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第二十八話 『同罪』

 



 小比類恵那の身に起こっている最悪すぎる現状を聞いて、俺は唖然とした。


「……DV」


 父親に首を絞められたり、手などを叩かれたりした。それは紛れもない――家庭内暴力、DVだ。


「……いじめとDVって、そんなの」


 東雲は拳を強く握りしめながら呟いた。


 現状の小比類は、学校に来ればいじめられ、家に帰宅すれば父親に暴力を振るわれる。助けを求めようにも求められない。

 俺よりも最悪で、逃げ場のない状況に置かれている。


「これを聞いて、まだ面倒事を増やしたくないなんて言える?」


 鋭い視線を向けながら、坂野は俺の発言を糾弾してきた。


 ただのいじめ程度なら、元々手助けはするつもりだった。だが、大ごとになりそうなら見捨てるつもりだった。

 だってそうだろ。誰かに助けられるまで待つなんて、あまりにも都合が良すぎる。実際、俺は小五の頃に体罰を受けてから今まで、誰一人として俺のことを助けようとはしなかった。当然、真実を知らない人間が俺を助けるなんて矛盾してる。


 つまり、俺は自分から助けを求めようとはしなかった。だからこうして、眼前でいじめられている人間がいようと見捨てようと考えてた。

 だが――、


「……見捨てれば、クズ共と同じだ」


 俺が今ここで、小比類恵那を見捨てれば俺を嫌い、貶めようとする奴らと何ら変わらなくなる。同類になる。

 それだけは、絶対に御免だ。

 なら、俺の答えは一つ。


「小比類」


「……?」


「どうにかしてやる。それも、すぐに」


 俺は潤んだ小比類の瞳を真っ直ぐに見つめてそう言った。

 クズどもと同類にならないために、心が黒く染まりきっていないと自分に言い聞かせるために。

 ――正しい未来に突き進むために、最善の選択をする。


「どうにかっていうと、どうするの? 逸釆のことだし、もうある程度思いついてるんだろうけど」


「……新崎は別に万能じゃないでしょ」


「いやほら、連続傷害事件も偽装誘拐事件もほとんど一人で解決してたしさ」


「……確かにそうね。で、思いついてるのかしら?」


「今考えてんだよ」


 思いついているかいないかで言えば、思いついてはいる。ただ、良い策とは言えない。

 早い話――小比類を囮に使う策だ。

 これが、小比類恵那の身に起こっているいじめとDVを早期解決するための方法だからだ。


「時間がかかれば、その分小比類が傷つき続けるだけか。東雲、淡土たちの連絡先持ってたよな?」


「え? う、うん、持ってるけど」


「淡土? 誰それ」


「連続傷害事件の時に東雲と石母田に接触してきた警察官だ」


「警察が頼れるなら楽じゃない」


「だったら、世の中のいじめやらDVはこの世からとっくに消え失せてる」


 かつて、警察に頼ったことがあったが『様子見』と言ったっきり動こうとはしなかった。だから警察は頼りたくないが、今回はあの二人の警察官を頼る必要がある。


 俺はもう一度視線を小比類へと戻す。

 そして、冷酷な言葉をかけた。


「小比類、お前のいじめとDVは必ず解決する。その代わり――最後にもう一度傷ついてもらう」




 ■■■■■■■■■■■■■■■




 ――翌週、月曜日。


 学校が終了し、俺と石母田と坂野は東棟一階へと向かっていた。


「上手くいくといいね」


「ああ」


 石母田には既に小比類に関する話は伝えてある。当然、この後何をするのかも含めて。


「上手くいかなかったら、怒るわよ」


「お前に怒られても何も思わない」


