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だが私はそれを好意的には全く思わないし、なんならそれこそ少し注意すれば、他人からの褒め言葉というのは無意識な侮蔑と中傷の換言と受け取れるのだし、なによりこの、やはりどことなくあの忌々しい母親の面影がある、母親を思い出させるような、実に病的な顔が気に食わない。
私の母譲りの神経質は私を常に苦しませているのに、この憎いほどの無表情は私自身にすらそれを隠してしまう。私は昔からどう努力しても、その乏しい表情変化だけは鍛えることが出来ず、私に可能な顔は、微笑、不満、無表情、本当にこれくらいなのである。
もういっそこの不器用な顔を酸で醜く溶かし爛れさせてしまった方が、幾ばくか安心できるのではないか? 私はまた顔面に指を突き立てて、引掻くように強く洗った。