79/204
79
だがたとえ好きなものに飽きない権利、好きなものを世間に流布する権利、好きなもので収入を得る権利を与えられたところで、そんなもの所詮は似せものの営みで、私が真の孤独から解放などされはしないことは確かだった。
なぜなら私は私である限り、倒錯者としての嗜好の真相を、気兼ねなく誰かと分かち合うことなどできないのだから。私が今までで最大の力を込めて書いたつもりの、ある作品に登場する孤独な屍姦者を扱ったレビュー記事は、何故全ての記事の中でもっとも群を抜いて閲覧数が少ないのか?
もっとも社会に開かれているらしい公平な媒体に、私は生きている限り私の孤独をむざむざと叩きつけられ続けるのである――ああもし私に鰓と鰭があったとしたら、私はこの永遠に続く酸欠のような苦しみの世界から、暗く冷たく静かな、日の陽も届かない海底の王国へ逃げることができるだろうに……私にはなぜ人魚姫が地上などに興味を抱いたか分からない。だが彼女が同族の人魚の王子ではなく、異類の人間の王子を愛した苦しみだけは痛いほど分かる。