 さっさと終わらせたいところ――、


「――智音」


 背後から低い声が聞こえてきた。

 その声は、石母田を下の名前で呼んでいる。振り返れば、髪を纏め、黒いスーツを着用したサングラスをかけた女性が立っていた。


 石母田を名前で呼んでいること。そして、隣に立つ石母田の手が微かに震えていること。

 これだけで、予想はつく。

 最近、急に石母田に帰って勉強するように強要し始めた人物――石母田智音の母親だ。


「……お母、さん」


「部活に所属していないのに帰りが遅いと思ってたら、くだらない遊びでもしてたの?」


「……くだらなくないよ」


「じゃあ何をしていたの? 言ってみなさい?」


「………ぅ」


 石母田の母親から放たれる圧倒的な威圧感。

 坂野も感じていたらしく、いつもの堂々さが若干薄まっていた。


 すると、俺が気圧されることなく石母田の母親に視線を向けていると目が合った。


「まぁいいわ。それで、あなたが新崎逸釆君ね」


「だったら何だ?」


「目上の相手に随分と生意気な態度ね」


「あんたが石母田に圧かけてるからだろうが」


「圧? そんなモノ、かけた覚えは」


「無意識にかけてんだよ。見ろ、お前の娘。怖がってんだろうが。あんたが日頃から石母田を縛り付けてる明確な証拠だ」


「好き放題言うわね。智音、こんな生意気な暴力魔、近くにいたら危険よ。今すぐ関わるのをやめなさい」


 石母田は下を向いたまま、声を発せず立ち竦んでいた。


 石母田の母親と会話をしていて、俺はある記憶を思い出した。

 彼女らの自宅に行った時、広いリビングに設置されていた棚に写真立てが置かれていた。


 その写真立てには、石母田と父親らしき人物、だけしか映っていなかった。

 母親がいるのは聞いていたため、不仲だろうとは思っていたがやはりそうだった。


「言うことを聞けないなら――転校してもらうことになるわよ」


「……!」


 助けを求めるように、石母田は俺を見てきた。

 だが、家族間の問題は流石にどうしようもない。


 自分でもそれはわかっていたのか、ほんの少しだけ俺と視線を交わしてから母親へと視線を戻した。


「……わか、った……」


「それでいいわ。後、これから学校の時は毎日あなたを迎えに来るから。そこの暴力魔と関わっていないかを確認するために」


「――――」


「あなたも、次智音に近づいたら学校に退学させるように抗議するからそのつもりで」


「勝手にしろ」


 石母田は降りてきた階段を上がり、母親と共にこの場を去っていった。


「石母田さん……」


 と、ここまで沈黙を貫いていた坂野が口を開いた。


「石母田のことは後回しだ。今は小比類のことに集中するぞ」


「……そう、ね」


 小比類には、今日策を実行すると伝えてある。

 石母田には悪いが、今の優先度は小比類の方が上だ。


 俺と坂野は階段を駆け降り、東棟一階にたどり着く。

 まだ当の女生徒たちは一人も来ていなかった。


「先回りできたみたいね」


「ああ。後は、あいつの心次第だ」


 この策の要は、他の誰でもない、小比類恵那本人だ。あいつが立ち向かわない限り、問題の解決はできない

 そう思っていた――直後。


「………ぃた……ぃ」


「喧嘩ふっかけてきたのはあんたでしょ? なーにが、言いつけてやるぅだよ。あたしたちの方がよっぽどあんたって女がゴミだって言いつけたいくらいよ」


 西棟から東棟への入り口に、四人の女生徒が入ってくる。

 一人は髪を、残り二人は腕を引っ張りながら、一人の女生徒を引き摺っている。明らかないじめを受け、苦鳴をこぼしているのは引き摺られている最後の女生徒――小比類恵那だ。


