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禁域  作者: 禅海
第二章
76/204

76

 県庁が置かれているといっても、F市内はあのいけすかない人々の暮らす緑豊かな田舎、E市と比べても思いのほか人工的な悪趣味がない。

 F市の区画は、その中心部を貫流する阿諏訪川(あすわがわ)と、南西郊外に鎮座する阿諏訪山(あすわやま)という二つの自然遺産を中心に低層な街並が形成されているように思える。

 街中にぎらぎらした頭のおかしくなるようなネオンサインは無く、頭上を擦過(さっか)する風の音が高層ビル群の最低な倍音調律を受けることもない。もし宇宙からこの街を見下ろしたとすれば、その不確かな夜景は明度の低いテーブルランプを消し忘れて、アロマの匂いにうたた寝する少女の横顔に見えるのではないかと思える。だからここでの生活は極めて穏やかである。ただ人数(ひとかず)が多少過剰なことを除けば。

 ささくれた藁色(わらいろ)の古畳に仰向けに寝転がった。床が軋む。壁が鳴る。家具がざわつく。それからやがて静寂が訪れる。やっと、強張った気分が落ち着いてくる。


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