなかったことをようやく言えて溜まっていた鬱憤が晴れていく気がした。


「──っ」


 その音に、思わず顔を上げた。

 前を見れば、多くの生徒が俺を見て拍手をしていた。まばらではない、喝采と言えるほどに大きな拍手が鳴り響いている。


「────」


 自然と、俺は口元を緩めていた。


 晴れやかな気持ちのまま、俺はステージ横へと戻る。皆川が半泣きになりながら俺にグットマークを向けていたため、肩に手を乗せてから隣の席に座った。


『三人とも、素晴らしい演説をありがとうございました』


 入れ替わるようにして、現生徒会長である甚先輩がステージ上に出てきた。

 彼は一枚の紙を片手に、マイク越しに話を続けた。


『一人辞退してしまったのは残念ですが、彼も含めてとてもよく頑張りました。今一度、三人へ拍手を』


 甚先輩がそう言うと、再び拍手が巻き起こる。


『ありがとうございます。それでは、今各学級委員に配ってもらっているこちらの紙。投票シートです。三芳さんか新崎君。いずれかにチェックを入れてください。匿名にしてありますが、後で誰に投票したか人に聞く際はしっかり合意の下でお願いします』

『集計には各クラスの先生方と生徒会で、何分かお時間をいただきますがご了承を。投票は十分。それではお願いします』


 皆川にできるだけ配慮した言い回しをしている辺り、流石生徒会長だ。


 集計に関しては、千人分あるとはいえ各自教室で俺か三芳、辞退していなければ皆川に分けて投票シートが箱に入れられる。その際、誰が何人投票しているかも記載されるため意外と集計は早く終わる仕組みとなっている。


「おつかれー、三人とも」


「ありがとうございます、桐星先輩」


「いいって、いいってお礼なんて。ほら、皆川くんも元気出して」


「……は、はい」


 すっかり弱ってしまった皆川に苦笑する桐星先輩。

 と、その背後から甚先輩が俺たちの方へ来ていた。


「お疲れ」


「甚先輩の方こそ」


「いや、俺は台本を読んでただけだ。ともかく──勝てそうか?」


「勝ったつもりです」


「そうか、なら良かった」


 眼鏡を上げてから甚先輩は穏やかに笑った。


「────」


 皆川より更に奥を見れば、三芳が俺の演説を見てもなお余裕の笑みを浮かべながら桐星先輩と会話していた。

 拍手の量で言えば五分、大差ないように見えた。

 とはいえ俺も三芳と同様、勝利を確信している。


 いよいよ、ラストだ。

 地に落ちてから今日に至るまでの全てを、二回の演説で話してきた。

 ──全ては、三芳芽亜に完全勝利するために。


 俺は一人、静かに結果を待つことにした。




◾️◾️◾️




『──お待たせしました。これから、第四十一期生徒会長選、投票結果を開示します』


 二十分ほどの時間で集計が終わり、甚先輩の声と共に投票結果開示のアナウンスがされた。


 敗北はあり得ない。目先にあるのは勝利のみ。

 地に落ちてから、俺は凡ゆる災難を退けてきた。

 それだけじゃない。大切な仲間ができて、そのお陰で過去とも向き合えて、生徒会長選に臨めてる。


 ──ここで、自らの地獄を終わらせて、あいつらの願いに応える。


『発表します』


 過去最高の緊張感に、心臓の鼓動は破裂するんじゃないかと思うほどの速度で動いている。

 気を緩めれば思わず身体が緊張に震えかねない。奥歯を強く噛んで、無理やりに震えそうになる身体を抑え込む。


 右奥を見れば、三芳は余裕に満ちた微笑を浮かべながら結果を待っている。

 その姿が腹立たしいが、そうしてられるのも今だけだ。


『本日の生徒数、1120人中、1105人。三芳芽亜さん』


「──っ」


『──316人』


「…………………………………え?」


 て、ことは──、


『新崎逸釆さん──789人』


「……ぁ」


『第四十一期、生徒会長に就任したのは──二年八組、新崎逸釆さんです!』


 桐星先輩が声高らかに言った直後、体育館内に凄まじい歓声が轟く。

 だが俺は、あまりの実感の無さにポカンと口を開けたまま言葉を発せずにいた。


「逸釆、出てこい」


 笑みを浮かべながら手招きしている甚先輩に言われるがままに、俺はステージ上へ出て行った。


 そこで初めて、実感した。


「──勝った、のか」


 湧き上がる勝利の実感に、俺は小さく口元を緩めた。





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