エピソード2 クレイジーボッチ
姉の高校の全国の結果が どうなったのかは知らない。
なぜなら姉は、大会の後、高校を中退したからだ。
限界だったのだろう。
姉は吹奏楽を楽しめなくなってしまっていた。
憧れの吹奏楽部の為に、受からないと言われた高校に努力して入学したのに、通う理由を失くしてしまっていたのだ。
それほどまでに、親のいざこざに、俺ら姉弟は疲労してしまっていた。
ピュアすぎたんだろう。
俺が小学生の頃、姉は中学生ながら、お年玉でベースを買った。
本当に嬉しそうにベースを毎日弾いていたのだが、そんな音楽をしている姉はもういない。
姉は吹奏楽を、音楽を、もう辞めていた。
それから数ヶ月して、相変わらず中学に通わなくなった引き篭もりの俺と、なんとか引き篭もりにはならず通信制の高校に通い出した姉。
…母親も大変だろう。
今思えば本当に申し訳ない気持ちだ。
しかし、そんな引き篭もりの俺は、ネットゲームにハマっていた。
母親は仕事に行く為に朝が早い。
それをいいことに学校には行かず部屋からも出ず、引き篭もりながらネットゲームをする日々だ。
中学一年生で仲良くなった友達の鍵内兼とはまだ親交があり、ネットゲームを一緒にプレイしている。
「なぁ、徹は学校もう来ないの?」
ある日、ネットゲームをしていたらチャットが飛んできた。
ケンだ。
俺のネットゲームでの名前はWillなのだが、フレンドチャットなので、俺とケンにしか見えないので、本名で名前を書かれたことは許してやろう。
なぜウィルにしたかというと、当時好きなサッカー選手の名前がウィルだったからだ。
そして俺の本名は友原徹、学校ではてっちゃんって呼ばれていたと思う。
ちなみにケンのネットゲームの名前はキーブレードだった。鍵内って苗字だから"鍵"でキー、略して"カギケン"+当時キングダムハーツがめちゃくちゃ流行っていたから、キーブレードにしたらしい。
中学生のネーミングセンスなんてそんなもんだ。
「なんか、しんどくて学校に行けないんだよな。」
チャットでケンにそう返事すると、
「そっかー。まぁ来たくなったらで良いんじゃね?」
と返してくれた。
少し気が楽になったよ。
___それからさらに月日は流れ、俺は中学3年生になっていた。
身長は中学一年生の頃は160cmもなかったが、成長期なのか175cmまで伸びていた。
さらに、ますます引き篭もりにも磨きがかかり、過食症という病気にまでなってしまい体重は約2年間の引き篭もりで100kgを超えていた。
スーパーニートだ。
エリートの中のエリート、スーパーニート人が誕生していた。
社会不適合者という名のモンスターだ。
本当生まれて来てごめんなさい と毎日思って泣いている。
さらには、ケンは中学三年生で仲良くなった友達とつるむようになり、俺とは少し疎遠になっていった。
俺は孤独感でいっぱいだった。