「来たか」


 どうやら、小比類は逃げ出さず立ち向かったようだ。その勇気は、素直に褒めたい。


 ……後は、脳筋からの連絡を待つだけだ。


 隣で、今にも激昂しそうな自分を抑えるために唇を噛み、両の手で作った拳を力強く握り締めている坂野。だが、ここは耐えてもらわないと全てが台無しになる。


「――――」


 俺がスマホの画面と女生徒たちとの悲惨なやり取りとを睨み合っていると、スマホの画面に変化が起こった。

 SNSアプリの通知だ。

 送り主は、俺が別行動させていた脳筋生徒、東雲幸宏からのモノだった。

『準備OK!』と書かれたテキストメッセージを見た後、隣にいた坂野に俺は行動の指示を出した。


「いい加減にしなさいよ‼︎」


「――っ! この間の二年!?」


 駆け足で一人をいじめている女生徒の下に坂野は向かうと、勢いのまま髪を掴んでいた女生徒の頬に力強い平手打ちをした。

 バチンッ、と強烈な打撃音が東棟一階に鳴り響いた。


「逃がさないわよ……‼︎」


「ひぃ! 亜子! みぃ! 反対に走って!」


「「うん!!」」


 坂野の憎悪の形相に小比類をいじめていた女生徒は逃げ出そうとする。

 しかし――、


「――ったく、ほんまにこんなところにおんのか」


 俺でも、坂野でも、いじめていた女生徒でも、ましてや小比類の声でもない。――否、小比類の声ではある。


「……もちろんですよ。恵那さんのお父さん……」


 東棟一階の入り口に、二人の男の姿が現れる。

 一人は見知った脳筋生徒、東雲幸宏だ。

 そして、その隣に東雲よりも背の高い男が角刈りの頭を掻きながら入ってくる。

 虎柄のシャツのボタンを全開にして着用し、首にはネックレス、指には幾つもの指輪が付けられている。

 この男が、小比類恵那に暴力を振るっている張本人――小比類恵那の父親だ。


「なら、ええが。……あ? 恵那、ワレ何座ってねん。てか、ガキが多い気ぃするが」


「……お、父さ………」


 粗野な態度である小比類の父親は、半ば倒れている状態の娘の姿を見るなり苛立ちの言葉をぶつけた。

 それから、東雲と小比類を除いた四人の女生徒を睨みつけた。


「何しとってんか知らへんが、さっさと立て恵那。行くぞ」


「――待てよ」


 振り返り、この場を立ち去ろうとする小比類父を俺は呼び止めた。

 この男を、このクソ野郎を――タダで返すつもりはない。


「なんやクソガキ、口の利き方がなってへんな」


「お前みたいなクソ野郎に敬語を使えってか? 冗談だろ」


「あぁ?」


 目を細めて小比類父は鋭い眼光を俺にぶつけてくる。が、俺は一切臆することなく小比類父の背後に回り、東棟一階の入り口前に立って対峙し続ける。


 視線の先、小比類をいじめていた女生徒が抜き足差し足で逃げようとしていたため、坂野に逃がさないように顎を引いて指示した。

 坂野は俺の指示を受け、女生徒三人の正面に腕を組みながら立ち塞がった。


 これで、状況は整った。


「単刀直入に言ってやる。小比類と縁を切れ」


「それはどういう意味や?」


「言ったままだ。実の娘に暴力を振るうような奴は、父親失格だ」


 正面に立つ悪人の顔を俺は真っ直ぐに睨みつけながら、言葉を紡ぐ。

 ただ今度は、少し煽り気味に。


「ま、お前みたいなクソ野郎は初めから親になんか向いてない。田舎で喧嘩してるくらいが丁度いい」


「……いきんなやカス。誰に口聞いとるかわかっとんのか?」


「クソ野郎に、口聞いてる」


「──っ!」


 露骨に顔を歪めて怒りを露わにし、小比類父は俺へと殴りかかってきた。相手との距離は一メートルと少し。

 だが、俺は入り口の目の前に立っていたため即座に外へ出て右に曲がる。

 明様高の門を目指して全速力で走る。その間も「クソガキぁ‼︎」と言いながら小比類父は俺を追いかけてきている。


「次はあんたらの番だ」


 俺は明様高の門を出て、左手側に止まっていた車に向かってそう言った。

 直後、二人の男が車から出てきた。


「逃げても無駄やで! ……あ? なんやワレ!」


「小比類正勝さんですね。娘さんの小比類恵那さんに対する暴行罪で逮捕します」


