雨を編むひと
あなたと会う日はいつも雨が降っていた。
あなたは何をしているの?
私が聞くとあなたは答える。
雨を編んでいるんだ。
へえ。
とても短い会話だった。
その後には雨が地を打つ音だけが響く。
傘をさした私だけが世界から切り離されたように感じられた。
あなたはなんでこんなところにいるの?
ここにしかいられないからさ。
傘もさしてないで、風邪引くわよ。
いいんだ。
何が良いのかわからなかったけど、あなた自身がそういうなら良いんだろう。
そう思ってあなたの目の中を去った。
あなたはまた俯いた。
雨の日だった。
いつものあの場所に彼はいなかった。
冷たい雨が傘を打つ。
涙は時々雨に例えられる。
あれは彼の涙だ。
そう気づいても、無機質な涙は一本の糸のように降り注ぐ。
雨は彼を失った。
雨は地に落ち、また空へ戻る。
そして何もなかったかのように降り注ぐ。
彼が雨を編むひとでなくなったなら。
水に濡れたそこにあなたのように座り込んだ。
顔を上げるとあなたがいた。
あなたは何をしているの?
雨を編んでいるんだ。
雨がまた地を打った。