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第1話 人生どう転ぶか分からない。

お久しぶり。

 助けてください。俺、内間修一うちましゅういちは現在、トラブルに遭っていた。まず初めに、受験票と財布とスマホの入っている鞄をひったくりに盗まれた。さらに、靴を鳩の糞で汚された。とどめとばかりに、雨あがり後の道路にある、車が水たまりを通って俺の服全身を濡らすという。

 なんとまぁ、不幸の3連コンボを受験開始1時間前に喰らうとか、まぁ、高校浪人が半ば確定したんだなと諦めも視野に入れていたら、目の前に鞄と、ずったずたになった制服を着たお兄さんが、俺の前に急に現れた。


「あ、あの~大丈夫すか??」

「痛ててて。随分と頭のおかしい奴だったなぁ~、ありゃ。普通人が声かけて、バイクのエンジン噴かす奴なんていないよなぁ~!!そこの君!!」

「あっ、俺に話しかけてたんすか!?」

「そりゃあ、君しかいないじゃん。目の前に君しかいないわけだし。」

「そうですよね~。………あっ!!それ、俺の鞄です!!」

「おぉ、君のだったか。ほれ!!」

「あぁ、ありがとうございます!!これで受験に行けます!!」

「あぁ、そういや今日、受験だったか!!………もしかして、泉青豊高校いずみせいほう??」

「そうです、今から言って間に合うでしょうか?」

「おうよ、間に合うよ。付いてきな!!!」


 そう言って、制服を着た男が走り、俺のことを誘導してくれる。ただ、一つモノ申したいことがあるのであれば、俺は今、人様の家の屋根を矢継ぎ早に飛び乗り続けている。うん、何でなんだろう。ただ、今、集中を切ると視界から制服の男の人を見逃しそうだから、一旦後で!!


 ふぅ、なんとか追いついた。あの人、イカれてるよ!なんで屋根飛び越えながら、飛び移れるの!?鳥なのあの人!!


「おぉ、よく付いて来たね少年。」

「はぁ………はぁ………どうして、そんな身体能力お化けなんですか!?」

「まぁ、色んな事があったんだけどね。」

「なんで、そんな遠い目してるんすか。」


 あの人、何か目のハイライトが死んでるんだけど。何、俺地雷踏み抜いちゃった感じ?やってしまった。とか思ってる矢先、お兄さん、再起動して俺の方をバシバシと叩く。強い、めちゃくちゃ強い。


「ちょっ!痛い痛い!!」

「あぁ、すまんな少年。少年は今からこの高校を受験するのかい?」

「はい、そうです。此処に絶対行きたいんですよ。オープンキャンパスにも行って校風とかも俺にとっては合いそうだったので。」

「そうかい。少年、受験を受ける前に一つだけ俺の願いを聞いてくれないか?」

「………一つ貸しもありますし、いいですよ。」

「そうか。じゃあ、合格したら文芸部に入ってくれ。」

「はい??」


 唐突に言われた言葉が反芻し続けながらも俺は受験を受けた。二週間後、俺は何故か特待合格が決まっていた。理由として一つの紙に書かれていたことは………


『おめでとう、君は晴れてこの高校のどれ………栄えある文芸部に入部することが決まった。そこで、むぼ………その勇気と気概に評価して特待生に任命する。授業料と入学金の免除。そして、給付型奨学金月々15万円支給するものとする。』


 なんか、トンデモ待遇での入学が決まった。両親は喜び、妹である七海からは、


「何か、兄さん。不穏な文字何個か見えてませんか?」

「分かる。これ絶対に碌なもんじゃないよな。『どれ』って、『奴隷』で『むぼ』って『無謀さ』って言ってるよな?何か、俺悪魔とでも契約したのかな………ハハッ。」

「何か、良く分からないけど強く生きて。兄さん。」

「あぁ、頑張るよー。」


 棒読みにしながら父と母の歓喜した笑い声とは対照的に、俺は乾いた笑いと感情のこもらない言葉が口から出続けていた。



-----------------------------

 1か月後。4月になった。東北の春には桜の蕾が咲き掛けている。その中で、泉青豊高校は入学式を迎えた。


『………私たち、728名の入学生は高校生活の三年間を楽しく、そして成長できるように精進してまいります。』


 入学生の代表挨拶を終えて、それぞれが教室に戻っていく。俺も教室に戻る際中、突然先生に職員室に連れていかれた。拉致される形で。


「やぁ、内間。」

「………先生?聞きたいことがあります。質問良いでしょうか?」

「あぁ、良いぞ。何でも来い。スリーサイズから口座の貯金まで全部答えるぞ!!」

「いや、そこまでは求めてないですよ!?突然何言ってるんすか!?」

「あぁ、すまない。最近合コンで全く良い目に遭って無くてな。悲しくなって生徒を襲いたくなり始めた。」

「………一回、病院行くことを進めますよ。脳外科の方に。」


 先生が、真顔で言ってくるんだから、その対応でいいよな??マジで怖いよ。しかも俺、何故か縄でグルグル巻きにされてるし。職員室の応接間で。さらに言えば、灯りは消されて、蝋燭が一本ゆらゆらと灯りを灯している。先生は先生で、鞭持ってるし。ナニコレ??


「先生?この状況に関して説明してくれますか??」

「ん??あぁ、この蝋燭のことか。それは、お前の素肌に溶けた蝋をジュウって」

「待て待て待ていっ!!どこのSMバーっすか!?俺は、ドMの顧客かっ!」

「あら、違うの??」

「違うわっ!!その前に質問に答えてくださいよ!!俺の状況もですけど、先生は一体クラスの担任でもなさそうですし、何者なんですか!?」

「見ての通り、保健室の先生よ。そして、文芸部の顧問である、蜂川光里はちかわみつりよ、よろしくね。文芸部の新たなひが………ウゥン!!部員、内間修一君。」

「あの、今、被害者って言いかけましたよねぇ!!ねぇ!!」


 先生の視線が俺からそれると同時に、蝋燭の蝋が溶ける。誰か、助けてくれませんか??そろそろ縄縛られて5分くらい経つんですけど、腕の感覚とかが冷え始めて、少し辛いんだけど!?先生、ねぇ!!先生!?


 この後、俺は解放された。そして、部室に連行されて、文芸部についての話を聞いたんだが。一つだけ感想を一つ。


「あの、先生。」

「何、内間君。」

「この文芸部の活動内容、おかしくないですか?」

「可笑しくないわよ。これが文芸部の活動内容よ。」

「いやいやいや、文芸部の文芸の要素!!どこに行ったんですか!?」

「………文化的貢献と芸術の発展に貢献するための何でも屋部で略して文芸部よ。」

「無茶苦茶すぎだろうが!!」


 この文芸部、文芸(文字を書く)の要素は一つも無かった。初めて聞いたよ。何でも屋の文芸部って。あの先輩、マジで謀りやがったな。次あったら、絶対ミンチにしてやる。

 俺は、拳を握りながら、人生に敷かれたレールが明らかに破壊された音がした。


次回は明日で。

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