「あぁ!? ざけとんのか!! ごら離せや!!」


 車から出てきた男二人は、小比類父を抑えつけて両手首に手錠を付けた。


「ごらぁ!! どこのどいつだか知らへんが──」


「埼玉県警、ですよ」


 車から出てきた男二人──埼玉県警の警察官二人の返答を受け、小比類父は目を見開いた。


 埼玉県警の警察官。

 連続傷害事件の際、事件解決の協力をした警察官である淡土と瀬波だ。


「貴方が娘さんに暴行していると通報がありましてね」


「暴行なんかするわけへん!!」


「証拠も出ていますので」


 小比類の父親は暫し怒りを叫んでいたが、瀬波に車の中に押し込まれた。


「……はぁ」


「ご苦労だったね、新崎君」


 いつものハンチング帽を被り直しながら、俺に労いの言葉をかけてきたのは淡土だ。


「後のことはあんたらの方でどうにかしてくれ。俺には、まだやるべきことがある」


「新崎君」


「なんだよ」


「……どうか元気で」


 それだけ言い残して、淡土は車の中へと戻っていった。


 元気で、か。

 俺が完全に元気になる日なんて、一生来ない気がするが。


「戻るか」


 小比類の父親を警察に連行させたことで、DVの問題は片付いた。

 残るは学年間で起こっているいじめの方だ。


 俺が足早に東棟一階に戻ると、こちらも既に問題解決寸前だった。


 腕に触れながら今にも泣き崩れそうな小比類と、その背中をさすって肩を支えている坂野。そして、三人揃って俯いている小比類をいじめていた女生徒。

 ここまでは、数分前と変わらない。ここに、もう二人新たな人物が加わる。


 保健室の教師である甘村と、もう一人。

 スーツを着用し、眉を顰めている男、一年の学年主任桑原だ。


「そっちも終わったみたいだな」


「ええ。あんたが戻って来たってことは、新崎の方も片付いたって思っていいのかしら?」


「ああ」


 俺はため息を吐いてから、小比類をいじめていた女生徒の方へ視線を向けた。三人の女生徒の目の前には、学年主任である桑原が表情に怒りを宿している。


「お前ら、自分が何したかわかってるのか?」


「――――」


 その桑原の発言に、俺の中に怒りが湧き上がってくる。


「──お前も同罪だ」


「ん? お前……新崎!? 甘村先生、どうして新崎が!?」


 俺を見るなり驚愕に表情を染め上げて大声で疑問を言い放っていた。

 すると、桑原の隣に立っていた甘村が「……やれやれ」と言ってから、


「小比類さんのいじめを解決しようと提案したのは、新崎君です」


「そんな……というより、なぜ言ってくれなかったんですか?」


「言っていたら、嘘と一蹴して手助けしてくださらないと思いましたので」


「……ぅ」


 小比類のいじめを解決する上で、確実に明様高一年の教師の力が必要となる。担任はどうせ使えないだろうと判断し、学年主任である桑原を使うことにした。

 俺が関与していると事情を知らなかったのは、甘村も言っていた通り嘘だと決めつけて何もしない可能性が考えられたからだ。


「それより、同罪ってどういう意味だ新崎」


「小比類の父親に言ったことと同じ言葉を言わせるな。言ったままだ。自分が何したかわかってるのか、だって? お前もいじめを黙認してただろうが」


 殴る蹴るの暴力や、数ある嫌がらせをしていた一年の奴らも悪い。だが、いじめそのモノを見て見ぬふりを教師がしていなければ小比類は酷い目に合わずに済んだ。

 なのに桑原は、教師という肩書きを利用して、自分はいじめていた生徒を指導するという『形だけ』の行動をとった。


 こんなクズ、憎たらしくして仕方がない。


「黙認、あるいは傍観してる時点でお前ら教師も同罪だ。気持ち悪い形だけの手助けは辞めろ」


「……ぐ」


「ニュースでよくいじめが度々出るが、基本的に謝罪の場に出るのは校長と副校長。それを見て俺は毎回思うんだよ。なんで、担任教師が謝罪の場に出てこないのかってな」


 黙る桑原に怒りを増しながら、俺は話を続けた。


「最終的にはこう言うんだよ。『本校でそう言った事実は確認されませんでした』。当然だ。校長、副校長は基本的に生徒に関わらない。集会の時の挨拶か、廊下での挨拶くらいだ」


