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パンモロ的新生活

ネックレス盗難事件後、ノゾムは街にある小さな屋敷を貰った。勇者としてこの地に召喚されたが戦いには不向きであると判断されてた。その為王宮に仕える事なく街で暮らすことになったのだ。

 しかしこれは王宮からの追放でも厄介払いでもない。両陛下は事件解決に感謝して客人として国に向かい入れ、褒賞として屋敷を与えたのだ。

 その屋敷には一人の使用人が配属された。盗難事件の容疑者として挙げられていたキャミーである。キャミーは王宮では居づらいだろうと配慮されノゾムの使用人に抜擢された。

 そんなキャミーは屋敷の主人であるノゾムを街に出て探していた。

「何処にいるの」

 急ぎの用事が入ったのでノゾムを見つけなければならない。スカートを翻しながらキョロキョロと街中を探していく。

 本来ならスカートを翻すなんてはしたない事してはいけないのだが、緊急なので仕方がない。それにキャミーはノゾムに仕えた日からスカートの下には膝丈の程のズボンを履く様になった。ノゾムにパンモロされた事はないし、これからもされないと思うが一応念の為である。

「なんで私がアイツの下で働かないといけないんだろ。お賃金は王宮から出るし、面倒臭い人付き合いも無いからいいけど……」

 ブツブツ文句を言いながらキャミーはノゾムを探していく。人波を掻き分け、ノゾムが居そうな場所を当たっていき、ようやくキャミーはノゾムを見つけることが出来た。

 ノゾムはカフェで優雅にお茶をしていた。別に誰が悪いわけでは無い。ノゾムは何も知らずただお茶を楽しんでいるだけだし、用事も急に入ったから誰のせいでも無い。それでも息を切らせながらあっちこっち探していたキャミーはイラついた。

「ご主人様!」

「おや?キャミーさん、そんなに慌ててどうしたのかな?まるでパンツを履き忘れて急いで家に帰るみたいに」

「そんな訳ないでしょ!王宮から緊急の呼び出しです!直ぐに行ってください!」

 その言葉にノゾムは直ぐに反応して立ち上がった。その目は真剣そのものだ。

「店員さんすまないが用事ができてしまった。代金はここに置いておくよ。ケーキ美味しかったよ、また来るから」

 代金をテーブルに置き、ノゾムとキャミーは駆け出した。ノゾムは事件解決の為なら何処にでも行くのだ。

 走りながらキャミーはジッとノゾムを見ている。

「……」

「どうしたんだい?」

「いえ、ケーキ食べるんですね」

「おや?意外かい?」

「まあ、甘い物は男性は嫌いかと」

「僕は甘い物が大好物だからね、男だからなんて固定概念や先入観で物事を見ると真実を見失ってしまうよ。いくらタンスや物干しを探しても見つからなかったパンツがズボンの中で引っ掛かってた様にね」

「ハァハァ肝に銘じます」

「それで?何があったのかな?」

「そうだ!すいません、ハア、私には教えてくれなくて。ただ直ぐに王宮に来てくれと」

「なるほど何か事件の香りがするな。例えるならパンツが……」

「そういうのはいいですから!走って下さい!私は少し休んでから屋敷に戻ります!」

 キャミーはノゾムの背中を思いっ切り叩き走るのを促した。本来主人に対してこんな事やってはいけないが数日仕えるうちにキャミーは、訳の分からない事を言うノゾムを雑に扱う様になった。

 ノゾムは叩かれて転びそうになったが何とか持ち堪えて走って行った。キャミーは息を切らしてその場に立ち止まった。

「はぁはぁ……何がパンツだよ……パンツにかけないと何か言えないのかよ……セクハラだろ」

 その通り完全にセクハラである。

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