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禁域  作者: 禅海
第二章
90/204

90

 急に立ち上がると足が酷く痺れた。身体に血潮が通っていく身を裂くような感覚が、痛々しい。この時にはもう、上映中の慎ましい幸福など、跡形もなく消え去っている。

 血行のすぐれない脚部をさすろうと身を屈めると、すぐそこの座席の折り畳みシートが半開いたままになっていることに気付いた。

 さっきのあの女性がいた座席だ。だからどうしたと思いつつ、間もなく脚部の痺れが取れたので、さあ立ち去ろうというとき、ぽとりと、シートの隙間から何かが落ちた。

 私はごく自然にそれを拾い上げた。三縞模様に薄い青と赤の二色を配し、ワンポイントのビジューをあしらった長方形の、シンプルなノンレザーの財布。嗅いだこともない上品なオー・デ・コロンの香りが、微かに付着している。


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