「――――」


「たかだかその程度の奴らが、各学年で起こるいじめなんか知ってるわけねぇだろ。謝罪の場に出るのは、校長と副校長じゃなく、校長といじめのあったクラスの担任教師が出てくるのが普通だろうがって、何度思ったことか」


 結局、ニュースに出てくる教師は学校の名誉を守るために決まった台詞しか言わない。代表しか出さない。


 そんな奴らと、桑原たちは何が違う?

 答えは簡単だ。


「いいか、桑原。お前も、そこにいる小比類をいじめてた三人の女生徒も、小比類の父親も、ニュースに出てくる奴らも――全員『同罪』だ」


「……っ」


「小比類恵那を傷つけた一点で共通する、同じ罪を犯した人間だ!」


 力強く俺が桑原に向かって言い放つと、彼はやがてぐったりとした。


「すまな――」


「馬鹿か、お前。小比類に謝れ」


 俺に頭を下げてくる馬鹿な桑原を咎めてから、隣で小さくなっている女生徒三人を睨みつけた。


「お前らも謝れ」


「……はい」


 四人は遅い足取りで小比類の目の前へ。

 そして、頭を下げて──、


「ごめんな──」


「土下座だ!」


「す、すみません……」


「お前らは散々小比類を傷つけたんだ。なにただ頭下げて終わろうとしてんだよ。土下座しろ、このクズ野郎が」


 こいつらはどうせ、誠心誠意の謝罪をしない。心の中で「なんで謝らないとならない」と思っているはず。

 なら、形だけでも屈辱を味わわせればいい。


 四人はゆっくりと膝を下り、東棟一階の床に額を付け、


「「「「本当にごめんなさい……!!」」」」


 土下座をした。


「あんた、ずっとこんなことしてたのね」


「ずっとじゃない、停学明けからだ」


「だとしてもよ。やり方はどうあれ、人を助けてる。……それを信じてもらえないなんて、あんまりだわ」


 俺の背後でそう言ったのは、坂野だ。

 連続傷害事件、偽装誘拐。いずれも噂、あるいは冗談や嘘として片付けられている。偽装誘拐に関しては、他人ではなく自分を助けた形になるのだがそれはともかく。


 今の現状じゃ、人を助けても信じる奴は一人もいない。

 信用というのは、簡単に取り戻せるものではないのだ。俺が善を成したところで、大勢が目撃でもしない限り迷わず嘘と断定するだろう。


 考えるだけ無駄だな。

 とりあえず、小比類に対するいじめを排除する必要がある。


「桑原」


「……?」


「小比類に本気で悪いと思ってんなら、常にいじめが起きていないから見張り続けろ。俺は随時小比類と連絡を取る。少しでも小比類の口からいじめ関連の話が出たら、今度はこの程度じゃ済まさないからな」


「……わかった」


 桑原にいじめの監視の目を張らせることで、一年の奴らが小比類に手出しできなくなる。桑原が黙認しようものなら、小比類本人の口から『いじめられた』と俺に知らせがくるためすぐにバレる。


「ひとまず、これで安心!」


 声高らかに言ったのは東雲だ。

 確かに、これで一連の問題は片付いた。


 だが、まだ終わっていない。あと一つ、残っている。


 桑原がいじめていた三人の女生徒を連れて行ったのを確認してから、俺は坂野に支えられている小比類に向き合った。

 そして、


「──約束通り俺と話してもらうぞ、小比類恵那」





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